プロフィール
米山敏史(よねやまとしふみ):三条市出身。地元の高校を卒業後、東京の工業大学へ進学し機械系を学ぶ。卒業後は浦安にある金属加工業社で修行を積み、26歳の時に家業の米山工業へ入社する。2018年の社長就任後は、3Dプリンターなど新たな設備の導入や自社のオリジナル商品開発などに注力し、チタン1枚板からつくられたiPhoneカバー「YONEYAMA MOBILE SUIT」を発売。2021年には金属加工の技術を駆使した電源の要らないコンパクトアイスメーカー「アイスカプセル」を開発する。
ものづくりって楽しい!
―― 米山さんの生い立ちや経歴について教えてください。
米山さん:三条市出身です。昔は子供が家業を継ぐことが当たり前のような時代だったので、家業を継ぐ意識は潜在的にありました。東京の工業大学を卒業後は、浦安の金属加工業者へ就職し、26歳の時に家業の米山工業に入社しました。当社は自動車部品の製造を行っている会社なのですが、リーマンショックの影響で仕事が半分近くにまで減少してしまい、それからiPhoneケースの製造など自社ブランドに取り組み始めました。
――不景気をきっかけに「YONEYAMA. BRAND」が誕生したのですね。
米山さん:受注が減り、考える余裕ができたんですよね(笑)。当時はiPhoneを持っている人が少なく、カバーの品質も今より低いと感じていました。通販でチタン製を売りにしているカバーを購入したのですが、届いた商品をよく見るとチタンメッキの樹脂製品でした。より高品質のものが作れるのではないかと商品開発を始めました。マーケティングやブランディングをプロから教わり、チタン1枚板で作ったiPhoneカバーは徐々に認知されていきました。梱包、発送まで一人で行っていたので、無事にお客さんの元に商品が届き、感想をもらったときはとても嬉しかったです。
――お客さんからの声が聞けると嬉しいですよね。
米山さん:本業である自動車部品の製造では、造っている部品の車種は分かっても喜んでいるお客さんの姿を想像するのは難しくて。だからこそ、「想像以上に良いものが届きました!」とお客さんからメッセージをもらった時は感動しました。こんな風にやりがいを感じながら、会社を経営していきたいと考えるようにもなりましたね。
――他にも3Dプリンタ事業など、様々なことに挑戦されていますよね。
米山さん:3Dプリンタ事業のきっかけはドイツでの海外研修でした。東日本大震災の影響で再び受注が減少し、「このままではダメだ」と思っていた時にドイツで3Dプリンタが大流行していることを知りました。テクノロジーの進化を目の当たりにした私は、「この波は必ず日本にもやってくる!」と感じ、3Dプリンタ事業を始めました。現在も各地方の個人から企業まで幅広くご注文いただいております。
米山工業(株)=満足度100%!
――景気の荒波を乗り越えてきた米山さんですが、新型コロナウイルス感染症が流行してから変化はありましたか?
米山さん:コロナ禍でも3Dプリンタ事業は順調で、マスクやフェイスシールドなどの受注を多くいただきました。3Dプリンタ用のフリー素材があれば様々なものが簡単に作れるんですよ。しかし、マスクは一時的なもので、それよりもお客さんに長く愛される製品を作れないかとスタッフと一緒に考えていました。
――それで誕生した商品が「アイスカプセル」ですね!
米山さん:そうです。昔から登山やキャンプが大好きで、いつも下山後にコンビニアイスを食べていたのですが、「山頂でアイスを食べられたらいいな」と言うと、スタッフの一人が「前に溶けたアイスを塩と氷で固めてませんでした?」とアドバイスをくれたんです。最近はアウトドア人気も高まっていたので「製品化してみよう!」となりました。それからの休日は試作品を持って登山し、山頂でアイスを作る日々が続きましたね(笑)。
――米山さんの趣味から生まれた製品だったのですね(笑)。
米山さん:見た目はスマート、電源も要らないアイスクリームメーカー「アイスカプセル」が完成しました。10分間左右にねじって回せばアイスクリームが作れるんです。実際に登山時に持っていくと、周りの登山客も何をしているのか興味を持ってくれましたね(笑)。クラウドファンディングを実施したのですが「米山さんの作るものなら100%良いものだ」と当たり前のように信頼してくださっている多くのお客さんがいたからこそ、完成できたと思います。子供でも簡単に使用できるので、アウトドアや自宅でアイスクリーム作りを楽しんでほしいです。
社会貢献として取り組む人材育成
―― スタッフとの印象に残るエピソードを教えてください。
米山さん:当社では、毎年ミャンマー人を数人ずつ雇用しています。皆さんご存知の通り、ミャンマーは今でも深刻な状況が続いています。当社に来て働いているミャンマー人スタッフは稼いだお金を集めて国へ寄付しているのですが、私を含め、日本人スタッフも寄付に協力したんです。それで、彼らが何かお礼がしたいということで東日本大震災の復興ソング「花は咲く」を歌ってくれたんです。
――素敵なエピソードですね…!
米山さん:スタッフたちも喜んでいて、とても感動的でした。実はこの時、テレビの取材が来ていて、放送を見た方たちからも多くの寄付金をいただきました。それから、地元のイベント会社から依頼をいただき、彼らとコンサートも開いたんですよ。お客さんが感動していて、私たちも胸が熱くなりました。いつか巣立っていく彼らに、これからも日本でたくさんのことを学んで欲しいと思っています。
――最後に今後挑戦したいことを教えてください。
米山さん:人材育成に取り組んでいきたいと考えています。いつかミャンマーにオフィスを構え、巣立っていく彼らのことを母国でも応援していきたいですね。ミャンマーでは、まだまだ職に就くことが難しい状況なので、今いるスタッフが若い世代に丁寧かつ誠実なものづくりを継承していってくれると嬉しいです。時間に余裕ができた時には、面白い商品の開発にも取り組んでいきます!
【米山工業株式会社】
住所:三条市鶴田1-7-90
電話:0256-38-5251
簡単にアイスが作れるんだって!楽しそう~私たちも作ってみたいね!