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TOP > インタビュー > 【アハメド・シャハリアルさん(三条市立大学 学長)】燕三条からイノベーションを起こす人材を
2021年1月9日

【アハメド・シャハリアルさん(三条市立大学 学長)】燕三条からイノベーションを起こす人材を

中越
インタビュー

三条市立大学


プロフィール
アハメド・シャハリアル: バングラデシュ出身。幼少期に日本人エンジニアを見たことをきっかけに日本への留学を志す。1988年に来日し、日本語学校で日本語を学んだ後、拓殖大学工学部電子工学科を経て、2000年に東京電機大学大学院博士号を取得。その後、同大学のフロンティア共同研究センター専任講師、新潟産業大学経済学部・産業システム学部助教授、沖縄科学技術大学院大学プログラムマネージャーなどを経て、三条市立大学の学長に抜擢された。


日本人エンジニアに魅了され、日本へ留学を決める

――シャハリアルさんが来日するきっかけを教えてください。

シャハリアルさん:出身はバングラデシュなのですが、留学生として1988年に日本へ来ました。幼い頃に、バングラデシュにいた日本人エンジニアの方の働きぶりに魅了されたのがきっかけです。それを見て、日本に留学したいと思っていました。その当時は、海外へ留学に行くのはそんなに簡単なことではなかったですね。私には兄弟が多く、それぞれみんなが自由に色々な方向に行ったので特段、留学することに対して、家族から何か言われるということはありませんでした。親としては「夢を叶える為なら頑張れ!」という感じでしたね。

――ご家族の応援もあり、留学のため日本へ来られたんですね。

シャハリアルさん: そうですね。言葉も話せない土地でのチャレンジでした。現実はやはり厳しいのですが、何かにチャレンジする時はあまり現実を考えないようにしていましたね。でも、今の私が同じようにチャレンジできるかと言われれば、後先考えすぎてできないですね。若い頃だったから怖いもの知らずでできていたと思います。たぶん、それは若い時ならみんな同じだと思います。若者の心理状態というか何事にもチャレンジするのが当たり前だったのかなと感じます。

――留学生として日本に来られてからは、どんなことを学ばれていたのでしょうか?

シャハリアルさん: 日本語を使えなければ電子工学を学ぶことすら難しかったので、まずは日本語学校に通い、日本語の勉強をしました。最初の3か月は結構苦労しましたね。もうバングラデシュに帰ったほうが良いのではないかと思うこともありました。でも、徐々に周りと言葉が通じるようになり、色々な方が応援してくれているのも感じましたし、その応援や人との出会いが支えになっていました。その時、身近にいたのが日本語学校の先生で、先生の支えが大学を受験するという次のステップを踏むきっかけになりましたね。

――まずは日本語を学んでからだったのですね。

シャハリアルさん:1年9か月ほど日本語を勉強し、1990年に大学へ入学しました。エンジニアになりたいという目標だったので大学卒業後はエンジニアになり、バングラデシュに帰るつもりでいましたね。1994年の卒業当時は、アジアへ進出している日本の企業や産業が多い時代でした。その中で、バングラデシュに進出している自動車の部品メーカーからオファーもあったのですが、学びを深めていくうちに勉強が面白くなり、大学院に進学したいと思いました。

――最初は日本で学んだら帰国する計画だったのですね。

シャハリアルさん:そうです。しかし、学びたいという想いや人との出会い、日本でできた友人など少しずつネットワークも増えていき、日本でもっと学びたいという想いが強くなっていきました。本当に良い出会いばかりで悪い出会いはほとんどなかったです。毎日一緒に過ごした大学時代の友人とは会う頻度は減りましたが、今でもつながっています。友人がいなければ多分ここまで来ていないと思いますね。かなり支えてもらいました。

三条市立大学

古い物の中に必ずヒントがある

――大学卒業後はどんなことをされていたのですか?

シャハリアルさん:大学で学んだ後は、東京電機大学大学院修士課程・博士課程を修了しました。そこでは人工心臓の研究をしていましたね。その後も同大学のフロンティア共同研究センター専任講師として研究を続けていました。当時、私は一番下の助手という立場だったので、研究をしながらセンター長の直下の助手としてオペレーションの実務を担わないといけないんです。予算立て、研究プロジェクトのマネジメント、進捗状況の報告など直接研究に関わる以外のこともしていました。今こうして三条市立大学の起ち上げをマネジメントさせていただいていますが、その基礎のようなものはオペレーションの実務をやっていた時に形成されたかもしれないですね。

研究をしていく中で動的モデルを分析するための高速度カメラを使用するということになり、当時そのカメラが東京大学にしかありませんでした。東京大学に行き、カメラを借りたのですが、当時の技術だと部分的にしか見えなかったり、数秒取るだけでメモリが足りなくなったり、様々な問題がありました。そこで、自分たちで既にある物を使い、普通のカメラで撮影できるものを作ったのです。高速度カメラでなくてもきれいに見えるようになったんですよね。その時、今ある資源を活かせば、将来の様々な社会の問題を解決してくれるということに気づきました。それから、新潟産業大学に行ったときも沖縄科学技術大学院大学に行ったときも、その時に与えられた資源を最大限に活かせば、社会の問題を解決する糸口がそこにあると考えながら研究していました。

――この燕三条地域と関りを持ったきっかけを教えてください。

シャハリアルさん:共通の知り合いを通じて、國定前市長とお会いしたのがきっかけです。当時、彼は燕三条地域に若者に魅力的な教育機関を作りたいと考えていました。実は、その2、3年前に地方の人材育成のあり方というのを研究していて、その研究で燕三条地域を調査していたんです。大学と企業が一緒になり、それぞれの役割を融合した教育研究によって短期間で即戦力の高い人材を作るというのがその時の研究テーマでした。大きい大学と小さな大学というのは社会にそれぞれニーズがあり、役割が違います。地域の大学はそれぞれの役割を持つべきだと思っていて、その話を國定前市長にしたら、「そういう大学を作りましょう」となり、それがこの大学の基本的なコンセプトになりました。

――シャハリアルさんから見て、燕三条地域はどう思いますか?

シャハリアルさん:燕三条地域は“ものづくりのまち”ですが、下請けをやっている企業が圧倒的に多いと思います。手先はとても器用なので、それを用いて誰かが考えたものを製造しています。今はこれで持続可能かもしれませんが、30年先50年先に同じように持続可能かどうかというと私は不可能だと思います。燕三条地域にないものは何かというと“企画開発”の部分なので、それがあればこの地域はとても強くなると思いますね。そうすれば、燕三条地域の企業の価値も上がり、燕三条地域の価値が上がると新潟県の価値が上がる。地域をどのように強くすることができるかと考えたときにこの大学を作るしかないと思いました。

三条市立大学
©フォトスタジオウスタ

イノベーション力の高い人材を作る

――三条市立大学と他の大学の違いはどこでしょうか?

シャハリアルさん: 燕三条地域の技術力が高いことは紛れもない事実です。この技術力の高さはそうそう失わないと思います。しかし、日本は国際的な競争下の中では劣勢です。その理由として、「マーケットで勝ち続けるためには技術力だけでは太刀打ちできなくなっている」と私は分析します。この大学では技術力に裏打ちされたイノベーション力の高い人材を生み出していきたいと思います。それが、この地域のサスティナビリティの担い手になるのではないかなと思っています。

――イノベーション力の高い人材を作る、それが三条市立大学の特色なのですね。

シャハリアルさん:日本の大学の工学部は技術力の高い人材を育てるカリキュラムが大半です。かつて、ものが無かった時代は技術力の高い人を育成する必要がありました。時代は変わりましたが、依然、技術力の高い人を輩出している大学が圧倒的に多いです。本来であれば、時代とともに自分たちも柔軟に変わらなければいけません。だからこそ、三条市立大学はそういった「技術力」+「その先のイノベーション力を育てる」カリキュラムを考えています。

――イノベーションのプロセスを学べる大学は他にもあるのでしょうか。

シャハリアルさん:三条市立大学だけです。断片的にやっていたり、やろうとしている大学はあるかもしれませんが、大々的に打ち出している大学は無いと思いますね。さらに、企業100社が大学と協力して教育・研究していくのです。かつて、日本でそのような大学は無いと思います。また、今では企業から輪に入りたいと連絡が来ます。燕三条地域以外にも長岡市、加茂市、見附市など周辺のまちからも話があり、これこそが我々が狙うところです。燕三条地域だけ盛り上がっても意味がありません。徐々に周辺地域も巻き込み、新潟県全体が元気になってほしいですね。

燕三条地域に存在する意義

――燕三条地域に大学ができる意義は何でしょうか?

シャハリアルさん:大学の一番の意義はこの地域に存在することです。この地域に存在することによって、様々な専門家の活動がこの地で行われ、シンポジウムなどで外部から学者が来て、知識をやり取りする場所になるわけです。そうすることで、小さな町工場でそういった人に出会う機会が無かった人たちに出会いが生まれ、中小企業がイノベーション力を高めるきっかけになると思います。もう一つ大事なのはダイバーシティです。異なる文化がバックグラウンドにあるからダイバーシティが存在し、様々なものが生まれています。この地域に小さいながらもダイバーシティをどう作るか、それが課題でもあると思います。

――どんな学生に三条市立大学へ来てもらいたいとお考えですか?

シャハリアルさん:やる気があり、元気な学生は全国どこからでも来てほしいと思います。ものづくりというのは、様々な知識の取得や経験、様々な方向からものを見るということが必要です。イノベーションは大学の中で起こすのではなく、イノベーションのベースを大学で養い、社会に出てからイノベーションを起こすわけです。学生が4年間で多角的な勉強をするための十分なプラットフォームを用意しているので、やる気と元気のある学生を歓迎します。そして、イノベーションを創出する人材として社会に出てほしいですね。もちろん、イノベーションを創出するにはかなりの精神力や経験が必要です。学生の方々には大学4年間を十分に使ってその力を大いに養い、沢山のきっかけを掴んでほしいと思います。

「三条市立大学」ホームページはこちら

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【三条市立大学】
住所:新潟県三条市上須頃1341番地(3街区)

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母:セツコ

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