【プロフィール】
後藤 寛勝(ごとう ひろかつ):1994年生まれ、新潟市出身。新潟南高校・中央大学を卒業。在学中に政治NPOを起業し、主権者教育プログラム「票育」を全国で展開。卒業後は博報堂DYメディアパートナーズへ入社。2021年にUターンし、合同会社Flags Niigataを創業する。2024年12月〜SNS総再生回数1,500万回超のローカルメディア「新潟のリアル!!」のほか、テレビ・ラジオなどレギュラー多数。
“考え方”を学んだ幼少期
——どのような環境で育ったのですか?
後藤さん:経営者の父のもとで育ちました。父は答えではなく、「考え方」を教える人で、「とにかく見聞を広めろ」と色々な場所に連れて行ってくれましたね。
幼い頃から「常に自分で考える」ことを求められてきた経験が、“物事を多角的に見る力”につながっていると思います。
——学生時代の新潟に愛する考え方は?
後藤さん:幼少期にテレビで天気予報図を見ていて、当時は新潟が日本の中心だと思っていたんです。それが実は地方局で、本当の中心は東京なんだと知った時に「ここは日本の中心じゃない」と気付きました。
それがすごく衝撃的で、「自分がいるところは中心じゃないのか」と思うようになりました。高校時代は、「新潟なんて…」という感覚でしたね。

違和感を行動に変える
——政治に関心を持ったきっかけは?
後藤さん:高校2年の時、友人が進路を選択する姿を見ていて、「機会の不平等」に違和感を覚える瞬間がありました。担任の先生に相談したら「それを変えるのは政治だ」と言われて。
そこから学び始めると、政治に興味がある同世代がいなかったので、「自分の強みにしよう」と“若者と政治をつなげる機会と場を作る活動”を始めました。
——どのような活動を?
後藤さん:わかりやすいのは、国会で行った全国の高校生100人・国会議員100人の討論企画ですね。他にも「票育」という政治教育プログラムを開発して、地方自治体で展開しました。
選挙権年齢の引き下げや被選挙権年齢の引き下げなど、若者と政治に関わる分野の政策提言もしていました。当時、石破大臣・平副大臣・小泉進次郎政務官時代の内閣府の地方創生推進室でデータを活用した地方創生事業にも携わりましたね。
——今につながる信念は?
後藤さん:「違和感を見過ごさず、誰もが動ける形に変えること」です。一人の疑問や違和感こそが、社会を動かすきっかけになると考えています。
実際に、2016年に選挙権年齢の引き下げが実現した時に「違和感を可視化すれば社会は変えられる」と実感しました。

広告業界で学んだ価値の伝え方
——なぜ広告業界へ?
後藤さん:政治関連の活動を通じて、「正しいことを正しいと伝えるだけでは人は動かない」と感じたんです。
社会に浸透させるには“伝え方”が必要だと思い、クリエイティブを学ぶために広告業界に進みました。
——広告業界で得たものは?
後藤さん:解決策を『人が思わず動きたくなる魅力的な形』に変換するクリエイティブの力です。当時のチームでは徹底的に学ばせていただきました。
課題の本質を見極めてゴールを示し、それをワクワクする仕組みや体験として社会に実装することが僕のプロデューサーとしての原点です。


——どんなコンテンツをつくられたのですか?
後藤さん:地域の食や観光をテーマにしたハイブランドのブランディングコンテンツ(映像/イベント/PR)がメインでした。
その中でも「DINING OUT」という、世界で活躍するシェフが数ヶ月かけてその土地の歴史や文化や食材をインプットして、一席20万円以上する「一夜限りの野外レストラン」に仕立てる企画に携わったことが大きかったです。
トップシェフの視点(外の視点)を入れることで、地元民にとっての“当たり前の日常”が“極上のコンテンツ”へと昇華され、結果的に“数十万円を払ってでも訪れたくなる体験”になります。地域の人たち自身が自分たちの地域に「プライド」を持てるようになるプロセスが大事だと実感しました。
——新潟への見方も変わりましたか?
後藤さん:様々な地域を見る中で、「新潟も負けていない」と思えるようになりました。当たり前だったものが、“大きな価値”に見えるようになったんです。

新しいコミュニティのかたち
——新潟に戻ったきっかけは?
後藤さん:コロナ禍で帰省できなくなった時、“故郷を失ったような感覚”になりました。東京にいて同じ感覚を持っていた新潟出身の仲間に救われて、「新潟のために何かしたい」と思いました。
その想いから生まれたのがオンラインコミュニティ『Flags Niigata』です。20人でスタートし、コロナ禍では飲食店支援や番組制作、オリジナル日本酒の製造販売などの活動を行っていました。
——どんな活動をしているのですか?
後藤さん:“新潟出身という共通点”でつながるコミュニティです。年会費もなく、入会・退会も自由。「何かをしてもいいし、何もしなくてもいい」というスタンスのコミュニティです。
参加者同士の関係性には全く介入していないので、必要な時に使ってもらえればいいかなと。コロナ禍を経て、当時とは状況が変わっているので、その必要性について改めて議論が必要ですよね。

——Flags Niigataはどんな事業を展開していますか?
後藤さん:一言でまとめると、「新潟に関わる同世代のネットワークを活かし、クリエイティブ(企画・デザイン・場所づくり)の力で新潟の課題を解決するプロデュース業」です。企業の広告企画プロモーションや新規事業支援、リノベーションなどを行っています。
最近では、上越市・高田にある築150年の旅館再生(鈴木旅館)を通した街への集客を実現するプロジェクトの総合プロデュースも行っています。新潟の企業や自治体が抱える課題に対して、コミュニティに集まる多様な人材やネットワークを活かして解決へと導く。
それ自体が一つの“事業”として機能していると思います。

街頭から見えた新潟のリアル
——「新潟のリアル!!」を始めたきっかけは?
後藤さん:Uターンして数年経ち、「自分が新潟に対して捉えている課題がズレているかもしれない」と感じたんです。
新潟で生活をしていると、ビジネスだけでは見えてこない日常のゆるやかな課題に触れることが多いです。新潟をもっと良くするには、この“日常に近いモヤモヤ”を捉えないといけないと思い、まずは街頭で直接声を聞くことから始めました。
——実際に始めてみてどうでしたか?
後藤さん:みんなとても新潟に興味を持っていますが、「話す場所と疑問を投げかけられる人がいない」と感じました。
テレビや新聞に意見することはないけど、『新潟のリアル!!』には疑問を投げかけるし、話せる…。そんな受け皿になっている実感があります。
——新潟に課題を感じている方が多いのですね。
後藤さん:「これも解説して欲しい」とか「このテーマも取り上げてほしい」というDMやコメントをたくさんいただきます。
一人が感じている違和感は、100人・1,000人・10,000人以上の人が感じているはずです。でも、皆それに気づいていないので、可視化されなければ、存在しないのと同じです。だからこそ、SNSの特性を活かして「共感の数」で可視化することに意味があると思います。

——発信で大切にしていることは?
後藤さん:“一対一のコミュニケーション”です。『新潟のリアル!!』はただの「1分解説」ではなくて、1人が感じた課題に対してそれを1分で解説するという、課題と対になった1分解説のコンテンツです。
一人の疑問に向き合うことで、結果的に多くの人に届く形になると考えています。
——「自分だけではなかった」と気づけますね。
後藤さん:自分の中で諦めていた違和感を、「無視しなくていいんだ」と思えるきっかけになると思います。
その違和感を見逃さないことが“世界を変える”と考えています。『新潟のリアル!!』は、そのきっかけづくりのコンテンツになりたいですね。
——街頭インタビューを通じて感じた事例は?
後藤さん:「若者は新潟から出たがっている」というイメージがありましたが、実際には「残りたい」と思っている人も多く、新潟への愛着も強いと感じました。
データだけでは見えない、“リアルな声”に触れられたのは大きかったですね。

個別の課題が生む新しい価値
——個人の違和感は、地域全体にもつながるのでしょうか?
後藤さん:つながると思います。個人が感じている小さな違和感は、実は地域の大きな課題であることが多いです。
——地方は何を発信すべきだと思いますか?
後藤さん:魅力ではなく、“課題”だと思います。もちろん新潟にも魅力はたくさんありますし、僕自身も感じています。ただ、地域の魅力発信は最終的にどこも似通ってしまう。
「ご飯が美味しい」や「自然豊か」、「東京から近い」など、どの地域も似た表現になってしまうので、そこに差は生まれにくいと思っています。
——では「課題」に注目する理由はどこにありますか?
後藤さん:感じている課題は、一人ひとり違うんですよ。それこそがリアルな情報だと思います。
魅力は均質化されやすいけど、課題は個別性が高い。その違いがすごく大きいと思います。

——課題を発信することで、どんな変化が生まれますか?
後藤さん:外にいる人が「自分に何ができるか」を考えられるようになることです。
課題が具体的に見えた時に、新潟から出た人が「この分野なら関われるかもしれない」と考えられるようになると思います。
——Uターンのきっかけにもなりそうですね!
後藤さん:「いつか帰りたい」という気持ちがある人は多いと思いますが、その“いつか”が少し手前に来る可能性もありますよね。
「戻ってもいいかもしれない」、「まずはこういう形で関わろう」など、その人なりの選択肢が見えてきて、Uターンや関係人口の増加にもつながる可能性が高いです。
——課題を出すことにネガティブな印象もありそうですが…。
後藤さん:そういう見方もあると思いますが、“課題は可能性”だと思います。課題があるということは、まだ伸びしろがあるということなので(笑)。
課題が見えることで、「自分が入る余地がある」と感じてもらえるんです。それがすごく大事なことだと思います。

「新潟のリアル!!」が描く新潟の未来
——「新潟のリアル!!」をどんな存在にしたいですか?
後藤さん:ローカルに特化したリテラシーメディアにしたいです。
テレビや新聞とは違って、“一人ひとりの声や課題”が集まってくる場所を目指しています。その声をベースに、リアルな情報がどこよりも早く集まる存在にしていきたいです。
——今後の目標を教えてください
後藤さん:「新潟のリアル!!」を積み重ねて、最終的には“新潟のグランドデザイン”を描きたいと考えています。
集まった声や課題を整理していくことで、新潟の現在地が見えてくるはずです。
今年の4月から新潟市の総合計画の有識者も拝命しました。受け取った声をしっかり計画にも反映していきたいと思います。

——新潟に必要なものは何だと思いますか?
後藤さん:「誇り」と「憧れ」ですね。僕たちが過ごしている新潟の日常は、誰かにとっては奇跡的なできごとです。何を食べても美味しい、すぐ近くに海や川があるという、この当たり前をまずは誇ることが大事です。
そして憧れとは、「新潟で生きることがカッコいい」と思える状態です。昔は「東京に行けば何かできる」という感覚を持つ人が強かったと思いますが、これからは「新潟で何かをやることが価値になる」と思える時代を作りたいと思います。
——最後に、ガタチラ読者へメッセージをお願いします!
後藤さん:「新潟のリアル!!」は、現実を必死に生きている僕たちの生活そのものです。あなたが感じている違和感は、あなただけのものではありません。それを見逃さなければ、社会は変わる可能性があります。
そのきっかけをつくるためにも、この活動を続けていきたいと思います。ぜひ気軽に見ていただけたら嬉しいです!

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