プロフィール
杉本 正道(すぎもと まさみち):埼玉県で生まれ、静岡県で育つ。高校在学中に調理師免許を取得。高校卒業後、親の勧めでコンピュータ専門学校へ進学する。その後、JAをはじめ、様々な職を経験し請負会社で愛さんと出会い「マルニチガイ・丁字」をオープンする。
杉本 愛(すぎもと ちか):新発田市出身。愛知県の大学を卒業後、複数の会社でキャリアを積む。正道さんと出会った請負会社を早期退職し、各地を旅しながら過ごす。三重県にある自然食のお店に影響を受け、正道さんと「マルニチガイ・丁字」をオープンする。
自然食品のお店に魅了されて
――正道さんの生い立ちや経歴について教えてください。
正道さん:埼玉県生まれ、2歳まで東京で育ち、その後はずっと静岡県で過ごしました。中学3年生の時、進路を考える中で手先が器用だったこともあり、工業系の仕事をするか調理の学校に行くか悩んでいました。当時、調理の学校はあまり聞いたことがなかったので「おもしろそうだ」と思い、進学しました。
――その後はレストラン等に就職されたのですか?
正道さん:景気の良いその時に就職しておけば良かったのですが、父親に「これからはコンピュータの時代だから専門学校に行け」と言われ、内定していた就職先も辞退し、再び専門学校に通いました。その後、バブルが弾け、就職は大変でしたね。最終的にJAへ就職しました。
――調理とは別の業界だったのですね。
正道さん:そうなんです。JAに6年勤めた後は、製薬会社、コンビニ、家電量販店などに就職し、金融、製薬の知識、流通、接客販売、人事など様々なことを経験しました。妻とは、人事をしていた請負会社で出会いました。
――職場での出会いだったのですね!愛さんのご出身は?
愛さん:私は新発田市出身です。私はその請負会社を早期退職し、日本全国を旅して回りました。環境大学に通っていたのでオーガニックな暮らしに興味があり、各地を回りながら自然なものを探していました。その時、三重県のあるお店に出会ったんです。
――どんなお店だったのですか?
愛さん:東海道の宿場町・亀山に江戸時代からある米納屋のお店です。そのお店は米の販売の他、自然食品の販売やカフェ事業も展開していました。商品や料理のおいしさに魅了され、土日だけ働かせていただきました。平日は三重県庁の観光課で地方創生の取り組みをしていました。
正道さん:私も妻が働いていたカフェの料理を食べた時、「本物の調味料を使うとこんなに違うんだ」と驚きました。自然食品は体にも良く、味も良いですし、余分なものを入れなくて良いということに気づきました。
昔の良さが詰まったカフェ
――新潟に戻られたきっかけを教えてください。
愛さん:三重県で働いていた時に体調を崩し、実家の近くで療養したいと主人にお願いした事と、新潟の活性化に貢献したいと常々考えていたこともきっかけの1つですね。
――お店はすぐにオープンされたのですか?
愛さん:三重県のカフェのような古民家の空き家を新潟に戻る前から探していたのですが、物件探しには本当に苦労しました。
正道さん:やっと見つけたこのお店は30年間、誰も住んでいないジャングル状態でした。お店にするまで2年掛かりましたね。業者に頼めるところはお願いして、後は自分達でリノベーションしました。そのおかげで技術は身に付きましたね(笑)。
――素敵な雰囲気のお店ですよね。
正道さん:うちのお店は、“本物”の古民家スタイルです。梁の黒さは囲炉裏を使っていぶされたためです。天井も抜いてあるので、冬は雪が降ってくることもあります(笑)。
――お店の名前の由来を教えてください!
正道さん:これは、杉本家の家紋なんです。漢字で書くと「丸に違い丁字」と書きます。
愛さん:うちのSNSのマークもこの家紋です。友達に画数を見てもらい、「“丸に違い”をカタカナにして、“丁字”は漢字が良いよ」と言われて決まりました。開業届を出すまで私は教えてもらえなかったんです(笑)。
正道さん:一度聞くと大体忘れないですよね。気になると検索もしますよね。人事をやっていた時の経験から、お金を使わずにどうしたら検索されるようになるのかを考えた時に「おもしろいインパクトのある名前をつけよう」と思い付いたのがこれです。
素材にこだわる素朴なおいしさ
――お店に来られる方はどんな方が多いですか?
愛さん:少し分かりづらい場所にあるので、この場所を探せる人は変わっている人が多いと思います(笑)。変な方は鼻が利くみたいで(笑)。何回かチャレンジしてくださり、やっと辿り着いたという方もいらっしゃいました。あとは、猫が見たくて来られる方も多いです。
正道さん:アレルギー系のお子さんがいらっしゃるご家族の方なども良く来られます。うちの商品には牛乳、バター、卵を使っていないので「そういうお店を探していました!」というお客さんも多いですね。
――「マルニチガイ・丁字」のパンの特徴を教えてください。
正道さん:私が作るパンは“師匠のパン”を改良したものです。師匠は京都の方なのですが、飛び込みで修行をお願いしました。その方が作るパンは、ドイツパンのようなパンなのですが、歯が弱い方でも食べられるように試行錯誤し、今の柔らかさになりました。
――なぜその方に修行をお願いしたのですか?
正道さん:テレビ番組で紹介されたパンがとてもおいしそうだったんです。すぐにネットで調べたら電話番号まで出てきたので(笑)。その方はパン屋ではなく、石窯職人だったんです。自分たちが食べるだけのパンを趣味で作っていたんですよね。
愛さん:だからこそ、今まで食べたことのないパンでした。その方が5歳の時に住んでいたオーストラリアで食べていたパンが日本に売られていなく、自分で何年か改良して作ったパンなんだそうです。
――お店ではパンの購入、カフェでのイートインが可能なんですよね?
愛さん:そうです。お客さんにはゆっくりしてもらいたかったので、コロナが流行る前から基本1日1組限定の予約制です。基本なのは近所のお友達がちょくちょく現れる事が多いからです(笑)
赤ちゃん連れの方やペット連れの方も、まわりに気を遣わずにゆっくり過ごして欲しいです。
正道さん:パン種を作る担当が妻なのですが大概寝ています(笑)パン種ができないと私は作れないですからね(笑)。だから常にパンケースにパンがあるわけではないので、購入したい方は前日くらいまでにご連絡ください。時間を指定していただければ、焼き立てをご用意できます。
――突然行くとない場合があるということですね(笑)。
愛さん:そうですね。たまたまある場合もあります(笑)。西蒲区にある「そら野テラス」さんにも卸しているので、そちらでも購入できます。
正道さん:うちのパンは全部手ごねで作っているので数に限りがあります。手ごねだからこそ、パン自体にも粘りがありますし、発酵をドライイーストというイースト菌に任せていて、それ以外の発酵材は不使用というこだわりがあります。なので、ドライイーストが頑張ってくれないとどうしようもないんです(笑)。
――パンにも営業スタイルにもこだわりを感じますね。
正道さん:オープンして3カ月後に妻が倒れ、どうしようと考えた時に出会ったのが“イベント出店”でした。販路を考えた時に初めはネット販売を始めたのですが、伸び悩んでいたところにイベントの話をもらい、イベントに参加するようになってからは人との繋がりでネットワークができ、少しずつ楽になりましたね。他のお店の皆さんが教えてくれるのでようやく“丁字スタイル”ができました。
新潟全体をもっと元気に
――今後挑戦したいことを教えてください!
正道さん:地域活性化ですね。新潟だと「一部の地域だけ元気になればいいや」という考えが強い気がします。ある地域に新しい建物ができた時も「建物ができた」で終わってしまうんです。そういう小さなことも色々な地域と連携させれば、新潟県全体が盛り上がるのではないかなと思います。そういったことをしていきたいですね。いまはまだ小さいハブですが、様々な地域・職の方が集まるハブになりたいですね。
愛さん:県内には、埋もれている観光地やお店などがたくさんあります。そういった場所をSNSで発信していきたいですね。もっと発信してみんなで元気になりたいです。
【マルニチガイ・丁字】
住所:新潟市西蒲区巻東町128−1
素敵な雰囲気のお二人ね♪1日1組限定のカフェにも足を運んでみましょう!