プロフィール
安藤 智子(あんどう ともこ):加茂市出身。短大を卒業後、数回の転職を経てイシモクの前社長と出会い、入社。2008年に代表取締役社長となる。桐の特徴を活かした、脚物家具をはじめとする様々な商品を開発・販売し、加茂市にある「ショップ&ギャラリー 桐子モダン」と東京・日本橋にあるショールーム「KIRIKO」の2店舗を経営している。
イシモクとの出会い
──ご出身はどこですか?
安藤さん:加茂市です。ずっと加茂で暮らしています。若い頃は、自分の故郷の良さが全く分かりませんでした。社会人となり、県外や海外に行くことも増え、ようやく加茂の素晴らしさが分かるようになりましたね。
──安藤さんの経歴を教えてください。
安藤さん:短大を卒業後、会計事務所に就職しました。簿記の資格を持っていたので入社したのですが、当時から「人の上に立つ人材になりたい」という想いを漠然と持っていました。自分の考えを社会に取り入れる生き方をしたいと思っていましたね。
──会計事務所にはどれくらい勤めたのですか?
安藤さん:会計事務所には約5年勤めました。子どもを出産し、専業主婦の選択肢もありましたが、やっぱり仕事がしたいと思ったんです。知人の紹介で加茂市にある企業の経理を担当した後、生命保険会社の営業も経験しました。
──「株式会社イシモク」と出会ったきっかけは何だったのでしょうか?
安藤さん:生命保険会社に勤めている時に当時の社長とご縁があり、出会いました。当時は、小さなプレハブ工場のたんす屋だったんです。「とりあえず一回、工場を見に来い」と言われたので見学に行きました。その時、初めてものづくりの凄さを感じましたね。
──それが運命の出会いだったのですね。
安藤さん:見学時に「桐で他のものを作れるんですか?」と質問したら「例えば何?」と聞き返され、「インテリア家具などもニーズがあると思う」と答えました(笑)。「あなたが後押ししてくれるなら作っても良いよ」と言われことが転機でしたね。「いつ来てくれるの?」と催促されていたのですが、すぐに会社は辞められないので先延ばしになっていました。
──それから現在に至るのですね。
安藤さん:社長になったのも好きでなったわけではないんです。前社長が無責任に「やめた!」と言い出して(笑)。仕方ないので私がやるしかなかったんですよね。経理や経営の部分は専務として担っていたので、交代しても続けることはできました。
桐たんす業界からの転向
──現在のショップとギャラリーの形にしたのはいつからですか?
安藤さん:桐たんすが売れなくなる中で、2003年頃に工場兼ショップの形に変えました。以前よりもお客様が来てくれるようになり、お客様から「こんな商品を作れませんか?」という声が増えました。当時の工場だけでは手狭になっていたので、2006年頃に工場を他の場所に移転し、跡地をギャラリーにしました。
──「桐子モダン」はかなり広いですよね。桐の床のぬくもりを感じます。
安藤さん:工場では一番大事な床がコンクリートでした。この環境では職人に仕事をさせられないと思い、桐材を床に使用したところ、職人さんから「体が楽になった」と言われたんです。素材によって環境が変わり、良い影響を与えたと分かりました。桐たんす以外の商品開発を考えていたので、桐床をすぐに始めました。
──職人さんを想う心から新しい商品が生まれたのですね。
安藤さん:そうです。桐床で家を建ててくれたお客様から、「桐床にしたことで空間が柔らかくなり、他の家具が合わない。だから桐の家具を作って欲しい」という依頼がさらに増えました。桐の材料は弱いので、体重を乗せる脚物家具には使われていませんでした。依頼があったからには作りたかったのですが、「脚物家具には無理だよな」と思っていました。試行錯誤を重ね、華奢なデザインでも耐久性に優れた構造を考えました。
“桐の良さ”が伝わる商品を
──まな板などの日用品も多く作られていますよね。
安藤さん:開発を意識して生まれたわけではなく、たまたま生まれたものばかりです(笑)。桐文化を繋げていくには、より身近なもので使ってもらわないといけないですよね。だから、大勢の人が使う生活の道具も作っています。
──商品の特徴を教えてください。
安藤さん:桐は軽さと手障りの良さ、ぬくもりが特徴です。イシモクの商品は、桐の特徴を活かしつつ、デザイン性も大切にしています。少しお洒落さがあった方が良いですよね。当社は何よりも軽さを追求し、 “なぜ桐なのか”を追求した商品を提供しています。当社以上の桐の脚物家具は無いと自負しています。
──東京にショールーム「KIRIKO」を出店されたきっかけを教えて下さい。
安藤さん:東京の日本橋にある新潟のアンテナショップ「ブリッジにいがた」で定期的にイベントをしていました。管理者の方から「イシモクさんが出た後に出店するたんす屋さんの売上が良いんですよ」と言われて(笑)。当社が一生懸命アピールしても、お客さんからしたら同じ桐たんすのお店なんですよね。もったいないと言われていたので、常設を決意しました。
──東京の日本橋に出店した経緯を教えてください。
安藤さん:あるお客様が「うちの空き物件でやればいいじゃない」と貸してくださったんです。路面店は、大体2~3年で撤退してしまうのですが、ありがたいことに10年以上続けられています。イシモクの商品だけでなく、新潟の良さも発信しています。
──お客様との印象に残るエピソードを教えてください。
安藤さん:お客様は、満足してリピートされる方が多いです。兵庫県の方が雑誌に載った桐のまな板を見て、購入してくださったことがありました。送る際に商品パンフレットを入れたら、新築にする際の床や家具などを全部、桐で作ってくれました。それだけ気に入ってくださり、本当に嬉しかったです。
“桐文化”を絶やさない
──今後の目標を教えてください!
安藤さん:桐の文化を絶やさないということです。桐は内閣総理大臣の紋章のモチーフでもあります。昔は身近だった桐たんすがなくなっていき、徐々に忘れられていきますが、桐の紋だけは残っていきます。だからこそ、その時代にあった桐の使い方をして、桐の文化を残していきたいですね。しかし、残念なことに桐の国内生産という基本的な部分が崩壊しつつあります。中国からの輸入が多いのですが、輸入に頼っていては技術や商品開発をしても、作ることができなくなります。もう一度、桐を育て、国内で供給ができる体制にしていきたいです。
【桐子モダン[ショップ&ギャラリー]】
住所:加茂市加茂新田10007-3
電話:0256-53-4111
営業時間:10:00-18:00
定休日:水曜日
「桐子モダン」は素敵なお店なのよね~私もお家を桐で統一しようかしら!