プロフィール
石本史子(いしもと ふみこ): 三条市出身。高校まで三条市で過ごし、大学進学とともに上京。大学時代は、イタリアにハマり、卒業後はイタリア食材を扱う商社に就職するも、イタリア愛が強すぎて、イタリアへ留学する。帰国後、新潟に帰郷し、様々な仕事を経験。のちに株式会社マドンナ・ワークスを起ち上げ、企業やNPO、個人事業主の方などから業務委託を受託し、全国にいるテレワーカーさんとチームになって業務にあたっている。
イタリアにはまった学生時代
――石本さんの経歴について教えてください。
石本さん:三条市出身で高校まで地元で過ごしました。高校卒業後は、東京の大学に進学しました。学生時代は、イタリアのことしか考えていなかったです。最初は、イタリアに語学研修で行ったのですが、そこで日本とは違う概念というか生き方の違いを見せられました。その価値観の違いに触れて、どんどんイタリアにはまっていきました。バイトしてはイタリア行くというのを繰り返していました。
――イタリア愛がすごかったんですね(笑)。
石本さん:そうですね。イタリアに行くために、日給1万円のバイトを選んでいました。普段の塾講師のアルバイトにプラスして夏休みの前半はほぼ毎日アルバイトをしていましたね。貯めたお金でイタリアに行き、20日間くらいバックパッカーをしていました。
――それこそイタリアでの就職や移住は考えなかったのですか?
石本さん:実はイタリアでも働いたことがあります。大学卒業後、イタリア食材の専門商社で営業をしていたのですが、どうしてもイタリアに行きたくなり、イタリアに1年3ヵ月留学しました。最初は大学に通っていたのですが、語学勉強のため就職活動をし、レストランでも働いていました。
――すごい行動力ですね…!
石本さん:そんなめちゃくちゃな学生時代だったんですけど、でもやっぱり東京にどれだけいても虚しさを感じ、イタリアに行ったからこそ日本のことも見えてきて、「なんで日本人なのにパスタ売っているんだろう」みたいなことを思った瞬間がありました。そう考えたら妙に冷めてしまって、持病が東京の環境に合わなかったこともあり、三条市に戻りました。
能力のある女性が働ける場所をつくるため起業する
――そういった経緯で、戻られたのですね。
石本さん:きっと好奇心が満たされたんでしょうね。広い世界を見ていたけど、身近なところに自分が幸せを感じる部分があって、どんどん省エネ化しました。今では通勤さえないテレワークですからね(笑)。でも、フットワークは学生の頃と変わらず軽いです。今はなかなか県外には行けなくなりましたが、都合が付けば関東の美術館に行っていました。何か考えて解決しない時は動いちゃいますね。それこそ今まで、バイトから含めると30社ほどの会社で働きました。コンビニからガソリンスタンド、塾講師、美術館で働いたり、色々とちょっとずつ経験しています。
――30社は驚きです・・・。経験の為に、転職をされていたのですか?
石本さん:ただ、飽きっぽいからだと思います(笑)。でも、色々なことをできるのは楽しいですよ。就職した会社で仕事をしながら勝手に学んでいました。好奇心さえあれば、教えてもらわなくてもだいたいGoogleに書いてあるので、そうやって様々な知識を身につけていました。様々な場所で試行錯誤しながら働いてきたことで色々な事務作業ができるようになり、多くの出会いがあって、「株式会社マドンナ・ワークス」を起ち上げたんです。
――「株式会社マドンナ・ワークス」を起ち上げたきっかけは何かあったのでしょうか?
石本さん:「株式会社マドンナ・ワークス」は企業などから業務を委託し、全国にいるテレワーカーさんに仕事をしてもらっています。起ち上げのきっかけは前の職場とのご縁が切れたということと、前職で地域活性化拠点のようなことをやっていた時に行き場のないママさんたちにたくさん出会ったことです。どう行き場が無いかというと、能力はあるのに子育てで働けないとか。中には女性が働かなければいけない風潮が嫌という方もいらっしゃいます。女性には本当に様々な状況があるので、その人が納得できる形であれば家事育児に専念するのも一つの生き方として十分ありだと考えています。そのうえで、私はやっぱり一人の人間として経済的にも自立したい、していく準備を常にしていたいという気持ちが強かったです。
――働きたいけど働く場所がない方を見てきたのですね。
石本さん:そうなんです。女性がどんな状況でも一人の人間として働きたいということをチョイスできるような世の中にしたいと、2人の娘を見て思ったんですよね。能力はあるのに、パートナーの理解が無いとか、働く環境が整っていないとか・・・それはすごくもったいないと思います。まして、若い頃にたくさん勉強をしていて、発揮する場所がないなんて、本当にもったいないです。自分の経済活動をしたいと思った時にできる環境が無いというのが、日本のジェンダーギャップをとても感じます。私達の世代で変えられるのは、ほんの少しかもしれないけど、その少しでも変えなければ女性が働きづらい世の中のままになってしまうと感じています。やっぱり女性が活躍している会社ほど、伸びていきますね。世の中には男性、女性どっちもいるのだから、どっちかだけではなく、どっちもいて良いという形を作っていく必要があると私は思っています。だから、家事育児を当たり前にするようにと夫に圧を掛けています(笑)。
――そういった風潮を変えたいという想いから起業されたんですね。
石本さん:そういった想いもありますが、まずは自分の働きやすい環境を作ろうと、自分の為に起業しました。でも、1人だと限界がすぐに来て、できないことのほうが多いんですよね。今では3~4人のテレワーカーさんに動いていただいていますが、その方たちが少しずつ仕事を受けてくれているので私も働き続けることができています。1人で頑張らないということですね。支え合って仕事をしています。
これからの働き方の選択肢の1つに
――テレワークに注目したきっかけは何だったのですか?
石本さん:女性が働く上で、外に出なければいけないとなった時の労力が大きいなと思いました。能力が活かせてかつ、省エネでできるのがテレワークでした。テレワークの仕事なら新潟に限らず、東京から仕事を取ってきても良いですよね。その時間と場所を功越して働けるのがテレワークの魅力で、家庭との両立に繋がると思い、2015年くらいから着目しました。
――テレワーカーさんはどれくらいの年齢の方がいらっしゃるのですか?
石本さん:20~30代の方がメインですね。ママさんがやっぱり多いです。パートナーが転勤族ですぐ転勤してしまうからという理由で働けないなど、まだまだ男性の働き方に影響されていると思います。私は結婚して子どもが生まれて時間を取られることは嫌で
すが、幸せの一部でもあります。それこそ、私は母と一緒に住んでいるので、独りで家事を担っていないから働けるんですよね。それでも十分に労働時間が取れないと分かっていたので1日1時間くらいしか働けなくても収入があるような仕組みづくりをしました。
――こうした働き方があることを知らない人はまだまだ多いですよね。
石本さん:たくさんいると思います。私自身も仕事を聞かれて説明しても相手には理解してもらえなかったんだなと思うことは多々ありますね。1つの選択肢としてテレワークを選べると良いなと思います。スキルはあるのに、活かす場所と生かす機会がないんです。とてももったいないですよね。そういう方が活かせる機会をつくっていきたいです。ですので、今から勉強しますという方には、なかなか声を掛けられない状態で申し訳ないのですが、元々持っているスキルがあり、うずうず、もやもやしている人ほど一緒に仕事をしたいです。
――お客様やテレワーカーさんとの印象に残るエピソードを教えてください。
石本さん:エピソードではないですが、やっぱり“一人じゃどうしようもない”ということですかね。メインで働いてくれている熊本のテレワーカーさんがいたおかげで受けている仕事もあるので、常に人がいるから働けていると感じています。テレワーカーさんももちろん大事ですが、同時にお客様もとても大事です。お客様との相性が私と合うかどうかがすごく大きいですね。この人の為だったら私たちもがんばろうと思えるくらい一生懸命な方と仕事をしたいという想いがあります。お客様との信頼関係はどの会社も大事にしていると思いますが、そういう方とどこまで出会えるか、人との出会いの良さを日々感じています。
――では最後に、今後の目標を教えてください!
石本さん:どこで働いていても、どんな状況になっても女性が稼ぎたいと思った時に、稼げる仕事が地方にあったらいいなと思うので、経営を盤石にしていきたいです。具体的には、毎月何かしら仕事があるようにもっと件数を取ることが大事ですし、今は県外のテレワーカーさんが多いですが県内の方もスキルがあればできるんだよと、若い方たちの選択肢の一つになれば良いと思います。若い方たちには物事や働き方などをもっと柔軟に捉えてほしいですね。その為には、もっと有名にならなければいけないのですが、派手なことに興味がないので(笑)。でも、私の背中を見ている娘たちのロールモデルになれば良いですね。こんな生き方も普通なんだと思ってもらえるようになりたいと思います。
スキルはあるけど…って悩んでいる方には心強いわね~素敵な方だわ~