
【プロフィール】
吉澤 沙織(よしざわ さおり):新潟市出身。大学で福祉を学んだ後、障がい福祉サービス事業所に勤務。就労支援員・職業指導員・相談支援専門員として従事する中で若年層支援に関心を持ち、(株)NSGソシアルサポートへ入社。2024年4月に「ソシアルポノ」を開所する。社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、ジョブコーチの資格を保有。
『新潟人276人目は、自立訓練(生活訓練)事業所「ソシアルポノ」の管理者・吉澤沙織さんです。事業所立ち上げの背景や日々の支援に込める想いを伺いました。』
支援の中で見つけた“強みと課題”
――福祉の仕事を志したきっかけは何ですか?
吉澤さん:大学時代の実習先で出会った職員さんに憧れたことがきっかけです。その方は利用者さん一人ひとりの想いを大切にし、目標に向かって共に考えながら、常に対等な目線で接していました。
「人の人生の大切な一部分に関われる」という仕事に魅力を感じたんです。
――これまでの支援の中で印象に残っている出会いはありますか?
吉澤さん:就労支援に携わる期間も長く、出会った一人ひとりが印象に残っています。
初めは体調に不安があったり、挫折経験により自信をなくしていたりなど、不安の強い状態で出会うことが多いです。しかし、一緒に活動する中で、それぞれ得意なことや強みがたくさん見えてきます。

――利用者さんも前向きに変化していくのですね!
吉澤さん:訓練を通して自信がつくと、就労先での課題も自分で対処できるようになり、それが“安心して働き続ける力”につながる場面を多く見てきました。
その中で「もっと早い段階で必要な支援に出会えていたら、違う選択肢を取れたのではないか」と感じたことが、“若年層支援”に関心を持ったきっかけです。
――これまでの経験が「ソシアルポノ」の開設につながっているのですね?
吉澤さん:「安心の中で挑戦ができる場」、「自分を理解する時間」、「社会に出る前の土台固めの場」の必要性を強く感じました。
自立訓練からのステップは様々なので、これまで経験してきた就労継続支援B型や就労移行、ジョブコーチ、相談員としての多様な視点を活かしたいと思ったんです。

若者のための土台づくりの場
――「ソシアルポノ」開設の背景を教えてください!
吉澤さん:新潟には就労を目指す事業所は多いですが、その前段階の“土台づくり”を行う場所は少ないと感じていました。
障がい受容がまだの方のほか、福祉へのハードルが高い層、休学中・退学後の学生など、サービスにつながりにくい方が利用しやすい場を目指し、学校や就労移行支援との連携を意識して開設しました。
――開設準備で特にこだわった点はありますか?
吉澤さん:「空間づくり」と「プログラム内容」です。福祉へのハードルを下げ、若い世代が気軽に通えるおしゃれで居心地の良い空間づくりを意識しました。
プログラムは古町商店街という立地を活かし、地域コミュニティで安心して挑戦できる“完全体験型のプログラム”を考案しています。
――「ソシアルポノ」の施設名にはどんな想いが込められていますか?
吉澤さん:「ポノ(Pono)」はハワイ語で“調和・思いやり・本来あるべき状態”という意味です。心や身体、自然、人間関係などがちょうどいいバランスで調和した状態を指します。
施設に通うことで自分の「ポノ」の状態を知り、それを保つ方法を身につけ、心の状態を振り返る共通言語になるように願いを込めました。

商店街で広がるフィールド活動
――主な利用者さんを教えてください。
吉澤さん:大学や専門学校を休学・退学して家にいる方、社会に出る前に自己理解や土台づくりをしたい方、一度働いたけれど退職後に社会参加へ自信が持てなくなった方などです。
通信制高校や専門学校卒業後の進路として利用される方もいますね。
――プログラムはどんな内容ですか?
吉澤さん:「コミュニケーションワーク」や「地域活動」、「ポノ活動」、「ITスキル」、「ヘルスケア」、「企業研究」など多様なプログラムを用意しています。
毎月テーマを設定し、“計画→体験→振り返り→次へ”というサイクルで進めていくのが特徴です。失敗も“次への気づき”として活かせるよう組み立てています。
――「フィールド活動」はどんな取り組みですか?
吉澤さん:商店街での活動を通して、体験を振り返り、まとめたり調べたりして、地域社会での学びを深める取り組みです。
具体的には「ポノ視点での商店街マップ作り」や「イベント会場設営・接客ボランティア」、「地域のゴミ拾い」、「小学生への活動発信」などですね。利用者の得意を活かしながら地域との交流を広げています。

――利用者さんの成長をどのように感じますか?
吉澤さん:同年代の利用者同士で悩みや課題を共有する中で、初めは緊張していた方も自分の意見を発信できるようになっています。
お互いに刺激や共感を受けながら、日々成長しているのを感じますね。コミュニケーションが苦手な方も自然と声を掛け合ったり、協力する場面が増えています。
――利用者さんが安心して通うために大切にしていることは何ですか?
吉澤さん:「自立」の形は人それぞれです。利用者一人ひとりの目標をスタッフ全員が理解・共有し、ご本人にも支援方針を伝えて“安心できる場づくり”を目指しています。
経験豊富で熱い想いを持ったスタッフが揃っているので、日々の変化や成長を見逃さず、気づきを共有するように心がけています。
――利用者さんやご家族との印象に残る言葉はありますか?
吉澤さん:「ポノが居心地の良い、自分の居場所になっています」や「ポノに通ってから自信が持てるようになりました」、「コミュニケーション能力が上がり、社会に出る力がついた」という声をいただいています。
こうした言葉が、私たちスタッフの大きな励みになっていますね。

“安心と挑戦”を両立できる場を目指して
――地域との関わりの中で感じることはありますか?
吉澤さん:地域活動を通じて、たくさんの方々から「ありがとう」と声をかけていただきます。
開所から2年目に入り、様々な体験の機会を作っていただいたり、商店街の方が講師として参加してくださるなど、地域とのつながりや活動範囲の広がりを実感しています。
――今後、「ソシアルポノ」をどんな場所にしていきたいですか?
吉澤さん:利用者さんにとって“安心・安全の場でありつつ、様々なことに挑戦し、小さな成功体験を積み重ねられる場所”にしたいと考えています。
古町商店街には、歴史あるお店や活性化に取り組まれている方々がたくさんいらっしゃいます。そういった地域の方々とも気軽に交流ができる場にしていきたいです。
――今後、新たに挑戦したい取り組みや構想はありますか?
吉澤さん:利用者さん主体の活動を増やし、みんなで「ソシアルポノ」をレベルアップさせていきたいです。
得意を活かした部活動を作ったり、ゆくゆくは「働く」ことを視野に入れ、気軽に実習できる場も開拓したいと考えています。

――挑戦したいことがたくさんあるのですね!
吉澤さん:2年間の中で次のステップに向けて進めていくサービスなので、他の事業所とも連携し、切れ目のない支援ができる繋がりを増やしていくこともひとつですね。
自立訓練(生活訓練)のサービスは新潟市内では少なく、それぞれ特色も異なります。より多くの方に「ソシアルポノ」を知ってもらえるように、福祉や学校関係者、利用を検討される方やご家族へ発信を続けていきたいです。
――最後に、利用を検討している方やそのご家族へメッセージをお願いします!
吉澤さん:見学は随時受け付けております。「ソシアルポノってどんなところ?」と興味を持たれた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!

【ソシアルポノ】
住所:新潟市中央区古町通7番町1001-4
電話:025-211-4271 (NSGソシアルサポート内)
公式ホームページ
公式Instagram
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「ソシアルポノ」の今後の活動の広がりが楽しみね♪