
【プロフィール】
鈴木 義之(すずき よしゆき): 静岡県富士市出身。高校卒業後、長岡技術科学大学に進学。大学教員として、タンパク質分解酵素の研究などに携わる。一時的に転職した長岡高専では、学生の教育にも注力。現在は長岡技術科学大学で研究を継続。新発田市シェアオフィス「キネス天王」の長岡技術科学大学ラボの運営にも携わり、産学官連携の研究に力を入れている。
『新潟人280人目は、「長岡技術科学大学」の上席URA・特任准教授の鈴木義之さんです。研究への情熱と産学官連携の可能性についてインタビューしました!』
高校時代から続く研究への情熱
——鈴木さんの生い立ちについて教えてください
鈴木さん:製紙の町である静岡県富士市の出身です。小学校の前に大手製紙メーカーの工場があって、いつも窓から見えていました。
進学した「静岡県立 吉原工業高等学校」は、もともと製紙会社が作った学校だったので、溶接・電気回路化学・生物のほかに、“製紙の実習”があるなど、幅広い分野を学びましたね。
——高校時代に印象に残っている経験はありますか?
鈴木さん:3年生の時の卒業研究が「製紙の未利用資源をモルタル(砂とセメントを混ぜたもの)に加えて活用する」というテーマでした。
その頃から資源の有効活用に興味があったんです。
——卒業後は長岡技術科学大学に進学されたんですよね。
鈴木さん:大学を卒業してからも大学院・研究室とずっと本学にいます。
8割が長岡高専からの編入なのですが、僕は珍しく高校から入ってきた学生でした。
——大学時代はどのような研究をされていたのですか?
鈴木さん:製紙の街に生まれ育ったこともあって、“紙の主成分であるセルロースを分解して新しいものに変える”という研究に興味を持っていたんです。
徐々に興味が移り変わり、最終的には異なるテーマ「タンパク質・ペプチド分解酵素」の研究に進み、博士号を取りました。

バイオエタノールから宇宙まで広がる研究フィールド
——研究の成果を教えてください。
鈴木さん:私が作ったサンプルを「国際宇宙ステーション」の日本実験棟に搭載して、宇宙空間で結晶化させて地上で解析する研究に取り組み、研究グループが“NASAのISSリサーチアワードで表彰”されたんです!
その研究が抗生物質薬の開発やがん研究の促進にもつながりました。
——ほかには、どのような研究に取り組まれましたか?
鈴木さん:通称「オールジャパン」と呼ばれる国のプロジェクトで、もともとやりたかった「セルラーゼ(セルロースを分解する酵素)」の研究に関わりました。
当時はバイオエタノールが注目されていて、未利用資源である“セルロース系バイオマスからエタノールを作る研究”にも取り組みました。
——教育分野にも挑戦されたとお聞きしました。
鈴木さん:研究一筋でしたが長岡高専に数年間出向し、教育にも携わりました。
研究とは違う難しさがありましたが、学生のおかげで楽しく過ごせました。

産学官連携の魅力と可能性
——産学官連携の重要性についてはどのようにお考えですか?
鈴木さん:非常に大切です。自分たちだけでは選択肢も限られますが、新しいパートナーとの出会いが研究の幅を広げてくれます。
現在は「バイオものづくりプロジェクト」という産学官連携の研究に力を入れていますよ。
——どのようなプロジェクトなのですか?
鈴木さん:微生物の力を使って、“未利用資源を別のものに変える”というプロジェクトです。
大学だけではなく、新発田市が運営するシェアオフィス「キネス天王」を拠点にさまざまな取り組みを行い、“自立した産学官共創拠点の形成”を目指しています!
——連携によって生まれる具体的なメリットは何でしょうか?
鈴木さん:一つの組織だけでは解決できない課題も、異なる視点や技術を持つ組織が協力することで突破口が見えてきます。
特に企業との連携は、“研究成果の社会実装”という点で大きな意義があります。お互いの得意分野で繋がっていくことによって、世界観が広がっていきます。

キネス天王での新たな挑戦
——新発田市のシェアオフィス「キネス天王」との関係について教えてください!
鈴木さん:旧天王小学校だった建物を、新発田市がシェアオフィスにリノベーションした施設です。
本学へお誘いをいただき、サテライトラボの入居を決めました。
——サテライトラボとはなんですか?
鈴木さん:2階の理科室や家庭科室を活用して実験施設を作り、農家の土壌の調査や微生物研究の設備を整えました。
また、「子ども実験教室」といったイベントの企画運営もしています。
——教育活動にも力を入れているのですね!
鈴木さん:研究と違う“やりがい”がありますね。失敗ができない点で、教育は研究よりもある意味責任が大きいと思っています。
学生や児童は想像以上に教員の影響を受けると感じます。その時々のベストを尽くすしかないですが、責任の大きさを肝に銘じながら活動しています。
——「キネス天王」の魅力を教えてください。
鈴木さん:IT企業やスタートアップ企業など多様な入居者がいることです。実際にビジネスをしている方々と日常的に交流できる環境がありますよ!
新しいアイデアが生まれやすく、“技術的な相談もしやすい雰囲気”です。
——まさに「産学官連携の場所」なのですね!
鈴木さん:企業間のマッチングや技術サポートなど、新発田市の手厚いバックアップがあります。
企業との新しいパートナーシップも生まれやすいので、「産学官連携の理想的な場」になっていると思いますよ!
▼『キネス天王』の記事はこちらをチェック!
旧天王小学校がシェアオフィスに変わって3周年!新発田市運営の施設『キネス天王』がIT企業やスタートアップ企業をサポートする理由とは!?

常に挑戦し続ける研究者の姿勢
——これからの挑戦について教えてください。
鈴木さん:今の立場は特任准教授ですが、「上席URA」も兼任しています。URAというのは、研究者の研究活動活性化や研究開発マネージメントの強化を支える人材のことです。
自分の研究だけでなく他の人の研究のサポートをしているので、“毎年違うこと”をしなければなりません。挑戦するのが当たり前という環境で、取り組みを続けていきたいですね!
——研究を進める上で大切なことを教えてください。
鈴木さん:研究に限らずですが、自分だけだと袋小路に入ってしまうので、“いろいろな人の意見を聞く”というのが大切です!
「キネス天王」は、そういった意味でも非常に価値があると考えています。
——最後に若い世代へのメッセージをお願いします。
鈴木さん:「案ずるより産むが易し」です。悩むよりもやってみる方が早いし上手くいきますよ!
また、様々な分野の人と交流することで、思いがけないアイデアが見つかることもあります。挑戦することを恐れず、まずは新しい一歩を踏み出してみてください!

【キネス天王】
住所:新発田市天王甲18番地
お問い合わせ:0254-28-9650(新発田市商工振興課 工業振興係)
公式ホームページ
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研究・教育にチャレンジし続ける姿が素敵だね♪