【プロフィール】
栗田 芳宏(くりた よしひろ):静岡県静岡市清水区出身、新潟市在住。日本舞踊の家庭に育ち、親戚でもある女優・日本舞踊家の藤間紫の内弟子となり、日舞と舞台演出を学ぶ。その後、三代目・市川猿之助に師事する。1998年に「新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ」のオープニング記念公演「シャンポーの森で眠る」の演出を手掛け、2004年から10年間、りゅーとぴあアソシエイト・ディレクターを務める。2023年12月に見附市文化ホールアルカディアにて上演予定のオリジナルミュージカル「アツタ外伝」の脚本・演出を手掛けている。2024年大河ドラマ「光る君へ」に藤原文範役で出演予定。
ガタチラスタッフ:『新潟人168人目は、俳優・演出家の栗田芳宏さんです!「新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ」のオープニング記念公演をはじめ、大人気の「能楽堂シェイクスピアシリーズ」をなど様々な舞台の演出を手掛けるほか、俳優としても活躍されています!栗田さんの“これまで”や“演出家としての想い”をお聞きしました。素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!』
日本舞踊から舞台演出の道へ
──日本舞踊家・藤間紫さんのもとで修業されていたのですね!
栗田さん:日本舞踊家の家で生まれ育ったので、子供の頃から日本舞踊をしていました。しかし、藤間流は“日本舞踊の宗家”なので、それまでやってきた日本舞踊とは全く違いましたね。さらに、一門にいるのは有名な歌舞伎役者ばかりで世界が違いました。
──聞いただけでもすごい世界ですね…!
栗田さん:厳しい世界でしたが、そのおかげで舞台の仕事をするようになってからも特別な世界に行くという感覚はなかったですね。
──辞めたいと思ったことはなかったのですか?
栗田さん:なかったですね。紫先生の内弟子をしながら、市川猿之助さん(二代目猿翁)に師事していたのですが、当時は俳優志望の先輩が7人いました。でも、あまりの厳しさに次々と辞めていき、私が最後の生き残りです(笑)。忙しい方でしたから、付き人として運転手をしたり、師匠のために化粧や着付けも習いました。自分の時間なんてなかったですよ(笑)。
──新潟に来るきっかけは何だったのですか?
栗田さん:俳優・吉田鋼太郎と「劇団AUN」を立ち上げていて、当時から舞台の演出などをしていたんです。紫先生の元を離れたタイミングで、「りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)」の“開館記念公演のミュージカル「シャンポーの森で眠る」の演出依頼”がきっかけですね。
新潟から始まったチャレンジ
──「りゅーとぴあ」での仕事が、新潟に移住するきっかけになったんですね。
栗田さん:今は新潟を拠点にして、東京と行ったり来たりの生活です。新潟での暮らしは、「りゅーとぴあ」の開館当初からなので今年で26年目になります。
──栗田さんが思う新潟の魅力は何ですか?
栗田さん:第二の人生である“舞台演出家としての始まり”が新潟でした。正直に言うと、「りゅーとぴあ」と自宅の往復の毎日で、新潟のことはよく知らないんです(笑)。先日は「サザエ」と「ウニ丼」を食べに寺泊まで行きました!食べ物は本当に美味しいですよね。それ以外では、山菜採りに連れて行ってもらったくらいですかね(笑)。新潟の魅力を知ることに、もっと時間を使えばよかったと思います。
──舞台を公演する場としての新潟はいかがですか?
栗田さん:私たちの舞台で、「新潟にどんどん刺激を与えてやろう!」という気持ちです。地方都市なので、芸術文化に触れる機会が少なかったと思います。それだけに、「りゅーとぴあ」ができたことは“新潟にとってはとても大きいこと”です。「新潟の人たちに刺激を与えると同時に、東京からも観客が来るような舞台を発信しよう」という野望を抱きながら挑戦し、成功したのが「能楽堂シェイクスピアシリーズ」です。
──「能楽堂シェイクスピアシリーズ」はかなり話題になりましたよね!
栗田さん:能楽堂で演じる「シェイクスピア」は、新潟でしか見られませんでしたからね。能楽堂シリーズが生まれたきっかけは、“劇場の空きがなくて、能楽堂を使うしかなかった”からなんです(笑)。そこから大人気シリーズが生まれたわけですから、面白いですよね。「能楽堂だからこそできる」ということもあって、それが大きな魅力になりました。県外でも能楽堂を使った公演が行われるようになったり、演劇界に刺激を与えられたと思います。
──現在はドラマや映画でもご活躍されていますよね!
栗田さん:60歳を過ぎて、俳優にスカウトされたんですよ。凄いでしょ(笑)。今の所属事務所の社長にずっと口説かれて、そのきっかけも新潟だったんです。人生面白いですよねぇ。りゅーとぴあ能楽堂シリーズの「マクベス」に出演してた市川右近(現・三代目右團次)が同じ事務所で、彼の新潟でのロケにサプライズで出演した時に、社長に目をつけられました(笑)。
──タイミングって大事ですね…!
栗田さん:新潟で得たご縁のおかげで映像の仕事にも繋がりましたし、これからもそういったご縁は大切にしていきたいですね。気が付いたら、新潟はこれまでの人生の中で一番長く関わっている街になります。新潟は私の地元・清水と似てるんですよ。港町でサッカーの人気もあり、「アルビレックス新潟」と「清水エスパルス」はチームカラーがオレンジですからね!(笑)サッカーが好きなので、ビッグスワンへ試合を観に行ったこともありますよ!
見附発のオリジナルミュージカル
──脚本や演出で大切にしていることは何ですか?
栗田さん:これは師事した先生方から教わったのですが、まずは“お客を飽きさせない”ということです。猿之助先生が「スーパー歌舞伎」で実践されたように、“とにかくお客を楽しませる”ということですね。
──12月に上演予定のオリジナルミュージカルもその点は意識されましたか?
栗田さん:今回の「見附文化ホールアルカディア」でのミュージカル「アツタ外伝」でも、一つひとつのエピソードのディテールにこだわって、“いかに楽しませるか”を追求しました。その結果、あえて使わなかったエピソードもあります。カットするかどうか、台本は最後まで悩みましたね。自分に対する挑戦でもありましたし、その分良い作品になったと思っています。
──ミュージカルを初めて観る方も楽しめそうですね!
栗田さん:ミュージカルにも、“ダンス中心”や“歌中心”など様々な種類がありますが、今回は歌が中心になっています。歌詞も私が書きました。主役の俳優の歌がとても上手なので、私自身も凄く楽しみにしています。今回は迫力のある生オーケストラなので、ぜひ多くの方に観ていただきたいです。もちろん見附の方には、特に観て欲しいですね。今では東京でも生のオーケストラを揃えるのは難しくなっているので、とても贅沢な舞台だと思います!
──楽しみですね♪最後に今後の目標を教えてください!
栗田さん:演出の仕事はもちろんですが、私の舞台人生は吉田鋼太郎との出会いから始まりました。「シェイクスピア」で独立したので、「“シェークスピア俳優”として舞台に立ちたい」という思いがあります。その共演が鋼太郎だったら嬉しいですね(笑)。
──お二人の共演はぜひ見てみたいですね!
栗田さん:いつかできたら良いですね~。12月の舞台が終わった後のことはまだ決めていませんが、これまでもいくつもの出会いやタイミングに恵まれてきたので不安はありません。新潟にも縁がある世阿弥の「風姿花伝」に、“花になれ、花は一つのところに留まらない”という教えがあります。芸術家として、私もそうありたいですし、これからも“向上心を持って、色々なことに挑戦していきたい”です!勇気を持って出れば、そこに何かがあるはずですから。
【見附市文化ホール開館30周年記念事業 オリジナルミュージカル「アツタ外伝」】
<開催日時>
・2023年12月23日(土)開場17:30 / 開演18:30
・2023年12月24日(日)開場14:00 / 開演15:00<会 場>
見附市文化ホールアルカディア 大ホール
<料 金>
・全席自由 一般2,000円(当日2,200円)
・全席自由 5歳~中学生以下800円(当日1,000円)
<一般チケット発売日>
2023年10月6日(金)10:00~
※4歳以下入場不可
※車椅子席をご希望の方はアルカディアまでお問い合わせください
※前売券完売の際は、当日券の販売はございません各種割引サービス対象外です
<プレイガイド>
見附:見附市文化ホール、上野屋書店、道の駅パティオにいがた
長岡:わたじん楽器長岡店
三条:三条市体育文化会館
新潟:新潟市秋葉区文化会館
<助成>
令和5年度コミュニティ助成 地域の芸術環境づくり助成事業
“いかに楽しませるか”を追求した舞台が楽しみね♪「アツタ外伝」も観に行きましょう!