【プロフィール】
佐藤 康夫(さとう やすお):加茂市出身。料理屋の次男として生まれ、高校卒業後は大阪の料亭「吉兆」で修業する。その後、フランスでの研修を経て、26歳の時に家業である「きふね」に入社。現在は料理長として、伝統的な和食から、趣向を凝らした創作料理などを提供している。
『新潟人249人目は、「日本料理きふね」の佐藤康夫さんです。家業を継いだ佐藤さんが“鰻”に力を入れたきっかけのほか、大切にしていることなどを伺いましたよ!笑顔でご対応いただき、ありがとうございました♪』
「大阪へ修業に行け」
――家業を継ごうと考えていたのですか?
佐藤さん:生まれた時から“料理の道に進むことは決まっていた”ようなものでしたね。家を継がなかったら、大工やモノづくりの仕事をしたいと考えていました(笑)。
高校卒業後は、父親から「大阪へ修業に行け」と言われて…。大阪にある老舗料亭の「吉兆」に入社しました。
――料理の世界へ飛び込んだのですね…。
佐藤さん:基本的に専門卒の方が多く、高卒は私だけ…。同期は調理系の専門学校を卒業した人ばかりでした。
関西弁は外国語に聞こえてくるし、寮生活でずっと敬語だったので、その生活に慣れるのが大変でしたね。1年目は、辞める言い訳をずっと考えていました。
――同期は何名くらいでしたか?
佐藤さん:40人程いましたが、4年後には自分一人になっていましたね。半年で辞めてしまう人も多いほど、厳しい環境だったと思います。私は8年間勤めました。
――モチベーションは何だったのですか?
佐藤さん:「きふねを継ぎたい」という想いと、「同級生が遊んでいるうちに頑張らないと意味がない」と奮い立たせていたことだと思います。最終的には、昼のミニコースの献立を任されるまでになりました。
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思い立ったら、すぐ行動
――パリにも修業に行かれたのですか!?
佐藤さん:大阪時代にシェフが集まるワインバーによく行っていて、そこで「佐藤君も海外に行ってみたらいいよ」と言われたのがきっかけです。
吉兆を退職した1ヵ月後には、フランス・パリへ行っていました。父親には「吉兆で10年修業してこい」と言われていましたが、もういいかなと思ったんです。
――別の分野を身に付けたいと思ったのですか?
佐藤さん:そうですね。マンネリ化していたのも理由です。1年を通した料理は理解していましたが、仕上げは上司の仕事だったので任せてもらえませんでした。
長く働くつもりもなかったので、「それなら違うフィールドで学ぼう」と考えました。
――フランスのホテル「リッツ パリ」で修業されていたとは驚きです…!
佐藤さん:「給料は出ないけれど、居てもいいよ」というような枠があったんですよね。
通常はフランス語や英語を話せないと入れないのですが、“吉兆で日本料理を8年やっていた経験”から、修業させてもらえることになりました。
――今でもフランス料理を作るのですか?
佐藤さん:パリから帰ってきた時は作っていましたが、今は作っていないですね。でも、パリで学んだことも今の料理に活きていると思います。
ワインソムリエの資格を取得するときも、フランス語がスムーズに入ってきたので覚えやすかったですね。
――フランスに渡ったり、資格を取ったり、すごい行動力ですよね!
佐藤さん:ソムリエスクールの先生にも「思い立ったら即行動する性格だね」と言われて、その時に気づきました(笑)。
自信を持っておすすめできるメニューを
――「日本料理きふね」の歴史を教えてください。
佐藤さん:農家だった祖父が、減反政策の影響で「このままでは生活できない…」と悩んでいた時に、「食堂を始めたいから土地を売ってくれ」と言われたそうです。
「それなら自分でやる」とトンカツやオムライスなどを提供する定食屋をスタートさせたのが始まりです。当時は料理人を雇って営業していたそうですが、それから55年経ちますね。
――特徴はどんなところですか?
佐藤さん:お客様に合わせた料理を提供しているところです。「自分がお客さんだったら」という視点で、コースの値段やボリュームなどを考えていますね。
また、女性が多い宴会であれば、酒のつまみよりも女性が好みそうなフードを多くして、満足してもらえるように工夫しています。
――鰻はいつから提供し始めたのですか?
佐藤さん:昔から夏限定で提供していましたが、力を入れ始めたのは2018年頃ですね。
「きふねは何がおいしいですか?」とお客様に聞かれた時に、「これ」というものがなかったんです。日本料理は季節の料理になってしまうので、“自信を持って言えるメニューが欲しい”と思ったのがきっかけです。
――それから通年での提供を始めたのですね!
佐藤さん:私自身、鰻が好きというのもありました。力を入れるにあたって、鰻屋が立ち並ぶ成田山(千葉)へ食べに行ったりしながら研究しましたよ。
それまでガスで焼いていたのを“炭火”に変え、タレなども改良しました。
――すぐに注文は増えましたか?
佐藤さん:最初は驚くほどの安い価格で提供していましたが、全然売れなかったんですよ(笑)。広告を出したりもしましたが、なかなか厳しかったですね…。
――風向きが変わったきっかけは何だったのですか?
佐藤さん:真空パックにする機械を購入して、お取り寄せできるようになってから徐々に定着していきました。新型ウイルス禍だったので、周囲は反対していましたけどね。
最初は1年間に12件ほどだったのが、1日で40件も注文が入るようになり、嬉しい悲鳴でしたね(笑)。お取り寄せをきっかけに、遠方から食べに来てくれるお客様やリピータも増えました。
世界中の方々へ加茂の魅力を伝える
――大切にしていることは何ですか?
佐藤さん:「美味しくなれ」と思いながら、丁寧に焼き上げています。鰻によってタレにつける回数も異なりますし、焼き方は感覚なので現状に満足はしていません。
鰻は金額も高く、好きな人の中には舌が肥えている方も多いので、“期待を裏切らないように”、常に緊張感を持って作っています。
――鰻以外のメニューでは、「桐たんす御膳」も人気ですよね!
佐藤さん:加茂市の「野本桐凾(きりはこ)製作所」さんから特別に作ってもらった桐たんすに、季節の料理を盛りつけたメニューです。
予約なしでも注文できるので、ぜひ堪能していただきたいです。
――最後に、今後の目標を教えてください!
佐藤さん:加茂の魅力を表現する食材だけでなく、加茂の歴史ある製品や自然も含めて表現していきたいですね。
そして、世界中の方々から加茂へ来ていただき、当店で食事をしてもらいたいと思います。
――佐藤さんの表現する料理が楽しみです!
佐藤さん:また、2階席でワインを提供できるようにしたいです。50歳までにと思っていますが、あと5年しかありません(笑)。
日本料理や鰻に合うワインもあるので、“ワイン好きが集まるようなお店”になれたらいいなと思います。
【日本料理きふね】
住所:加茂市穀町10-4
電話:0256-52-2340
営業時間:10:30~14:00(ラストオーダー) 17:00~20:00(ラストオーダー)
定休日:木曜日
公式ホームページ
公式Instagram
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