
【プロフィール】
板場 優児(いたば ゆうじ):十日町生まれ。父親が営む「手打ちラーメン万太郎」で働いた後、和食居酒屋に勤め、2013年に店長に就任。2023年に退社し、複数のラーメン店での修行を経て、2024年5月に「Noodle いたば」をオープン。
『新潟人267人目は、「Noodle いたば」の店主・板場優児さんです。料理人の家系に生まれ、「流れで料理の世界へ」と語る板場さん。どのような経歴を歩み、なぜラーメン店を営むことになったのか、様々なお話を伺いました。笑顔でご対応いただき、ありがとうございました!』
料理人一家に生まれて
——料理の世界で働きたいと思ったきっかけを教えてください!
板場さん:働きたいというよりも、「自然な流れ」だったと思います。祖父、父親、叔父が料理人で、兄も長岡市でラーメン店を営んでいます。そんな環境だったので、飲食で働くのが当たり前のように感じていましたね。
——高校卒業後に働かれたのですか?
板場さん:父親が営むラーメン店で5年間修業しました。その後、料理の幅を広げたいと和食店での仕事を探しましたが、希望通りの職場にはなかなか出会えませんでした。
そんな時に六日町の和食居酒屋とご縁をいただき、働くことになりました。
——ご希望の和食店で修業をされたのですね!
板場さん:板前見習いとして入社しましたが、最初の1年はホール業務ばかり。ようやく調理場に入れた矢先に、新潟市内への出店話があり、「環境を変えよう」と異動を志願しました。
ただ、そこは腕の良い職人が揃ったお店だったので、やはりホール業務が中心に…。そんななか店長が退職することになり、何を思ったのか自ら店長に名乗り出てしまったんです。結果的にお店を任されることになりました。

厨房への道は、まさかの遠回り
——今のラーメン作りとつながる部分は少なかったのでは?
板場さん:そうなんです。当時は「30歳までに独立しよう」と漠然と考えていましたが、料理の技術はまだまだ不足していました。そこで、野菜や魚などの素材、調理法、原価計算などを自分で少しずつ勉強し始めました。
退社前の1年間は調理場に立たせてもらい、実践の経験を積むことができました。
——その経験は今につながっていますか?
板場さん:自学してきたことの裏付けになりましたね。素材をいかに生かすかを大切にするお店だったので、その考え方は今のラーメン作りにもつながっています。

行き着いたのは、一杯のラーメン
——ラーメン店を始めようと決めていたのですか?
板場さん:実は決めていませんでした。「何をやろうか」と料理人の先輩たちに相談した時、「ラーメンは一杯で評価されるからこそ難しい」と言われたんです。
——難しいと言われたラーメンを選んだのですね!
板場さん:技術や引き出しの多さでは勝負できないと感じていたので、「設計をきちんとして、一杯に集中できる料理のほうが自分に合っているのではないか」と考えました。
また、「お客様とのコミュニケーションを大事にする為に、カウンター越しに話せるようなお店がいい」と思い、総合的に“ラーメン”という答えにたどり着きました。
——その後はどうされたのですか?
板場さん:ラーメン店など4店舗を掛け持ちで修業しながら、店舗の場所を探していました。
そして、この場所に出会い、2024年5月25日にお店をオープン。実はゴールデンウィーク直前まで別のラーメン店で働いていて…。奇跡的に3週間弱でメニューを作り上げることができ、オープンにギリギリこぎつけました。

六つの味で描く、いたば流ラーメン
——試作も含め、3週間ですか!?
板場さん:試作は以前からしていました。まずは醤油ラーメンを作りたいと考え、父親にイメージを伝えて麺を試作してもらったんです。
それがとてもおいしくて、「この麺に負けないスープを作ろう」と始めましたね。
——スープ作りは大変そうですね…。
板場さん:まずは醤油を30種類ほど取り寄せて、それぞれの特徴を把握します。「香り用」や「奥行き用」など自分なりに分類し、それぞれを組み合わせて完成形に近づけていきました。
これを醤油だけではなく、節(ぶし)などでも行い、全体のバランスを見ながら補完していくんです。最初のの試作は散々でしたね…。
——試作結果を書き記したのがこのノートですか?
板場さん:そうです。配合や試作した感想を書いていました。あっという間でしたが、すごく楽しい時間でしたね。

——オープンに不安はありましたか?
板場さん:不安でいっぱいでしたね。「絶対おいしい」と思って作り上げた一杯ですが、新潟の人はラーメンに対して舌の肥えている人が多いです。
「自分の味が受け入れられなければ、今までの人生が否定されてしまうのではないか」とそんな不安ばかりでした。
——お客様の反応はいかがですか?
板場さん:何度も足を運んでくださる常連さんが増え、お客さまとお話ができるようになりました。
秋葉区だけでなく、新潟市内全域から当店の味を楽しみに来店してくださるお客様もたくさんいて、本当に嬉しいですね。
——メニューを考えるうえでのルールはありますか?
板場さん:調味料に頼りすぎることなく、“素材の組み合わせで味を作り上げていくこと”です。
甘味、辛味、苦味、塩味、酸味、旨味の「六味」を素材で補完し、自分の目指す味わいを作り上げていく過程がとても楽しいですね。
——バランスの良い六角形を目指すイメージですか?
板場さん:いえ、違いますね。六味全体のバランスではなくて、あくまで自分が目指す完成形の味わいのバランスです。
先日、期間限定で提供した「宍道湖産しじみとレモンの冷たいRAMEN」は、苦味と酸味をなるべく抑えて、最後まで飽きずに食べられるように調整しました。「しじみの旨味を引き立てるためのレモンの酸味はどのくらいが適切か」というような視点ですね。

両手じゃ足りない、やりたいこと
——最後に今後の目標を教えてください!
板場さん:たくさんあります。70歳を過ぎても新作ラーメンを生み出し続けられるおじいさんになりたいですし、ラーメン以外の飲食業態にも挑戦したい。
この地区に新しいお店が増えていけるような土壌を作ることや、父親が作った背脂醤油ラーメンをこの場所で提供するのも目標の一つですね。
やりたいことは数え切れませんが、まずは「Noodle いたば」のラーメンをもっと多くの方に知っていただきたいです。

【Noodle いたば】
住所:新潟市秋葉区車場4-12-58 コスモヴィレッジ
営業時間:11:00~14:00/17:30~20:00(月曜は昼営業のみ)
公式Instagram
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板場さんの挑戦に期待ね♪