【プロフィール】
星野 有佳里(ほしのゆかり):新潟市出身。美術をより深く学ぶために女子美術大学へ進学。大学で学ぶ傍ら、アルバイトをしていた飲食店で日本酒の魅力を知る。「ものづくりと日本酒に関わることがしたい」と思い、新潟にUターン。酒蔵に勤めながらクラフト作家として竹の酒器を製作している。
『新潟人237人目は、竹クラフト作家の星野有佳里さん。美大では油絵を専攻していた星野さんが立体作品に興味を持ったきっかけとは…。星野さんの経歴や今後の展望についてお話をお伺いしました。素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!』
自然と美術を志すように
——美術に興味を持ったのはいつですか?
星野さん:家にピカソやゴッホの画集があり、小さい頃から見ていました。いつからか、油絵や西洋美術への関心が高まっていましたね。
——ずっと絵を描いていたのですか?
星野さん:小学生の頃から(学校経由で)コンクールなどに出展していましたが、中学生になってからは個人でも応募するようになりました。当時、最年少で入賞したことで創作意欲が増し、美大へ進学するための予備校に通い始めました。
——美大に進学して、作品づくりに対する思いに変化はありましたか?
星野さん:大学に入る前は「作品づくりがとにかく楽しい」という感覚でした。しかし、入学後は周りの友達や同級生以外からも刺激を受けるようになりましたね。たくさんの美術館がある中、様々なテイストの作品に触れることで、「より自分らしい作品づくりをしたい」という思いが強くなりました。
油絵から立体造形へ
——大学では何を専攻されたのですか?
星野さん:油絵科です。作品をつくりながら、定期的に発表の場が設けられていて、私も1年生からギャラリーに作品を出品していました。4年生には個展を開くまでになっていましたね。
——個展では、どんな作品を展示されていたのですか?
星野さん:それが4年生のころには立体作品に興味を持ち、その作品を中心に個展を開催しました。
というのも立体作品をつくる授業で初めて創作した際に、「楽しい」と感じたんです。それから絵よりも立体作品に興味が移行していった感じでした。
——“立体作品”とは、どのような作品ですか?
星野さん:簡単にいうと、“樹脂製の鉱物のようなものを型に流して固めてつくるオブジェ”です。自分の好きなものや色彩感覚でつくり上げる感覚は、油絵でも立体作品でも変わりません。
日本酒の魅力を伝えたい
——大学卒業後はどうされたのですか?
星野さん:舞台美術に携わる会社で働きながら、作品づくりをして百貨店などで委託販売するなど創作活動を続けていました。
しかし、体調を崩してしまい、療養も兼ねて新潟に戻ることにしたんです。療養中に、「新潟はものづくりができる環境があること」、「私の好きな日本酒があふれていること」に気が付き、どちらにも携われる策はないかと思案するようになりました。
——日本酒がお好きなのですね!
星野さん:大学時代にアルバイトをしていた飲食店がきっかけでした。日本酒には「昔のお酒」というイメージあったのですが、実際に飲んでみたら「同じお米や蔵元でも味や香りがこんなに違うのか」と驚きがあったんです。
気が付いたら、全国の日本酒を飲み比べるようになっていました(笑)。
——現在は新潟市内の蔵元に勤務されているのですよね!
星野さん:創作活動と並行しながら務めています。直売所を担当しながら、蔵見学のお客様をご案内するのが主な業務です。
——蔵元での仕事で大変なことはありますか?
星野さん:私が在籍している蔵元は観光要素も強いので、日本酒以外のことを聞かれることが多いですね。
「どこのお店がおいしい?」、「行ったほうがいい場所は?」ということを聞かれるので、新潟という街をイチから学び直しました。知らないところには自分で行ってみて、体験するようにしています。
——プライベートの時間を割いてまで行う原動力は何ですか?
星野さん:私は「好きなものを人に伝える行為が好き」なんですよね。舞台美術・セットや日本酒、新潟に関しても同じです。
蔵見学をされたお客様から後日お手紙をいただいて、「私の想いが伝わったんだ」と非常に嬉しかったことを今でも鮮明に覚えています。
日本酒に興味を持ってもらうきっかけづくり
——作家活動では、「竹製のぐい呑み」をつくっているのですね!
星野さん:「私の好きな日本酒と創作をつなげたい」と考えていたことが、竹という素材でつながった感じですね。
昔から竹が食器として使用されていたので、現代風に落とし込むことで今の生活に馴染めるものになる可能性が高いと感じました。また、親戚が竹林を所有していたことも理由です。
——「竹製のぐい呑」のこだわりを教えてください!
星野さん:“口の当たる部分の厚み”ですね。薄いほど日本酒の味わいをクリアに感じられ、ふくよかに感じさせるには厚みがあったほうがいいんです。
新潟の日本酒は味わいのバリエーションが豊かですが、スッキリ系が多いと思うので飲み口の薄いものをつくるようにしています。
——竹の魅力は何ですか?
星野さん:軽くて割れないことのほか、抗菌性があり乾きやすい点ですね。屋内での日常使いはもちろん、アウトドアのシーンで使うのもおすすめです。
——竹を扱う上で、難しいと感じることはありますか?
星野さん:水分をきっちりと抜き、乾燥させる下処理です。半年ほどかかるのですが、ここを怠ると“頑丈な道具”として使えなくなってしまいます。
その上で、私好みのフォルムになるように、ちょうどいい歪みをもたせるのが難しいですね。
——最後に、今後の目標を教えてください!
星野さん:納得のいく作品がつくれるようになってきたので、SNSで発信しながら少しずつ知ってもらう機会を作りたいと思います。
同時に県内のイベントなどに参加して、作品を手にとっていただくリアルの機会もつくりたいですね。作品を通じて、“日本酒に興味を持ってくれる人”が増えたら嬉しいです。
●竹クラフト作家【星野有佳里】
公式Instagram
「竹製のぐい呑」で日本酒を楽しみたいわね♪