プロフィール
新谷梨恵子(あらやりえこ):東京都出身。幼少期から自然や動物が好きで、農業に興味を持ち、東京農業大学へ進学。卒業してすぐに結婚し、新潟県へ移住する。10年間、農業法人で就農した後、農家を助ける6次化産業プランナーや派遣事業を独立して「株式会社農プロデュース リッツ」を開業。さらに、さつまいも農カフェきららをオープンする。2017年第16回全国女性起業家大賞で最優秀賞を受賞。2018年には、おいもマニアとしてTBSテレビ系列「マツコの知らない世界」にも出演した。
さつまいもの虜になった10代
――新谷さんの生い立ちを教えてください。
新谷さん:出身は東京都江戸川区です。15歳の時に“さつまいも”の虜になり、農業を学ぶため東京農業大学へ進学しました。大学では国際農業開発学科でイモ類の研究をしたり、国内や海外で農業を学んだりしました。大学卒業後に当時付き合っていた夫と結婚し、夫の実家がある新潟県へ移住しました。
――地方への移住に不安などはありませんでしたか?
新谷さん:昔から「農家へお嫁に行きたい」と思っていたので不安はありませんでした。移住後は小千谷市にある農業法人へ就農し、本格的に農業を学びました。農業を学ぶとともに、さつまいもプリンなどの商品開発にも携わりました。何年もかけて商品化が決まり、いよいよ加工場を持とうとしたら、新潟県中越大震災で崩壊してしまったんです。
――これからというタイミングで…小千谷市の被害も大きかったですよね。
新谷さん:ニュース番組では小千谷市の報道が連日されていました。しかし、いつまでも落ち込んではいられませんし、これだけ小千谷市が注目されている今がチャンスだとも思ったんです。「小千谷市のマイナスなイメージを変えたい」という想いで、一から店舗を探し、震災から4ヵ月後には販売を始めることができました。生産者が製造加工を行うことは、当時はまだ新しかったと思います。
好きなこと・得意なこと・やりたいこと
――「農プロデュースリッツ」を設立されたきっかけを教えてください。
新谷さん:10年続けた農業法人を辞めてから、「自分にできることは何か」と考える時間を作りました。私にとって好きなことは料理、得意なことは売ることでした。長年、生産から製造、販売に携わってきて、「農家さんは作るプロであって売るプロではない」と思ったんです。
――いきなり商品化して販売するとなると難しいですよね。
新谷さん:そうなんです。例えば、自分の農家で採れた果物のB級品をジャムにしたからと言って、簡単には売れません。ストーリーを考えてパッケージを作り、原材料、賞味期限を記載してスーパーや代理店に売り込むことが必要です。私は学生の頃から、接客や人と話すことが好きだったので「そこで農家さんのお役に立てるのではないか」と考えました。
自分を表現する場所“きらら”
――「さつまいも農カフェきらら」を始めたきっかけを教えてください。
新谷さん:農家さんをプロデュースしていく中で的確なアドバイスができるように、自分でも商品開発をして販売してみようと思ったんです。それで、貸していただけることになった店舗が想像以上に広くて(笑)。小千谷ICのすぐそばで立地も良かったので思い切ってカフェとして出店し、自分を表現していこうと決めました。
――店舗が広かったことがきっかけだったのですね(笑)。
新谷さん:オープンするからには「絶対に成功させなきゃ!」と思っていました。自分のお店が繁盛していないと、プロデュースを依頼してくる農家さんがいなくなってしまいますからね(笑)。オープンして最初の1年は、自分の店舗の集客に専念しました。集客はターゲットとテーマを決めるところから始めます。「さつまいも農カフェきらら」のテーマは“さつまいも”。ターゲットは“子育て中の主婦さん”に絞りました。
――子育て中の主婦の方をターゲットにした理由は何でしょうか?
新谷さん:「小千谷市に子連れでゆっくりできる場所があったら良いのに」と以前から思っていたので、「お母さんたちに優しいお店にしよう」と決めました。保育所に預けているお子さんを迎えに行く時間まで過ごしてもらえるように、ランチタイムとディナータイムの区切りを無くして営業しています。
さつまいも農カフェきららのミッキーマウス☆
――スタッフとの印象に残るエピソードを教えてください。
新谷さん:TBSの「マツコの知らない世界」に“さつまいもマニア”として出演したことですね。「私のさつまいも愛を多くの人にアピールできる!」と喜びました(笑)。しかし、プロデューサーさんから「放送後はお客さんが増える分、クレームも増えるかもしれない」と聞いていたので神経質になってしまったんです。とにかくお客様を待たせてはダメだと思い、回転率を上げるために厨房に入っていたら、「放送を見た人は新谷さんに会いに来てるんですよ!」とスタッフから言われて気づかされたんです。その時、「お客様にとことん楽しんでもらおう」という考えに変わりました。それからは、「テレビ出演しました!」と書かれたポップを持って、写真撮影に応じたり、店内の子供と遊んだりして自分も楽しみながら接客しています。スタッフのおかげでクレームもゼロでした。
――スタッフの皆さんとは厚い信頼関係ができているのですね。
新谷さん:そうなんです。スタッフの皆にはいつも助けられています。だからこそ、私を支えてくれる周りのスタッフにはやりたいことにどんどん挑戦して欲しいです。スタッフの中には、実際に民謡教室を始めたご夫婦や学童保育を開いた方、ベーグル屋さんを始めた方もいます。みんなには、「やりたいことがあるなら絶対にやったほうがいい!今が1番若いんだから!」といつも言ってます。
名物!やきいもソフトクリーム「イモぽんソフト」
――新谷さんが思う「さつまいも」の魅力を教えてください。
新谷さん:さつまいもは一定の温度で温めるほど甘味が増すんです。ジャガイモや里芋は甘くならないのに不思議ですよね。昔、焼き芋屋のおじさんが「さつまいもには心がある」と教えてくれて。「さつまいもに心が?なんてかわいいんだろう」と思い、そこからどんどんさつまいもに魅了されていきました。そんな私が、さつまいもにこだわり抜いた商品が名物やきいもソフトクリーム「イモぽんソフト(参照:ガタ市商品ページ)」です。ホックホクの焼きいもと上に乗ったガンジー牛のソフトクリームが良く合います!
――「イモぽんソフト」は通信販売でも購入できるんですよね。
新谷さん:そうです。構想から完成までに1年かかりましたが、2021年6月から皆さんの元へお届けすることが可能になりました!通販事業はずっとやりたいことリストに書いていたのですが、コロナ禍を機にお店に来ることができない方にも商品を届けようと本格始動しました。通販で購入された方も、新型コロナウイルスが落ち着いたら、お店に一度足を運んでいただきたいです!
小千谷市の魅力を全国へ
――最後にこれから挑戦したいことを教えてください。
新谷さん:人材育成に力を入れていきたいと考えています。町の過疎化や少子化が問題になっていますが、移住はそんな簡単にできないですよね。だから、小千谷市に住んで、農業を体験して美味しいものを食べられる、宿泊施設を農カフェきららに作りました。これから応募してきてくれたインターン生たちに小千谷市の魅力を伝えていこうと思っています!最終的には小千谷市に移住する選択肢が増えると嬉しいですね。そして、これからも自分のお店で成功した集客方法を他の農家さんたちが実践していけるように農プロデュースしていきます!
【さつまいも農cafe きらら】
住所:新潟県小千谷市桜町2495-1
電話:0258-94-5995
営業時間:10:30~18:00
定休日:不定休
笑顔がとっても素敵な方ね♪「イモぽんソフト」をさっそく注文しましょう~♪