【プロフィール】
家井 悠太(いえい ゆうた):新潟市北区(旧豊栄市)出身。中越高校では野球漬けの生活を送り、高校卒業後は城西国際大学へ進学し、カリフォルニア大学への留学も経験。都内で金融業界での営業職、東証プライムIT企業での営業職などを経験した後、家業を継ぐために帰郷。現在は「株式会社いえい」の常務取締役として、会社の可能性を広げている。
『新潟人234人目は、「株式会社いえい」の家井悠太さん。1938年に創業した「菜菓亭」は“河川蒸気”が特に有名ですよね!家業に対する思いや新商品のペット用お菓子を企業様への提供をはじめ、今後の目標などたくさんのお話を伺いました。素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!』
甲子園を目指した高校時代
──東京ではどんな仕事をされていたのですか?
家井さん:金融、IT業界での営業です。自身の成長や新しい人と出会う事が好きで営業をしていました。
また、家業に戻ることを前提に、営業スキルを身に付ける事と金融知識を幅広く獲得する為に仕事をしていました。
──家業を継ぐことを考えていましたか?
家井さん:最初の質問といきなり矛盾しますが、実は当初は考えていませんでした(笑)。高校生までは野球漬けだったので、プロ野球選手になりたかったんです。スポーツ関係の仕事も考えていましたね。
──考えが変わったきっかけは何ですか?
家井さん:高校野球での経験です。3年生の夏の県大会は先輩方が2年連続で甲子園に出場をしていて、戦後初の3連覇がかかっていました。しかし、決勝では日本文理高校に敗れ、甲子園へ行けませんでした。
個人としても、ベンチに入れずスタンドで応援をしていた身だったので、“チームとしても個人としても大きな挫折”を経験しましたね。その後、進路を考える際に家族とも話し、「家業を継ぎ、次の世代へ繋いでいく事がやるべき事だ」と強く感じました。
──挫折経験が家業への考え方を変えたのですね!
家井さん:そうですね。当時の監督から言われた「今後の人生は個人としてもチームとしても負けるな」という言葉を胸に日々を過ごしています。
進学先の大学では文化人類学を専攻し、世界の歴史学や地政学、英語を中心に言語学を学びました。将来的に海外で仕事をすることも考えて、アメリカ留学もさせてもらいました。
──Uターン後は何から着手されたのですか?
家井さん:まずは組織図の作成から取り組みました。スタッフ一人ひとりの可能性や価値が発揮できるような会社組織を作り上げる為です。
「新潟を中心にした地域社会に継続して貢献できるような基盤の強い会社にしたい」という想いがあるので、社内改革を進めていきたいと考えています。
菜菓亭の歴史
──菜菓亭の歴史を教えてください!
家井さん:1番初めは、曽祖父が始めた下駄屋でした。下駄屋を営みながら、「福寿堂」という屋号で冠婚葬祭用の式菓子を売っていたそうです。
ただ、「株式いえい」を創業した祖父は、“便所下駄”とバカにされるのが嫌で洋菓子店を開業したと聞いています(笑)。
──創業時は菓子販売だけではなかったのですね!
家井さん:祖父は最初から洋菓子屋になるつもりで東京へ修業に行き、帰郷してから「株式会社いえい」を立ち上げました。
その後、菜菓亭として洋菓子と和菓子の両方を手掛けるようになり、「麦ばたけ」というパン屋をしていた時期もあったそうです。
──当時から新しいことに挑戦されていたのですね!
家井さん:昔から新しいことをするのが好きな家系なんです。その分失敗も多かったそうですが、祖父からは「習うより慣れろ」と教えてもらっています。
私にあまり落ち着きがないのは、祖父のせいかもしれません(笑)。
──「河川蒸気」も新しい味が増えていますね!
家井さん:「河川蒸気」は小豆クリーム味を定番に、季節の商品としていちご味、枝豆味、コーヒー味、ル・レクチェ味をラインアップしています。それに加えて、期間限定フレーバーもあり、前回は抹茶クリーム味を販売しました。
──店頭には様々な商品がたくさんありますよね!
家井さん:今は焼き菓子が中心ですが、生菓子としては海の塩大福、半熟ショコラ・チーズも人気ですね。
1月11日からは新潟市中央区にある「米希舎」をカフェ業態にして、また別の楽しさを提供できればと考えています。
ペット用お菓子の誕生秘話
──ペット用おやつ「わんぽっぽ」はどのように誕生したのですか?
家井さん:ミリオンペット(新潟市東区本社)さんとご縁があり、「ペット用のお菓子を作ってみましょう」という話になりました。
「新潟の人たちに馴染みのあるポッポ焼きの形にしよう」という発想から商品化まで約4ヵ月かかりましたね。現在も第2弾、3弾とさらに良いものを提供できるように研究を続けています。
──想像していたより早く商品化できるのですね!
家井さん:企業のお客様が何を求めているかを一緒に考えながら商品化するので、スピードも必要だと感じています。トレンドはすぐに移り変わってしまいますからね。
ただ、商品開発だけではなく、“どうすればお客様に喜んで頂けるか”を考えるところまでお付き合いできるように、当社のマーケティング・企画部も現場に連れて営業活動をする事を心掛けています。
──(イベント等での)ワンちゃんの反応はいかがでしたか?
家井さん:ミリオンペットさんのブースに私もお邪魔させていただき、ありがたいことに初日で完売と好評でした。この活動は企業様のご協力もあり、共に販売できたことも良い成果に繋がったと思います。
──今後もペット用商品を展開していくのですか?
家井さん:もちろん進めていきます!社内的には新しい挑戦だったので、これを機に様々な企業と商品開発を進めていきたいですね。社内でも「もっと柔軟な発想で動こう」と考えられるきっかけになりました。
お客様の喜ぶ顔が見たい
──お客様やスタッフとの印象に残るエピソードを教えてください!
家井さん:最近では、老人介護福祉施設で訪問販売やお菓子教室を実施しています。
施設の職員様や利用者様の笑顔を見て、「自分たちが作っている商品や活動は多くの方にとって喜ばれるものなんだ」とスタッフと共に再認識できたことが印象に残っていますね。
また、お客様から「こうしてほしい」「これやろうよ」という非常に嬉しい要望をもらったり、ご紹介から他の施設でイベントを開催する機会も増えています。
──長い歴史のある菜菓亭だからこそですね!
家井さん:皆様からの期待を一心に背負える事は嬉しいですね。当社が存続していくことで、「地域社会にもっと貢献できるのではないか」と思うんです。
風の時代を生き抜き、存続をする為には“お客様の想像を超える価値を常に提供し続けている会社”である必要があると考えています。
──価値を提供する意思を持ち続けることが大切なのですね。
家井さん:美味しいのは当たり前の世界なので、そういった意味では大手企業と肩を並べて活動するのは難しいです。昨今のコンビニエンストアやスーパーのお菓子も菓子職人が絶賛するほど美味しいですし、お菓子をあまり食べない若い世代も多いと感じています。
だからこそ、「菜菓亭だからいいよね」というような、喜んでもらう理由を常に考え、実行し改善を図っていく必要があると思います。
──「菜菓亭だから」と選んでもらえるようにですね。
家井さん:そのためにも、「相手にとってプラスになる事を常に考える」ことを社内で徹底したいです。相手というのは目の前の人。それは仕事だけでなく、生活においても必要な事だと思います。
私たちができる事は「柔軟で能動的なスタイルをもっと突き詰めて皆様に喜んでいただくこと」だと感じますね。
──営業の際に大切にしていることは何ですか?
家井さん:よく企業様には「菜菓亭を飛び道具として使ってください!」とお伝えしています。目に見えない価値として、当社の場合は企業の「集客力」に貢献できる事だと考えています。それは良い意味で当社のブランドを使っていただきたいですね。
また、製造メーカーでもあるので、お客様に楽しんでもらえるような商品づくりやイベントなどを考えるのが本業です。瞬間最大風速を吹かせるだけでなく、継続的な価値提供をしていきたいです。
──最後に、今後の目標を教えてください!
家井さん:私が50歳になる2050年までには、
①売上50億円、利益1億5000万円を作る。
②三方よし(お客様、地域社会、私たちスタッフ)の精神を”強く”持ち実行していく会社になる。
の2軸を考えています。
──具体的な目標ですね!
家井さん:達成する為には、多くのお客様に喜んでいただく必要があります。その為に、企業との協業をベースに県外・海外などの他地域への展開を推し進めていきたいです。
皆様に貢献できるように活動していきますので、お気軽にお声がけいただけますと幸いです。一緒にお客様を笑顔にしていきましょう!
そして、私たちの経営理念である「この小さなお菓子が何かのお役に立ちますように」は“日々の小さな幸せづくりをしていくこと”だと思います。その気持ちをこれからも大切に日々精進していきます。
【菜菓亭 嘉山店】
住所:新潟市北区嘉山字嘉山405-2
営業時間:平日・土日祝日9:00~18:30
公式ホームページ:https://saikatei.net/
私も「河川蒸気」が大好きなのよね♪ワンちゃんを飼っている友達に「わんぽっぽ」を教えてあげましょう♪