プロフィール
宇留間 義矢(うるま よしや):新潟市出身。大学卒業後、食品会社での営業職を経て、2009年に新潟へUターンし、家業のハレリーに従事する。珍味やお菓子などを行商で販売しつつ、酒販店や産直所へ納品、イベントにも出店している。2021年には事業を承継し、webサイトをオープンした。
サラリーマンから、おつまみの行商へ
──宇留間さんの生い立ちと経歴を教えてください。
宇留間さん:新潟市出身ですが、大学進学とともに新潟を離れ、そのまま健康食品メーカーに入社し、全国を転々としました。一人っ子なので、「いい加減戻ってこい」という両親とすったもんだの末、9年間勤めた会社を辞め、新潟に戻りました。東京、大阪、仙台で暮らしたことで、田舎ならではの不便さも感じましたが、新潟はとにかく飯、お酒がうまい、食べ物のバリエーションの多さと美味しさは他県と比べても引けを取らないなと気づきました。
──ハレリーで実際に働き始めていかがでしたか?
宇留間さん:ハレリーはおつまみやお菓子などの乾物類を全国の生産者さんや問屋さんから仕入れ、リパックしたものを販売しています。小学校や保育園、官庁、企業の休憩時間に売り歩くという行商スタイルを両親を中心に1977年から40年以上続けています。新潟に戻ってきた2010年頃には行商の業者さんはほとんど無く、この業態も衰退していくのだなと漠然と感じたことに加え、新潟のこだわった美味しい食べ物の中でハレリーの取り扱う商品が勝負していけるのかという不安と他社への嫉妬だらけの毎日でした (笑)。
“イカの被り物”の始まり
──イカの被り物を始めたきっかけを教えてください!
宇留間さん:名刺をひらひら頭になびかせたすごいマーケティングの先生から「宇留間さんもそろそろイカを被るしかないよね?」と言われたことがきっかけです。当時、行商だけでは広がりがないのでイベントにも出始めていたのですが、イベントは目立ってナンボなんですよね。それで「じゃ、被りますか…」と被り始めました(笑)。
──イカを被ってからの変化はありましたか?
宇留間さん:圧倒的に目立つので、イベント出店や催事へのお誘いが劇的に増えました(笑)。しかし、道行く人は恥ずかしがり屋さんが多いのか、7割は一瞬ギョッとしてスルーです(泣)。後々、「○○で見かけました」とか「SNSでよく見ます」と声をかけてくれる方も増えましたね。それなら、最初から声をかけて欲しいですが、私も人見知りなのでこんなイカがいたら、最初はスルーすると思います(笑)。
──人見知りは意外でした(笑)。
宇留間さん:極度の人見知りで、イベントや異業種交流会での挨拶回りや名刺交換が苦手です。イカの被り物をしてからは、被り物に興味を持って話しかけてくれることも増え、「イカの人」で覚えてもらえるので、イカに助けられています(笑)。
──お客様との印象的なエピソードを教えてください!
宇留間さん:一番人気のカレーピーナッツは食べ始めたら止まらず、チャックの意味が無いとお客様に言われます。ラベルの「食べるな危険」を見つめて、「これホントに食べても大丈夫なの?」と真顔で聞かれた時のボケを解説するなんとも言えないもどかしいやり取りは、大体1年周期でありますね(笑)。ヘビーユーザーの方は「こんなに大丈夫ですか?」と確認するくらい、大量にまとめ買いしてくれることもよくあります。家族で楽しく食べている、奪い合いをしているという感想を聞くととても嬉しいです。
“イカの被り物”だけじゃない独自性を求めて
──ハレリーを継ぐことになったのはいつ頃ですか?
宇留間さん:経営を取り仕切っていた母が亡くなった2019年9月からです。創業当時は、塩蔵わかめの販売がメインで、徐々におかずや珍味の品数を増やし、バブル時に拡大した事業規模のまま運営していました。私が戻ってきた時は、管理が難しいほどの商品数を販売しており、食品ロスも多かったので、経営を預かるようになってからは、食品の品質を維持する部分にリソースを割き、現状の規模で無理なく回せるように商品数を半分近く減らしました。ある程度、売上を維持しながらロスを減らし、時代による変化もある中でハレリーが長年続けてきた行商スタイルが通用していくのか、両親がやってきた仕事をいかに自分自身の仕事にしていけるのか、その悩みは事業を後継する人には共通することかもしれません。
──続けていくためにどうするべきかを悩まれたのですね。
宇留間さん:「ハレリーの強み、独自性とは何だろう」と考え悩みましたね。一つは製造ラインを持たないがゆえ、自由に商品ラインナップを増減し、マーケティングしながら販売できること、もう一つは大手スーパーに並ばない、珍しい商品をチョイスできることです。例えば、看板商品の「そふとあたりめ」は、調味液に浸し味付け、一夜干しのような柔らかさとするめの噛み応えをいいとこ取りをした商品で、「カレーピーナッツ」はカレースパイスとピーナッツの組み合わせが絶妙で、看板商品あたりめを上回る圧倒的な人気ですが、どちらも新潟での取り扱いはハレリーだけです。こういった全国に人知れず存在するおつまみをハレリーでは「もぐり菓子」と呼んでいます。彼らをより多くの方々に紹介したいというところにようやく辿り着けました。私はイカの被り物をしているので、「悩みがなさそうだ」と言われますが、いつも悩んでいますし、とても優柔不断ですし、ネガティブ思考です(笑)。
──最後に、今後の展望を教えてください!
宇留間さん:商品の良さを独自の切り口で紹介し、元々ポテンシャルの高いもぐり菓子たちをより多くの方に紹介していくことが、ハレリーの役目であり使命だと考えています。おかげ様で2021年4月に正式に事業承継をするとともに、デザイン・ブランディングサポートのアドハウスパブリックさんの支援を受け、11月にはウェブサイトも公開できました。今後は、サイトのコンテンツ充実に力を入れ、多くのもぐり菓子を皆さまのお手元に届けられるよう楽しみつつ活動していきます。イカを見かけたらぜひお声かけください!
\ 商品は通販サイト「ガタ市」から購入できます /
【あたりめのハレリー】
住所:新潟市中央区大島167-16
電話:025-281-0081
イカの被り物はこうして生まれたのね(笑)!「カレーピーナッツ」はうちの子も大好きよ!