まるで異空間に迷い込んだような細い路地の先にある里親さがし猫カフェ「おっぽ」。常に保護猫を第一に考えているオーナーの神田さんにお話をうかがいました。
プロフィール
神田 弘樹:あにまるガードや新潟動物ネットワークでのボランティアを経て、2017年11月に全頭が譲渡型の猫カフェをオープン。店舗運営から保護猫の譲渡まで、ほぼ全てを一人で行っている。
子供の頃から保護猫は身近な存在だった
――里親さがしの猫カフェをオープンしようとした経緯やきっかけを教えてください。
神田さん:5年前に妻が購入した小冊子に載っていた譲渡型猫カフェの記事を見て興味を持ったことが大きなきっかけです。小学生の頃から自宅で飼っていたのが全て保護猫で、猫を飼う=保護猫という考えはその頃から身近にありました。前職では約10年間工場勤務をしていましたが、仕事を辞めて他のことにチャレンジしようと思っていたタイミングで譲渡型猫カフェをやりたいという方やサポートしてくれる方と出会い「おっぽ」をオープンしました。
――他の猫カフェとの違いはどこですか?
神田さん:全頭を譲渡対象にした保護猫カフェなのが他のお店との違いです。気に入った猫がいて譲渡条件を満たせば飼い主になれます。一般的な猫カフェでは洋猫や純血種など珍しい猫を揃えていますが、おっぽには純血種はいません。他の猫カフェはお子さんが入れない猫カフェが多いですが、「おっぽ」では子どものころから保護猫を知ってもらいたいという意味を込めて、お子さん連れでも利用できます。また、触れ合うことで、猫アレルギーかどうかも知ることができます。あとは利用料金が良心的です。平日土日も同一料金で、特に平日はゆっくり猫と触れ合えます。お客さんの9割は普通に猫カフェとして遊びに来ています。そして残り1割のお客さんが猫を探しに来ています。いま猫が好きだけど飼えない方、値段が良心的な点や毎回のように違う猫と触れ合える点、新潟市の中心部に一番近い猫カフェということもあり足を運びやすいのだと思います。
――「おっぽ」のこだわりを教えてください。
神田さん:縁があってこの砂利の路地がある素敵な土地、空き家に出会いました。「おっぽ」は、祖母の家をイメージした部分もあり、黒電話やアンティークの家具など昭和を感じさせる店内です。とにかく保護猫カフェを悲しいイメージではなくアトラクション的な楽しい空間として感じてほしかったんです。他の猫カフェでは10匹以上置いているお店が多い中、「おっぽ」では5〜6匹、多くても7匹と決めているのも特徴です。そうすることで1匹1匹にフォーカスを当てることが出来ますし、猫同士も落ち着いて過ごせます。
20代で始めた保護ボランティア活動
――「新潟動物ネットワーク」や「あにまるガード」について、そして神田さんがボランティアを始めたきっかけを教えてください。
神田さん:「新潟動物ネットワーク」では地域で保護した動物の譲渡会、イベントによる啓発活動などを行っています。「あにまるガード」では動物の一時保護や譲渡活動、ペットホテルの運営を行っています。ボランティアを始めたきっかけは新潟動物ネットワーク経由で保護猫の飼い主になったことです。高校時代から飼っていた猫が20歳半ばで亡くなり、その後また猫を飼いたいと考えていた時に「新潟動物ネットワーク」の里親募集チラシを見て問い合わせをしました。そこで運命的に出会った1匹の猫を自宅に迎えたんです。その後、ボランティアを募集している話を聞き、週末は足を運んでいました。作業内容は犬の散歩や猫の給餌、掃除などです。最近は、なかなか今までのように外出して猫を保護するなど具体的な活動をする時間が取れていません。
――「おっぽ」にいる保護猫は、どこから迎えてくるのですか?
神田さん:最初の1年半は「あにまるガード」から貰い手が中々見つからない猫を引き取り運営していました。隣町で自分自身が保護に関わった猫もいます。現在はボランティアさんからの保護で、野良猫やその子猫が多いですね。困るのが飼えなくなった飼い猫の保護について一般の方から相談があることです。そういった相談は受け付けていません。譲渡会では子猫がすぐに貰われて成猫が残っていきますが、実は成猫は飼いやすいんです。成猫の魅力は実際に触れ合うと分かるので、その点「おっぽ」は成猫の譲渡に適していると思います。また、お客さんに怪我をさせるような野生の猫は見送っていますが、唸るけど噛みつかないなど人に慣れる兆しのある猫は受け入れています。他に重要なのが「おっぽ」にいる先住猫との関係で、毎回お店で相性確認を行います。
――「おっぽ」で里親になる時の流れを教えてください。
神田さん:お店に来て猫と触れ合い、そこで引き取りたい猫がいたら譲渡条件を説明します。保護猫はすぐに譲渡はせず、お客さんの自宅で1〜2週間ほどお試しで暮らすトライアル期間を設けています。トライアルをする理由は、猫がお店と違う行動をとる場合がありますし、先住猫がいる場合は相性確認をするためです。この期間を終えて実際に引き取るか出戻ってくるか決まります。「おっぽ」では猫と過ごすために必要なトライアルセットを貸し出していることもあり、譲渡先の約7割が初めて猫を飼うお客さんです。同じ時期に同じ猫が欲しいというお客さんもいますが、早いもの勝ちではなくその猫の特徴に合っている人を優先して譲渡しています。1ヶ月に1〜3匹が貰われていき、現在までに約50匹を譲渡しました。
――里親になるための条件を教えてください。
神田さん:当たり前ですが大切に育てていただける方、そして一番重要なのは室内飼いです。交通事故や病気の感染、様々なトラブルがあるためにお願いしていますし、猫は逃げる生き物なので脱走しないよう対策をする必要もあります。また里親になった後すぐに飼えなくなったと言われても困るので、後見人を申込用紙に記入してもらっています。
将来的には新潟の各地に保護猫と里親を繋ぐ場を
――「おっぽ」を始めて良かったと思うのはどんな時ですか?
神田さん:里親が決まった時、そして前職のままでいたら絶対に出会えなかったであろう人達に出会えた事ですね。新潟県全域からお客さんが来ますし、想いや見ている方向が近い保護仲間と知り合えました。あとは半分意地になってお店を続けている部分もありますが、熱心なボランティアサポーターさんが辞めさせてくれないのです(笑)続ければ続けるほど認知度が上がり、楽しみにしてくれるお客さんも増えました。
――「おっぽ」の運営で大変なことを教えてください。
神田さん:休みの日にも猫の世話で店へ毎朝晩通う点は大変ですね、旅行にも行けないですし、心から安らぐのは難しいです。四六時中相談が来るので神経を使うこともあります。一人でお店を運営しているので動ける時間が取れないこともあり、解決できない悩みの方が圧倒的に多いです。また、お店であり、ボランティアでもあるのでそのバランスも大変だと感じています。ボランティアを重視していると経営が成り立ちません。今の料金設定で続けていくのは厳しいですが、ありがたいことに募金をいただいたり、消耗品などを送っていただいたりして何とかやっています。
――最後に伝えたいことはありますか?
神田さん: 今後の展望は「おっぽ」の暖簾分けを上・中・下越、村上市などに作りたいと思っています。私の経験をアドバイスすることは出来ますが、他の地域でお客さんが来るかというと分かりません。ボランティアの存在は絶対必要なので簡単なことではありませんが、暖簾分けはやはり理想です。そして私の願いは少しでも不幸な猫が減ることです。野良猫の保護だけではなく、飼い主は自分の猫に対して愛情を持って育ててほしいです。安易に飼えなくなった等の相談がゼロになるといいと思っています。また本音を言うと体が資本なので、二人体制で健全に経営したいです。
【里親さがし猫カフェ おっぽ】
住所:新潟県新潟市中央区三和町1-27
保護ネコ譲渡型の猫カフェがあるんだね!お店もおばあちゃんの家みたいですごく落ち着きそうだなぁ~子どもも連れて行けるのがありがたいね!今のうちから保護ネコの存在を知っておくのも大切だ。今度みんなで行ってみよう!