プロフィール
後藤 寛勝(ごとう ひろかつ):1994年新潟市生まれ。18歳から若者と政治を繋げる機会と場作りの活動を始め、中央大学在学時に2016年にNPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」の代表理事となる。大学卒業後は、博報堂DYメディアパートナーズ(株)ONESTORYに入社し、地域を舞台にした事業開発や、広告制作に従事。コロナ禍を経て、2020年5月に新潟と東京に暮らす新潟出身の若者を繋ぐコミュニティ「Flags Niigata(フラッグスニイガタ)」を設立し、新潟を盛り上げる活動に取り組んでいる。
高校時代のある“違和感”から始まった
──後藤さんの生い立ちを教えてください。
後藤さん:新潟市出身です。高校時代に若者と政治を繋げる場作りの活動を始めました。きっかけは、進路選択の時に経済的な理由や家庭の事情で進路を断念する友人がいることに違和感を覚えたことです。担任の先生に相談すると、「それは政治で解決できることだろう」と言われ、「政治を極めれば、何か変えられるのではないか」と考えました。
──どんな活動をされていたのですか?
後藤さん:大学進学後も活動を続け、学生団体だった活動体をNPO法人化し、代表理事を務めました。学生時代には、高校生と国会議員が国会議事堂で討論するイベントを企画し、政治家の人となりを知ってもらう機会を作りました。他にも、当時は18歳選挙権への機運が高まっていたので、若者が若者に対して政治教育をするカリキュラム「票育」という事業を立ち上げました。身近な地域の問題から考えられるように、大学生や高校生が小中学生に政治の授業をする取り組みをしていました。
──たしかに若い頃は政治に興味を持つことがあまりなかった気がします…。
後藤さん:「政治に興味を持って欲しい」とメッセージを発信するだけでは何も変わらないと思っていたので、自然と興味が持てる形を作って“参加”してもらうおうと、クリエイティブの手法を学ぶために広告会社に就職しました。入社してからは、地域の魅力を発掘し、クリエイティブやメディアの力を使って、それを世の中に広げていく仕事をしていました。
──先を見据えての就職だったのですね。
後藤さん:しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で地方に行く機会が減りました。家にいることが増え、いつか新潟の力になりたいと考えていたのに、何もできないことが悔しかったです。新潟から上京している友達に連絡を取ると、みんな同じような心境でした。その仲間と東京に居ながら新潟のためにできることを考え、継続的に活動していこうと2020年5月に「Flags Niigata」を立ち上げました。
「Flags Niigata」とは?
──「Flags Niigata」の特徴を教えてください。
後藤さん:新潟にゆかりのある20~30代のためのコミュニティです。コロナ禍をきっかけに働き方の選択肢が増えたので、「上手に東京から離れよう、上手に新潟に近づこう」をコンセプトに様々な活動をしています。立ち上げ当初は20人弱でしたが、現在は800人弱が参加しています。そのうち、東京にいる方が65%で、残りの35%は新潟在住です。新潟を離れたことで新潟の良さに気づき、いずれは新潟に戻りたいと考え、新潟の力になれることはないかと考えている人たちが多いのが一番の特徴ですね。様々な企画がありますが、全てはコミュニティです。「新潟で何かを作りたい」という会話の中から、やりたい人が集まって形にする企画集団の一面があります。
──会話の中で出た課題を皆さんで解決策を考え、企画されているのですね。
後藤さん:そうです。実際に稼働しているのは会員の2~5%だと思いますが、私はそれでいいと思っています。企画ごとにやりたい人が参加する。企画ありきでアクティブになるので良いと思います。私はコロナ禍で苦しかったり、寂しかった時にその穴を埋めてくれたのが新潟出身の仲間だったので、このコミュニティでそんな仲間が少しでも増えて欲しいと思います。
──様々な職種の方が参加されているので交流の幅も広がりますね!
後藤さん:大人になると友達を作る機会がないですよね。他業種の方と出会う機会が普段ない方も多いと思いますが、コミュニティに参加することで様々な職種の方に出会えることは魅力だと思います。
──コミュニティで印象に残るエピソードはありますか?
後藤さん:小学校の初恋の人に会ったとコメントされている方がいました(笑)。まさに地元のコミュニティならではだと思いましたね。コミュニティで出会って結婚した方もいます。「オンライン酒場」という、お酒を持ち寄り、同じ時間に必ず誰かと繋がれる場所を定期的に作っているのですが、オンラインでもいつも3次会まで行われています(笑)。「新潟出身」は、努力なしで手に入る“優良な資格”だと思うんです。この資格があるだけで、多くの方と繋がれて、一人ではないことに気付きました。新潟へ行っても一人じゃないと思えたことが、Uターンをする時の後押しになりましたね。
──新潟にUターンされてからプライベートはどんな過ごし方をされていますか?
後藤さん:2021年に結婚し、東京から妻が一緒に移住してくれて、もうすぐ子供も生まれます。自分という単位が広がったので、「僕が」ではなく、「僕たちが」という考え方になりました。基本は妻とご飯を食べるようにしていますし、新潟を知って欲しいので一緒に出掛けることが多いですね。知らない土地で生活することは大変だと思うので、妻が少しでも早く新潟に慣れるように力になれたらと思います。
(オンライン酒場の様子)
誰でも立ち寄れる「オンラインの地域の寄合所」を作りたい
──最後に今後挑戦したいことを教えてください!
後藤さん:2つあります。1つはオンラインの地域の寄合所を作りたいです。若い人が地域にどう関わっていくか議論されていますが、その手法の多くは、町内会や消防団、マンションの理事会に入ることなど。しかし、Flags Niigataを立ち上げたことで、実際に会わなくても「新潟出身」という軸だけで助け合える関係は構築できると分かったので、引き続きオンラインを活用して作りたいです。もう1つは、民間主導でやりたいことを実現できるような場所、資源を作ることです。政治に依存せず、民間でやれることはやっていく文化を作ることが大切だと考えています。その土台作りができれば嬉しいですし、やりたいことがある人ばかりではないので、やりたいことがある人を気軽に応援できる社会になって欲しいと思います。
──「Flags Niigata」には、どんな方に参加してもらいたいですか?
後藤さん:どこかで孤独や寂しさを感じる人に参加してもらいたいです。参加するだけでも安心感があると思いますし、企画を形にできれば、自分も頑張ろうと思えたり、新潟に帰ってきたいと思ってもらえるかもしれないですよね。お互い頼り頼られる場を作って、その延長線上で、仕事や未来を変えていきたいです!
いろんな活動をしているんだな!これからの企画にも注目だね!