【プロフィール】
斎藤 丈司(さいとう じょうじ):村上市(旧荒川町)出身。高校を卒業後、幼い頃から憧れていた料理人の世界に入るため、大阪の辻調理師専門学校へ進学する。天ぷら懐石店など数々のお店で腕を磨いた後、2015年に生まれ故郷の旧荒川町で「天ぷら斉藤」をオープン。
『新潟人231人目は、「天ぷら斉藤」の店主・斎藤丈司さん。かっこいいと感じた世界への憧れを現実のものとし、2015年にお店をオープンしました。紆余曲折の修業時代をはじめ、地元食材への想いや今後の展望についてお話を伺いました。笑顔で取材にご対応いただき、ありがとうございました』
「かっこいい」と感じた天ぷら職人
——料理人になりたいと思ったのはいつですか?
斉藤さん:小学生の頃には「料理人になりたい」と思っていましたね。母親の実家がある富山県魚津市に帰省したとき、外食をする際によく連れて行ってもらったのが“天ぷら屋さん”でした。
カウンターに座って、無言で天ぷらを揚げている職人さんが子供ながらにかっこよく見えたのを覚えています。
——「天ぷら屋」を目指していたのですか?
斉藤さん:天ぷら屋を目指すようになるのはもっと後のことです。当時は父親が坂町駅前で美容室を営んでいたこともあり、「いずれは自分の店を持ちたい」と漠然と考えていました。
大阪の辻調理師専門学校で学ぶ中で、さまざまなご縁から「天ぷら」という選択をすることになりました。
——大阪の調理師学校を選択した理由は教えてください!
斉藤さん:母親の実家がある富山が関西寄りの文化圏だったことや、東京よりも「行ってみたい」という純粋な興味がありました。
最大の理由は、卒業と同時に調理師免許が取れる点でしたね。どこに就職するか分からないから、少しでも早く調理師免許が欲しかったんです。両親から「一度県外に出てみることも大切だ」と勧めてもらったことも大きかったですね。
厳しかった修業時代
——大阪に行ったことはよい選択でしたか?
斉藤さん:良かったですね。大阪の修業先で出会った方がこの前もご飯を食べに来てくれました。今も続くご縁をいただけたことに感謝しています。
また、その修業先は東京にも店舗があったので、「ごま油で揚げる関東風」や「あっさりとした油で揚げる関西風」など、当時の主たる手法を学べたことも財産です。
——修業先の「一宝」はどんなお店ですか?
斉藤さん:当時は、個室で前菜やお酒を楽しんでいただいてから、カウンターのある別の部屋で天ぷらを楽しんでいただくスタイルでした。接待などで使われることが多い天ぷら割烹でしたね。
——修業はやはり厳しかったですか?
斉藤さん:言葉で教えてくれるような場所ではなかったですね。「脇鍋」という先輩の仕事をサポートしながら技術を習得していくポジションがあるのですが、私には乗り越えないといけない試練がありました。
——試練ですか…?
斉藤さん:まずは、利き手の矯正です。私は左利きなのですが、「右手で箸を持てるようになりなさい」と言われ、大豆を掴むところから始めました。
というのも、調理台や揚場などお店の仕組みが逆手だとやりにくいようになっていたからです。
——包丁も同様にですか?
斉藤さん:包丁はもともと右手で扱っていたので、まだ救われました。それでも矯正は大変でしたね。
まかないを食べる際も「右手で」という空気で、そのストレスで食べた気がしませんでした。右手で箸を使えるようにならないと修業もままならないので、しんどい期間が続きましたね。
大事な教えを学んだ、金沢での2年間
——「一宝」では何年ほど修業していたのですか?
斉藤さん:約3年ですね。その後は系列店のホテルや別の懐石料理店などに務めたり、様々なお店で勉強させていただきました。
そんな折、祖父が体調を崩したのを機に新潟へ戻り、勤め先を探すようになりました。地元の飲食店で5年ほど働いた後に、金沢にある「天ぷら 小泉」で2年ほどお手伝いをさせていただきました。
——またしても初めての土地で腕を磨くことになるんですね!
斉藤さん:私にとっては非常に大事な時間だったと思います。天ぷら小泉は「ミシュランガイド北陸2021 特別版」で2ツ星を獲得するのですが、大阪と東京版しかないときから「いつミシュランが来ても星が取れる準備をしなければならない」というのが常に口癖でした。
“日々の準備の大切さ”をたたき込んでくれましたね。当店が「ミシュラン新潟2020特別版」でミシュランプレートを獲得できたのも、小泉さんの教えがあったからだと感謝しています。
食材の宝庫のアドバンテージを生かす
——2015年に、地元・旧荒川町にお店をオープンされましたね!
斉藤さん:オープン当初は、“地元にこれほどいい食材があること”を知りませんでした。
生産者の方々がお店に来てくださる機会があり、現場で作っているものや獲っているものを直に見せていただくようになりました。
——生産者さんとのつながりで知っていったのですね!
斉藤さん:“この土地だからこそ食べられる食材が多彩にあること”が徐々に分かってきて、「その価値を多くの方に知っていただきたい」という想いが自然と生まれてきたんです。
生産者や漁師さんへ密に話を聞きながら、それぞれに見合った処理や調理、提供方法を模索するようになりました。
——非常に創造的なお仕事ですね。
斉藤さん:「生産者や漁師さんと食べ手をつなぐのが私の仕事」だと思っています。あえて生の食材と揚げた食材を合わせて食感や味わいに奥行きを出したり、同じ食材であっても火の通し具合を変えることで味わいに変化が出ます。
「天ぷら」という調理方法だからこそ可能な食材のポテンシャルの引き出し方を突き詰めたいですね。
——最後に、今後の目標を教えてください!
斉藤さん:新潟で天ぷらを食べるなら「天ぷら斉藤」と言っていただけるようになるまで精進し続ける、これに尽きますね。
【天ぷら斉藤】
住所:村上市坂町3276-1
電話:090-7115-6906
営業時間:17:00~22:00
公式ホームページ:https://peraichi.com/landing_pages/view/tenpura-saito
公式Instagram:@tenpurasaitou
食材のポテンシャルの引き出す天ぷらを堪能してみたいわ♪