プロフィール
梅沢 久美子(うめざわ くみこ):三条市出身。調理師専門学校へ進学し、調理を学ぶ。卒業後は様々な職を経て、家業の料亭「遊亀楼 魚兵」に入社し、現在はフードディレクターとして新潟の食の素晴らしさを伝えている。
普通のお母さんになりたい
──梅沢さんの生い立ちを教えてください!
梅沢さん:三条市出身です。高校卒業後は長岡市にある調理師専門学校に進学しましたが、自宅から通っていました。
──調理系への進学を考えていたのですか?
梅沢さん:進路を決める時にやりたいことが決まらずに悩んでいました。母に相談すると「調理師専門学校へ行ってみたら」と提案され、軽い気持ちで進学しました。弟がいるので、両親から後を継いでほしいと言われることもなく、「好きなことをやりなさい」と言ってもらっていたのですが、当時は特になかったですね(笑)。
──料理は好きだったのですか?
梅沢さん:料理は好きでしたが、家業は継ぎたくなかったです。幼い頃から土日も働く両親の姿を見てきたので、自分は子供のそばにいる母親になりたかったんですよね。小学生の時に、学校を休んだ友達のお見舞いに行くと、リビングでお母さんとこたつに入っている姿に当時は驚きました。私の家では、風邪を引いて休んでも両親は仕事中なので、同じ建物にいても一緒に過ごすことは考えられませんでした。その時に「私は普通のお母さんになろう」と思いました。
──専門学校を卒業後は何をされていたのですか?
梅沢さん:結婚前は塾講師をしていました。出産をきっかけに休職し、別のことをしようと給食センターに転職しました。家族へ報告すると「調理の仕事なら、うちの店に入ればいいじゃない」と言われて、その時に初めて家業が選択肢に入ったんです。しかし、週末は子供と一緒にいたかったので、時間の融通が利く仕事から手伝い始めました。
“フードディレクター”という仕事
──それからフードディレクターを始められたのですか?
梅沢さん:最初は皿洗いやお座敷の清掃などがメインでした。1ヵ月続けたのですが、面白くなくて(笑)、これでは続けられないと思っていました。“私にできることは何だろう”と考えていた時に展示会でのケータリングの依頼があり、社長と一緒に打ち合わせに行きました。その時にこの仕事が面白いと初めて思ったんです。それから食材と他のものを結びつける“フードディレクター”という仕事を始めました。
──フードディレクターの仕事で大切にしていることは何ですか?
梅沢さん:他社様のホームページ写真をディレクションすることがあるのですが、ただ綺麗な写真を作るだけなら、私がいる意味はありません。基本的にはクライアントのイメージに沿った写真を作り上げますが、そこに消費者が購入後のイメージを想像できるような仕掛けを加え、購買に繋がることを大切にしています。おせち料理の撮影で、普段はお重の写真のみを掲載していた企業様にお箸を添えた写真を提案し、売上を伸ばすことができました。「箸があることで何人前かが分かり、購入しやすかった」というお客様の声をいただき、嬉しかったですね。
地域密着の料亭ならではの新しい挑戦
──魚兵のこだわりを教えてください。
梅沢さん:魚兵の経営理念は「郷土愛の醸成」です。“地域のことをみんなが好きになれば、地域がもっと良くなる”という考えを大切にしています。料理を提供するだけでなく、三条の地場野菜やお箸、キッチンツールなどを使って、地元の良さと一緒に料理を提供しています。
──店頭でのお弁当販売はいつから始められたのですか?
梅沢さん:2020年4月からです。お弁当をきっかけにお座敷に来てくれるお客様もいて、とてもありがたいですね。新型コロナウイルス感染症が流行し始めた頃は歓送迎会シーズンでしたが、あっという間に予約がなくなりました。状況を改善するために、通販サイトとお弁当販売に取り組むことになりました。それまではお弁当も予約販売のみだったので、毎日50個のお弁当を店頭販売するのは挑戦でした。挑戦を決めて1週間後にはお店の前にテントを出して売り始め、2週間後には通販サイトを立ち上げました。不安もありましたが、社長が先頭に立ち、「やるしかない」という気持ち一つで行動に移しました。
──お客様との印象に残るエピソードを教えてください!
梅沢さん:お弁当販売をしていると、ご年配の方からママ世代まで様々な方が来てくれます。雨や雪の日には、心配して様子を見に来てくれる方もいます。地域の皆さんと話をしていると元気をもらいますね。「おばあちゃん元気?」と祖母のことを気にかけてくださる方もいて、本当にありがたく、地域に守られているなと感じます。
──休日はどのように過ごしていますか?
梅沢さん:趣味は食べ歩きです!行きたいお店を事前に調べて、料理をInstagramにアップしています。それが仕事のモチベーションにもなりますし、お店を紹介することで少しでも助けになりたいと思っています。同じ業界で頑張っている仲間なので、助け合いながら盛り上げていきたいですね。
──最後に、今後挑戦したいことを教えてください!
梅沢さん:今年度中にお店の1階を改装し、新しい料亭の形に挑戦します。かつて、料亭は人々の交流の場であり、流行の発信場所だったように思います。それを現代に落とし込み、日本文化やマナー、作法を学べる場所を作りたいと思っています。料理人によるオープンキッチンでの料理教室や、地域の食文化を継承するための展示スペースを設置する予定です。地域の食文化を伝え、お茶やお花の教室を実施し、日本人の嗜み的な部分を発信していきたいです。
\ 商品は通販サイト「ガタ市」から購入できます /
【遊亀楼魚兵】
住所:三条市一ノ門1丁目2-17
電話:0256-33-0261
新しい料亭の形が楽しみだわ!!