
【プロフィール】
池ヶ谷 奏 (いけがや かな): 神奈川県出身。新潟の舞踊集団「Noism」のオーディションに合格し、新潟へ移住。10年間の活動後、退団し独立。2024年に築150年以上の蔵を改装し、「Studio奏蔵舎」を設立する。ソロダンサーとしての活動と並行して、ダンス教師としても活躍している。
『新潟人272人目は、「Studio奏蔵舎」の代表・池ヶ谷奏さん。元Noismダンサーが“蔵を改装してスタジオをオープン”したきっかけや今後の目標を伺いました。温かく真摯にご対応いただき、ありがとうございました!』
幼少期から芽生えたダンスへの情熱
──バレエを始めたきっかけを教えてください!
池ヶ谷さん:小さい頃からお祭りの櫓に登って踊ってしまうような子で、“踊ることが大好き”でした。その姿を見た母がバレエ教室に連れて行ってくれたんです。
母と一緒にいろんな舞台を観に行くことが多く、モダンダンスやコンテンポラリーダンスにも出会い、興味を持ちました。
──バレエよりもダンスに惹かれていったのですか?
池ヶ谷さん:最初はバレリーナを目指していました。ただ、私はいわゆるバレリーナ体型ではなかったので、早々に諦めてしまいましたね。
その代わり、コンテンポラリーダンスの“体型に縛られない自由な表現”に魅了されていきました。
![Studio奏蔵舎 柿落とし公演]](https://gatachira.com/wp-content/uploads/2025/10/nj266_013.png)
(©︎yoshitaka[Studio奏蔵舎 柿落とし公演]より)
挑戦と成長の10年間
──「Noism」に入団したきっかけを教えてください!
池ヶ谷さん:金森穣さん(Noism芸術総監督)のファンだったんです。「金森さんから直接学べるなんて!」と思い、オーディションを受けました。
Noismでは研修生として3年、メインメンバーとして7年間活動しました。
──「Noism」での経験はどのようなものでしたか?
池ヶ谷さん:それまで楽しく踊ってきた感覚とは異なり、心身ともに“プロのダンサー”として鍛えられましたね。
金森さんも意識の徹底を求めていたので、当時は辛いことの方が多かったです。ただ、その経験が今の自分を支えていると思います。

(©︎yoshitaka[Studio奏蔵舎オープンイベント]より)
──諦めそうになったことはありましたか?
池ヶ谷さん:私は負けず嫌いなので、怒られると落ち込む以上に反骨心が湧いていました(笑)。
また、オンオフの切り替えも得意だったので、休日はカフェに行ったりして気分転換をしていましたね。
──舞台の裏側は大変そうですね…。
池ヶ谷さん:本番に至るまで、「どれだけ時間をかけて準備とトレーニングをするか」が重要です。そのプロセスに注ぐ情熱が大きいほど、良い舞台になると思います。
その情熱は必ずお客様に伝わると信じているので、一切手は抜けません。
──「ダンスが好き」という気持ちが続ける原動力ですか?
池ヶ谷さん:それも一因ですが、「ダンスが好き」だけではありませんね。
ダンスを通して色々な人と関わること、お客様と共有できる瞬間があること、異なるジャンルのアーティストとコラボできることなど、多面的な魅力が原動力です。

(©︎yoshitaka[2月公演のリハーサル風景])
「Noismの池ヶ谷」を越えて、新たな舞台へ
──Noismを退団し、フリーランスの舞踊家に挑戦したのはなぜですか?
池ヶ谷さん:10年の節目を迎えたことで、外の世界でどれだけ通用するのか挑戦してみたいと思いました。
「Noismの池ヶ谷」を知らない人たちに、自分のダンサーとしての価値を試したかったんです。
──フリーになって感じたことはありますか?
池ヶ谷さん:Noism時代とは全く違う世界でした。出会う人も考え方も新鮮で、まるで異なる言語を話すような感覚でしたね。
一方で、練習場所や舞台をすべて自分で確保する大変さも感じました。

床にこだわった、奏でるためのダンススタジオ
──「Studio奏蔵舎」は、どのようにして生まれたのですか?
池ヶ谷さん:建築家の友人の紹介で、「蔵を活用しないか」と声を掛けてもらったのがきっかけです。
東京と新潟の二拠点で活動していますが、蔵を見て一目惚れしました。
── 「蔵のダンススタジオ」というのは珍しいですね!
池ヶ谷さん:本当に珍しいと思います。柱のない空間や自分で床材を選べる点が魅力的でした。
特に、ダンススタジオにおいて「床」は非常に重要な要素なので、徹底してこだわりました。
──思わぬタイミングから進んでいったのですね(笑)
池ヶ谷さん:勢いで進めた部分もあったので不安でしたよ。出産翌日の病室でクラウドファンディングのサイトを編集したりして(笑)。
でも、「やってみたい」という気持ちが強く、自由に使えるスタジオを持てるという魅力に勝てませんでした。

──行動力が凄いですね!
池ヶ谷さん:夫に「もっとゆっくりしたら?」と言われましたが、夫をはじめ、両親や友人も応援してくれています。
応援の声をいただけるのも、この場所があるからこそだと思いますね。
──「Studio奏蔵舎」の名前に込めた思いは何ですか?
池ヶ谷さん:シンプルに「奏(かな)の蔵」という意味で並べましたが、気に入っています。“そうぞう”という読み方には、「想像(イマジネーション)」と「創造(クリエーション)」の意味を掛けています。
さらに、足音や音楽、声などが「奏でる場所」という願いも込めました。

(バレエクラス)
日常では味わえない体験を
──教室にはどのようなコースがありますか?
池ヶ谷さん:「身体ほぐしクラス」や「ヨガクラス」、「バレエクラス」、「コンテンポラリーダンスクラス」などがあります。
「身体ほぐしクラス」は、ダンス未経験者や高齢の方、子供でも参加しやすい内容で、身体を気持ちよく伸ばすことに特化したクラスです。まずは身体に興味を持ってもらい、心地よく動かすきっかけを作りたいと思いました。
──一方の「ダンスクラス」は?
池ヶ谷さん:初心者から本格的に踊りたい人まで受け入れるオープンクラスです。
新潟では、バレエやコンテンポラリーダンスを気軽に受講できる場が少なかったので、そういう場を作りたいと思いました。
──指導者として大切にしていることを教えてください!
池ヶ谷さん:「日常では味わえないことを体験して欲しい」と思っています。“体を動かす楽しさ”や“音楽に合わせて踊る気持ちよさ”、“人間がこんなこともできるんだという驚き”などを味わって欲しいですね。
「ダンスなんてやったことがないからできない」、「ダンスは分からないから関係ない世界」という心の壁を取っ払いたいと思っています。

(©︎yoshitaka[2月公演のリハーサル風景]2)
「Studio奏蔵舎」のイベント公演とは
──イベント公演も実施されているのですか?
池ヶ谷さん:劇場に行かなくても、“街の一角に芸術やアートがある”という経験をして欲しいという思いから、イベント公演を行っています。
昨年のオープンイベントでは、公募で集まったダンサーと一緒に作品を発表しました。
──踊りたいという方が多いのですね。
池ヶ谷さん:新潟に来たばかりの頃、新潟はお祭りを頻繫にやっているという印象がありました。「にいがた総踊り」を見ても、新潟の人は踊るのが好きなんだなと思ったんですよね。
ただ、踊る場所がないので、高校でダンス部に所属していた人も卒業と同時に辞めてしまうことが多いように感じます。だからこそ、“踊る場所を提供したい”と思いました。

(©︎yoshitaka[Studio奏蔵舎オープンイベント]より2)
──10月12日・13日に1周年記念公演を開催されるのですね!
池ヶ谷さん:今回は新潟青陵大学の学生の力も借りて、子供たちを中心にした作品を発表します。絵本の物語を題材に、“子供たちの感受性を活かしたダンス”を作っています。
ダンスは何でも表現できる芸術なので、「4人のキッズダンサー」の柔軟な表現力に注目していただきたいです。
──池ヶ谷さんのソロ作品も披露されるのですね!
池ヶ谷さん:Noism時代の後輩でもある「富岡櫂さん」に振付をしてもらいました。スタジオでの公演なので、観客の方々にはダンサーの表情や息遣いなども感じていただけると思います。
未就学児も観覧可能なので、ぜひ親子でお気軽に来ていただきたいです。

アート拠点としての未来
──「Studio奏蔵舎」をオープンして良かったと感じていますか?
池ヶ谷さん:スタジオを通じて新たに出会えた人たちばかりで、本当に始めて良かったなと思います。
「Noismを辞めてからも新潟に残ってくれてありがとう」と言われ、とても励みになりました。
──最後に、今後の目標を教えてください!
池ヶ谷さん:まずは、「Studio奏蔵舎」を続けていくことですね。もっと多くの方に足を運んでいただきたいですし、ダンスをやっている方には、私がこだわった床で踊る良さを体感してもらいたいです!
さらに、ここを“アートの拠点”として、たくさんの方が利用してくれる場所になったらいいですね。もっと仲間が増えたら公演の機会も増やし、ダンスをもっと身近なものにしていきたいです。

【Studio奏蔵舎】
住所:新潟市中央区本町通12番町2782
電話:080-5437-8416
レッスン日:不定期(公式Instagramをご確認ください)
公式Instagram
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私もダンスを習いたいわ♪