プロフィール
秋山 武士: 燕市(旧吉田町)出身。新潟の専門学校を卒業後、首都圏のホテルのレストランで修業を積む。その後、新潟へ帰郷し、新潟市内のレストランで料理長、統括料理長を歴任した後、2013年に1号店となる燕三条イタリアンBit新潟店をオープン。2016年には銀座店、2019年にフラッグシップ店となる燕三条本店をオープンした。2025年にニューヨークへの出店を目標に燕三条の魅力を発信している。
一番身近にあったコックの道へ
――秋山さんの生い立ちや経歴を教えてください。
秋山さん:新潟県燕市(旧吉田町)出身です。父親がコックをしていた影響もあり、高校卒業後は調理師専門学校に入りました。その後は、首都圏のホテルのレストランで修業を積み、27歳の時に新潟に帰ってきました。新潟では店舗の料理長を経験し、2013年8月に1号店となる燕三条イタリアンBit新潟店をオープンしました。2016年10月には2号店の銀座店、2019年の春にフラッグシップ店となる燕三条本店を出し、2021年7月にはTOKYO TORCH1階と2021年秋頃には新潟伊勢丹店に出店予定です。
――お父様もコックだったのですね。その影響が強いですか?
秋山さん:たぶんそうですね。今となってみれば、親が料理をしていたということがきっかけだったと思います。他になりたい職業ややりたいものも無かったので、それでコックが一番身近にあったというところが一番大きかったと思います。
――専門学校卒業後、修行をしに東京に行かれたのはなぜですか?
秋山さん:東京に絶対行こうというわけではなかったです。父親がコックとしてずっと東京で働いていたので「やっぱり修行するなら東京がいいんじゃないか」という話もあり、まずは東京に行きました。
燕三条を世界に発信していく
――意外なことに1店舗目は新潟店、2店舗目は銀座店なのですね。
秋山さん:東京から戻ってきてからは新潟市でずっと料理長をしていたので友人や業者さんにもたくさん知り合いが増え、独立するには新潟市が一番やりやすい場所だと思ったからです。銀座店は、2015年の居酒屋甲子園という全国大会で優勝したことをきっかけに出店のお話をいただきました。やっぱり全国大会などで1位になるとそういう話が来るんですよね。チャンスだと思い、出店を決めました。当時は、まだ創業して3年くらいだったのでなかなか大変でしたね。でも、東京の銀座という場所に出店したことでだいぶ変わりました。銀座の中央通り沿いの良い場所にお店があり、それをきっかけに三菱地所や海外から話が来たので銀座でやる意味というのは宝くじを買っているか買っていないかくらい違いますね。
――燕三条イタリアンBitをオープンしたきっかけはなんだったのでしょうか?
秋山さん:他店の料理長をしている時から自分のお店を持つことは考えていました。やはり、色々なお店で働いていると縛りがあるんですよね。もちろん会社の決まりはあるものですし、Bitにももちろんあるのですが、その中で自分のお店を作った方がお客様をもっと喜ばせられると思ったんです。会社に属していれば、どうしても出来ないことがたくさんあります。でも、自分のお店であれば、喜ばせられる方法はたくさんあるのではないかと思い、オープンしました。
――燕三条イタリアンBitの名前にはどんな思いが込められているのでしょうか?
秋山さん:燕三条イタリアンBitは、燕三条を世界や日本全国に発信するというコンセプトで、燕三条の金属洋食器を使って食事ができたり、燕三条を感じられる店内や新潟の食材を優先して使うなど、自分が燕三条に旅行に来た時、行きたいお店にしたいと思っています。旅行に行けば、その土地ならではの料理を食べたり、郷土料理や食材などその土地にあるものが知りたいと思うんです。そういった意味でも燕三条を感じられるようなお店作りをし、燕三条を世界に発信していくという意味を込め、燕三条イタリアンBitとなりました。2025年にはニューヨークでお店をやるというビジョンを掲げているのですが、そこで“燕三条のすばらしさ”を世界に広めたいと思っています。食を通じて、東京はもちろん、世界からも来てもらいたいです。
――燕三条を感じるというところで燕三条の洋食器などを使用されているんですよね。実際にお店で使用することで欲しいなと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
秋山さん: そうなんですよね。今まで百貨店に並んでいた商品を実際に使って試せるという体験・体感がBitの強みでもあると思います。あとは全国の方に燕三条のものを使ってほしいという想いもありますね。出身ということもありますが、燕三条の商品を使うと幸せになるんですよ。それは何かというと、普通のコーヒーカップで飲むのとSnowPeakのカップで飲むのは、行為としては一緒ですが良いもので飲んでいる感じというか幸せが全然違います。だから、世界中の人に燕三条の商品を使ってもらうことによって、その一瞬が幸せになると思っています。
技術はもちろん、人間性も一流に育てる
――秋山さんが経営する中で大切にされていることは何ですか?
秋山さん:やっぱり働いている人が成長しないとお店は良くならないので、人材育成には力を入れています。今は幹部や店長、料理長陣を私が色々教えて、店長、料理長陣が店舗を見ていく形で運営をしています。今年はスタッフの1人がソムリエになったり、周りから見てもなかなか難しいようなことをやっていると思いますね。また、銀座に出店した理由の一つに、新潟だと特に若い子たちが県外へ行きますが、それをどうにかして止めたいという気持ちがあります。なぜ県外に行くかと言うとみんな技術を求めて行くんですよね。そういった意味でも、私たちのお店が東京のど真ん中にあったら、そして東京のトップのお店と肩を並べることができたら、別に東京に行く必要が無くなるのではないかと思っています。現に東京のトップシェフとして働いていた方たちが燕三条に来て、教えているので東京のトップレストランでやっているのと変わらないと思います。
――人材育成のための場作りがしっかりされていますね。
秋山さん:そうですね。ただ、料理は出来るけど、言葉遣いが良くなかったりすることが目立つんですよね。そういった意味でもやっぱり腕はもちろんですが、特に人間性も素晴らしい人材にもっと入ってもらい、新潟も東京も変わらないようにしていけたら良いなと思いますね。あとは飲食人としての在り方や生き方を教えていき、それに腕は勝手についてくるので、そうすると一流のコックやサービスマンになっていくと思います。
――技術はもちろん、人間性を大切にされているのですね。
秋山さん:やっぱりしっかりとしたチームを作らないとお客様は来てくれないと思います。空気が良いお店にお客様は来ますし、スタッフも続かないですからね。「仕事は大変だけどBitで働きたい」とか、「成長もできて楽しい」といったことを感じてもらえないと、と思います。育成することはもちろん、すでに技術を持っているスタッフもよりハイクラスなレベルまで成長してほしいです。
――実際にお店に入った時、スタッフの皆さんの挨拶が明るくとても素敵に感じました!人材育成の賜物ですね。
秋山さん:明るく元気な挨拶はモットーにしています。私も勉強を兼ねて、他のトップレストランへ行くのですが、そういったお店と変わらないクオリティの料理を提供したいと思っています。さらにBitは笑顔がたくさんあり、大きい声で笑いながら楽しめるようなある程度元気や活気のあるお店を目指しています。金額も高すぎず安すぎず、また来れるような金額設定になっていて、ある程度大人で20代の子でもしっかりしているようなお客様が来店してくださるのでお店の雰囲気も崩れないですよね。
――お店の雰囲気まで考えられているのですね!
秋山さん: そうですね。考えているからこそお店に合ったお客様が来てくれます。トップレストランなどのお店と同様に私たちも良い食材をたくさん使っているので、そういったところがお客様をもっと喜ばせられると思った点でもあります。それはどうしているかと言ったら原価率を上げています。例えば、普通だと原価の三倍の値段で売ると言われていますが、私たちの場合は1, 000円のものを1,200円で出すといった特別な商品も多々あります。飲食店は利益が大体10%残れば良いと言われていますが、そこを縮めてお客様にもっと還元できるようにしていますね。そうすることで他のお店と比較すると圧倒的に価値が上がり、コストパフォーマンスが良くなると思います。
一緒に働く仲間たちのために成長を続けていく
――正直、ここまで店舗を拡大すると思っていましたか?
秋山さん:全く思っていませんでした。今も夢の中にいるのかと思っています(笑)。当時は店舗拡大したいなどは思ってなく、ただ目の前のお客さんを一生懸命満足させたい、目の前の仕事を一生懸命やりたいという気持ちだけです。
お客様を喜ばせるためなら何でもやりますからね(笑)。全てお店の為やスタッフの為に繋がっていることだと思うので自分だけこれは嫌だとかは言っていられないですね。
――今までで印象に残るエピソードを教えてください。
秋山さん:先日、銀座店に行った時、学生の時にBitで働いていて、東京で就職した子たちがみんな集まってくれて食事をしました。「今は東京で働いていても、いずれは新潟に帰りたい」とか「修行して、またBitで働きたいです」と言ってくれる子が何人もいて嬉しかったですね。飲食という分野に関して、新潟というまちで飲食をやっているということと、その子たちを少しでも盛り上げていけるようなお店であればいいなと思います。
――最後に、今後挑戦したいことを教えてください!
秋山さん:2021年7月に東京と2021年秋頃に新潟伊勢丹の2店舗をオープン予定なので、まずはしっかりとチャレンジをして、さらに2025年にニューヨークでお店をやるという目標に向かってよりお客様を喜ばせられるお店になりたいと思います。
――事業拡大のモチベーションは何なのでしょうか?
秋山さん: それはやっぱり仲間がいるからですね。私ひとりであればある程度好きなこともでき十分なのですが、今まで一緒に働いてきた子たちにも「飲食業でも余裕のある生活ができるようになるんだ」ということを経験させてあげられるようにまで成長したいですね。その為に燕三条本店ではフルーツサンドなどの販売を始めたり、来年は新潟伊勢丹のレストランの他にデパ地下にも出店予定です。それを通販サイトでも販売できるようにして、セントラルキッチンを作るのです。そうすることで今働いているスタッフたちの労働時間の改善ができたり、通販サイトで売上が上がればスタッフの給料を増やせます。飲食店は利益を上げるのがなかなか難しい職業と言われていますが、企業努力によって、飲食業の価値を上げ、今までの飲食店のイメージを改善したいですね。そして、スタッフの幸せの為に利益を上げ還元していき、最後まで働き続けられるような会社を作っていきたいです。
【燕三条イタリアンBit燕三条本店】
住所:新潟県三条市須頃1-17(燕三条地場産業振興センター 1階 旧レストランメッセピア)
電話:0256-46-0680
営業時間:ランチ 11:30~15:00
ディナー 18:00〜23:00(ラストオーダー21:30)
Bit Cafe 10:00~17:30(ラストオーダー17:00)
Bit Market 10:00~17:30
定休日:水曜日(祝日の場合は振替) 他不定休
素敵なお店ね~燕三条本店にぜひ行ってみたいわ!