
【プロフィール】
角丸 柴朗(かどまる しろう):岩手県出身。会社員として働きながら漫画をSNSに投稿し、オファーを受けて漫画家デビュー。歴史・神社仏閣・妖怪などを通して新潟の魅力に惹かれ、明治初期の新潟を舞台にした漫画「りゅうとあまがみ」を2025年7月に発表。
『新潟人284人目は、岩手県出身の漫画家・角丸柴朗さん。新潟を描いた漫画「りゅうとあまがみ」への想いや作品づくりの裏話、今後挑戦したいことなどを伺いました』
新潟が持つ魅力に心惹かれて
──新潟を好きになったきっかけを教えてください!
角丸さん:もともと日本の歴史や神仏、妖怪が好きで、彌彦神社の歴史や伝承を調べるうちに夢中になりました。
南魚沼の豪商が雪国の暮らしを記した「北越雪譜」にも魅了され、知るほどに新潟の魅力にのめり込んでいきました。今ではほとんど新潟のことばかり調べています(笑)
──漫画家を目指したきっかけは?
角丸さん:実は、最初から漫画家を目指していたわけではありません。会社員として働きながら、趣味で漫画をSNSに投稿していただけでした。
そんな時にご依頼をいただき、漫画の仕事を続けるようになりましたね。
──漫画家としての活動歴を教えてください。
角丸さん:最初の連載が始まったのは2020年です。その前は短編を単発で描いていました。
連載当初は「柴朗」というペンネームを使っていたのですが、自作を描くタイミングで「角丸紫朗」に改めました。

「りゅうとあまがみ」の誕生秘話
──「りゅうとあまがみ」はどのように生まれた作品ですか?
角丸さん:「新潟が好き」と話していたことから、担当さんが「新潟をテーマにした作品はどうですか?」と提案してくださったのが始まりでした。
新潟は大好きですが、新潟の作品を描けるとは思っていませんでしたね(笑)。「描けるならぜひ!」という気持ちでした。
──作品の方向性はどのように決まったのですか?
角丸さん:新潟を描くなら「本当に美味しい料理を描きたい」と思い、歴史に残る料理をたくさん調べました。
「湊町にいがた」が開港地だったことから、「外国人居留者との交流を描いたら面白いのでは?」と考えて、今の形につながりました。
──歴史の作品ならではの苦労もありますよね…。
角丸さん:リサーチはかなり大変ですね。分からないこともまだ多く、勉強しながら作品を描いています。
──新潟をテーマにする上で難しかった点は?
角丸さん:“ザ・新潟”を描こうをすると「ご飯」が中心になりがちですが、現代のグルメ漫画なら地元の方が描いた方が面白いと思うんです。
「自分が描ける新潟とは何か」を考えた結果、大好きな歴史ものに行き着きました。
──情報収集はどのように行っていますか?
角丸さん:本やインターネットが中心です。新潟の歴史を扱うサイトが多く、情報がとても豊富に揃っています。
また、新潟駅にある「ぽんしゅ館クラフトマンシップ」には、東京では手に入りにくい地元の本が多く、新潟に訪れるたびに勉強させてもらっていますね。「新潟市歴史博物館みなとぴあ」の常設展や企画展示の図録なども参考にさせていただいています。

──新潟を訪れた際に印象的だったことは?
角丸さん:新潟駅近くの「流作場五差路」に、萬代橋の欄干モニュメントがあるんですよ。ただのモニュメントだと思っていたのですが、実は“初代萬代橋のたもと”だった場所なんですよね。
当時の信濃川は今より川幅が広かったことを知り、歴史を調べると“モノの見方が変わる”という感動がありました。
──作品に登場する新潟の風景・文化で特に印象的な場所はどこですか?
角丸さん:新潟市中央区にある「ホテル イタリア軒」です。新潟の洋食文化を描く上で欠かせない“象徴的な存在”だと思います。
創業者のミオラさんは外国人居留者で、明治初期から牛肉の販売をいち早く始めた人物です。今も受け継がれる「ボロネーゼスパゲティ」は、“日本で最初に提供された”とも言われています。
── “堀”も重要な要素として描かれていますね。
角丸さん:新潟の「堀」が大好きで、かつての水の豊かな時代を作品に生かしたいと思っていました。
ウィルがイヤリングを追いかけて町へ迷い混んでいくシーンで、堀を辿らせる演出などを取り入れています。
──ヒロインを「英国少女ウィル」にした理由は?
角丸さん:主役のどちらかを異人にしようと考えた時、“異人の少女”の方が物語として美しいと思いました。当時は「異人=怖い」というイメージもあったので、その認識が徐々に変わっていく姿も描きたいと思いました。
また、新潟が開港地であったことから外国人居留者が住んでいたという歴史も生かせますし、現代の読者が当時の新潟を見る時に“外国人の視点”の方が共感しやすいと考えました。
──キャラクターやストーリー設定の裏話はありますか?
角丸さん:ストーリーは大分悩みましたね…。「港や川がある“水の都”としての一面」や「“開港五港”としての居留外国人との交流」、「古町が花街として栄えていたこと」など、どの要素を入れるかを試行錯誤しました。
「新潟を知らない人にも面白いと思ってもらえるか」を考え、準備には1年以上かかりましたね。

アイデンティティを失わない新潟の魅力
──キャラクター名の由来を教えてください!
角丸さん:「ウィロー(willow)」は英語で“柳”の意味があります。「流作」は流作場から取りました。
食べ物に由来したキャラクター名もあるので、ぜひ探してみてください!
──作品のテーマは何ですか?
角丸さん:「変化を受け入れながらも、変わらないものの強さ」が大きなテーマです。新潟は川の流れによって地形が変わり、街を移転したことがあるほど“変化の多い土地”です。
明治の開港で多くの変化を受け入れながらも、文化を守り続けてきた姿に魅力を感じています。変化を嫌う流作とどのように影響し合うのか、日本の文化の素晴らしさに気付いていくウィルを通じて描きたいです。
──明治時代の料理の特徴を教えてください!
角丸さん:明治時代の洋食は、日本風にアレンジされたものが多いんです。その点も現代に通じるものがあって面白いですよね。
その魅力を作品に取り込んでいけたらと思っています。

「りゅうとあまがみ」を“気軽に、身近に”
──角丸さんが影響を受けた作家・作品はありますか?
角丸さん:小説家・京極夏彦先生の「百鬼夜行」シリーズが好きで、作品制作に大きな影響を受けていると思います。
漫画でいうと、杉浦日向子先生ですね。江戸時代を題材にした作品が多い作家さんで、なかでも「百日紅」はお気に入りです。歴史考証がしっかりなされていて、その時代に生きる登場人物のリアルさを感じ取れるところが好きで、とても憧れています。
──「りゅうとあまがみ」をどのように読んでもらいたいですか?
角丸さん:気軽に読んでいただきたいです。細部にはこだわっていますが、それを意識しすぎず、明治時代の新潟を身近に感じられる作品を楽しんでもらいたいです。
地元の方には、「新潟っていいよね」と誇りに感じてもらえる作品になれたら嬉しいですね。
──最後に、今後挑戦したいことを教えてください!
角丸さん:これからも“好きなものを描き続けたい”ですね。
民間伝承や妖怪などの題材をテーマに、新潟を舞台にした他の作品もいつか描けたらいいなと思います。
【りゅうとあまがみ】1話を試し読み読み!
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明治時代の新潟を身近に感じられて面白いわ♪