【プロフィール】
青木 弘(あおき ひろむ):新潟市西区(旧黒埼町)出身。高校卒業後、アメリカへ農業研修に参加。青木農場を継いでからは、ビジネスとしての農業経営を確立するため、米粉スイーツなどに力を入れる。現在は後継者の長男とともに奮闘中。
『新潟人256人目は、「青木農場」の代表取締役・青木弘さんです。農業に対する思いや人気の米粉スイーツの誕生秘話など、様々なお話を伺いました!笑顔でご対応いただき、ありがとうございました♪』
アメリカで学んだ“ビジネス”としての農業
──家業を継ぐつもりだったのですか?
青木さん:実家は江戸時代から300年続く農家であり、私は長男だったので「継ぐのが当たり前」と言われていました。普通科高校や東京の大学へ行く選択肢もなく、当時は外の世界に憧れていましたよ。
──他の仕事を選ぶ選択肢はなかったのですね。
青木さん:そういう時代でもありましたからね。子供の頃は両親が働き詰めで、旅行や遊びに連れて行ってもらえなかったこともあり、農家に対してあまり良いイメージはありませんでした。
──アメリカへ農業研修に行った経験があるとお聞きしました!
青木さん:20代の頃に、1年間だけカリフォルニアへ農業研修に行きました。現実逃避という意味合いもあり、あわよくば向こうで雇ってもらえないかなとも考えていましたね(笑)。
両親には見抜かれていて、アメリカ行きを猛反対されていました。「こいつは帰ってこなくなるだろう」って(笑)。
──農業研修ではどんなことを学びましたか?
青木さん:カリフォルニアでは、農業が「ビジネス」として確立されていました。私の“農業に対するイメージ”をガラッと変えましたね。
日本では“農業のマネジメント”という考え方が希薄で、労働対価を稼げないから朝から晩まで働いているケースが多くあります。しかし、「日本でも同じようにやれるのでは」と考えました。
──休日なしに対する考えも変えられたのですか?
青木さん:当社は農業法人ですが、休日はカレンダー通りです。他の農家さんからは「青木農場のやり方を真似したら潰れるよ」と言われることもあります。
一生懸命に取り組むためには、“しっかり休む”ということも大切です。休日がしっかり確保された上で、生産性を上げながら給料が保証されるべきと考えています。
──確かに、農家さんは休みが少ないイメージです…。
青木さん:家族経営だった頃は休みが少なかったので、自分で時間を作ってスキーやゴルフなどの趣味を楽しんでいました。趣味の時間を通して、次の仕事のひらめきや気づきがあるんですよね。
だからこそ、社員が休日を取っても農業生産効率が上がるように、数字を追うことが重要です。そうしないと、永遠に農業は変わらないと思います。

【青木弘社長(左)と青木多満寿専務(右)】
【過去の新潟人はこちら】
▶【見附市】伝統を守りつつ、新しい挑戦を!『越後見附太鼓の澁谷貴之さんと髙橋楓さん』が目指す“かっこいい団体”とは…!?
▶【新潟市中央区】『シャインズ・ファクトリーの齋藤泰佑さん』をご紹介!「障害認定」を受けた経緯やスタートした新事業について聞いてみた♪
“効率化と安全性”を両立
──数字を追いながら効率化を図っているのですね!
青木さん:しっかりコスト計算をすると、売上は上がっても収益が上がらないものが見えてくるんです。
「手作業が基本のブロッコリーよりも、機械化できてコストを抑えられる枝豆にシフトしよう」というように、軌道修正しています。
──効率化しながらも土壌分析を毎年されているのですか?
青木さん:枝豆は“土づくりが重要”なので、土壌の健康状態を数値化して分析し、枝豆の根がしっかり育つ環境づくりに取り組んでいます。
一方で、豆の選別などにはAIカメラを導入して機械化していますよ。最終的にはもちろん人のチェックが入りますが、人の負担を極力減らしています。
──農薬や化学肥料を減らす農業も実践されているのですね!
青木さん:虫食いや病気が発生するので、農薬をゼロにはできませんが、最低限の使用で留めています。農薬がなかった頃は本当に苦労したんですよ。
──最低限の使用にこだわる理由は何ですか?
青木さん:農業をする側も農薬の被害を受けやすいんです。農薬が開発された当初は、収穫量が増えることもあり、競うように農薬を撒く風潮がありました。
しかし、農薬は皮膚や口から人体へ入ってくるんですよね。健康被害が生じるようになり、私の母親も体調を崩していたんです。
“米どころ新潟”をスイーツで発信!
──米粉スイーツについて教えてください!
青木さん:当社の米粉スイーツは「玄米粉」で作っています。玄米だと残留農薬を心配する方も多いと思いますが、玄米粉には「新潟県認証の特別栽培米の指針に沿って育てた米」を使用しているのもこだわりです。
──米粉スイーツを考えたきっかけは何ですか?
青木さん:地球温暖化の影響で、農作物の収穫量が半分やゼロになる年が増えてきています。米を作っても収益が上がらない以上は、農業を持続可能なものにするためにも“収益の柱”を立てなければいけません。
小麦粉の代替品としてではなく、「米粉だから美味しく、日本ならではの米粉スイーツを提供したい」という思いがあります。また、「スイーツで収益の柱を立てていられれば“農業が持続可能になる”」という考えからです。
──最初に作ったのが「玄米粉焼ドーナツ」なのですね!
青木さん:玄米粉や黒糖、アルミフリーのベーキングパウダーしか使っていないのでとってもヘルシーです。
小麦粉を一切使用しないグルテンフリーなので、アレルギーのお子様やダイエット中の方のおやつや朝食にぴったりです。腹持ちも良く、ゆっくり消化するので血糖値も上がりにくいんですよ。
──モチモチ食感で満足感もありますよね!
青木さん:油で揚げていないので、罪悪感も少ないですよね(笑)。“米どころ新潟ならではのスイーツ”だと思います。
「コシヒカリの玄米粉を使っている」と話すと、よく驚かれるんです。「新潟のコシヒカリにずっと輝いていて欲しい」という思いから名付けた、米粉バウムクーヘン「NIIGATAひかりBAUM」もおすすめです!
──スタッフにはパティシエの方もいらっしゃるそうですね!
青木さん:専門学校を卒業したパティシエが新卒で入社してくれました。新商品開発で頑張ってくれています。
今はネット販売(ガタ市など)と月1回の直売会が中心ですが、いずれは実店舗を持って販売していきたいと考えています。
直売会で感じる地域とのつながり
──これまでの印象に残るエピソードはありますか?
青木さん:直売会では炊き立ておこわも提供するのですが、毎回楽しみにしてくれているお客様がいるんです。「待っていたよ」と言われると、“お客様が笑顔になる商品を作っていかなければいけない”と改めて気づかされますね。
地域の賑わいが減ってきている中で、お祭り的な盛り上げ方をして、直売会でも地域に貢献できればいいなと思います。
──最後に、今後の目標を教えてください!
青木さん:新潟県は日本の中でも米作に適している土地ですし、“ここで作った美味しいお米をスイーツやおこわなどの形でデザインしていきたい”ですね。
農業は体力的にはきついこともありますが、ストレスフリーなんですよ。汚れるけど、心は洗われている気がします。失敗するのはチャレンジしているということなので、失敗を恐れずに飛び込んでいきたいと思います。
【青木農場】
住所:新潟市西区木場2355
公式ホームページ
公式Instagram
グルテンフリーのスイーツは嬉しいわね♪