プロフィール
佐藤 千裕(さとう ちひろ):兵庫県生まれ、東京育ち。短大卒業後、調理師専門学校を経てレストランに就職。2000年に新潟へ移住し、結婚式場でパティシエとして働いたのちに独立。料理教室やケータリングチーム、「DAIDOCO青果氷店」キッチンカー等の活動をスタート。2022年2月から店名を「旬果甘味店ルコト」に変更し、農産物加工所「おいしい循環ラボ」をスタートさせ、生産者や福祉作業所などと連携しながら、フードロスをなくす活動など幅広く展開している。
ガタチラスタッフ:『新潟人103人目は「C’s Kitchen」代表の佐藤千裕さん。人気かき氷店「DAIDOCO青果氷店」から、「旬果甘味店ルコト」に店名を変え、リニューアル!より多くの規格外農産物を加工し、商品化していきたいと話す代表の素顔に迫ります!素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!』
新潟の豊かさ・美しさに魅せられて
──生い立ちを教えてください。
佐藤さん:父が転勤族だったので、高校生までは全国各地を転々として過ごしていました。幼稚園の頃は新潟に住んでいたこともあるんです。それ以降は三重県と東京都で暮らし、24歳の時に再び新潟に移住してきました。都会は四季で風景が変わりませんが、新潟は自然が豊かで、季節によって景色が一変します。こんな美しい場所で暮らせるのは幸せなことだと感じますね。
──食に関わる仕事を目指していたのですか?
佐藤さん:子供の頃から生き物や自然が好きで、獣医さんになるのが夢でしたが、動物アレルギーを発症してしまい断念しました。料理やお菓子作りも好きだったので、自然と料理の道に進んでいましたね。家でニワトリを飼っていて、その餌づくりで野菜を刻んだりしているうちに包丁を使うことが得意になり、褒められて嬉しかったことがきっかけです(笑)。
規格外の野菜だっておいしい
──「C’s Kitchen」について教えてください!
佐藤さん:「C’s Kitchen」として、「旬果甘味店ルコト」の店舗とキッチンカーを運営しています。以前は「DAIDOCO青果氷店」という名前でしたが、青果氷だけでなく1年を通じて旬の果実の美味しさを味わっていただきたいと、2022年2月に店名を変更し、同時に「おいしい循環ラボ」という農産物加工のキッチンを新潟市中央区上所にオープンしました。それまでは農産物加工もお菓子作りも全て一ヵ所で行っていたのを分散させ、規格外の農産物をより多く扱えるようにしています。
──「おいしい循環ラボ」は、福祉事業所とも連携されているんですよね。
佐藤さん:料理の仕事は細分化すればするほど色々な方が関われるので、それぞれの得意分野を生かすことができます。福祉事業所の皆さんには、仕入れたいちごや梅の洗浄やヘタ取り、規格外の枝豆を鞘から出す作業など旬の素材の一次加工をお願いしています。それを「ルコト」で提供する商品に使用したり、他店に卸しています。
──より多くの規格外の農産物を加工できるようにされたのですね!
佐藤さん:加工所で一次加工品を作ることで、飲食店が素材の仕入れや鮮度管理、下ごしらえ加工にかける時間が少なくなりますし、加工したいけれど人手も時間もない生産者の現状を変えたいと考えました。国も農家の6次産業化を奨励して補助金を出していますが、実際は生産者が農繁期に加工まで行うのは難しいんです。そこで、私たちが加工を請け負うことで、より多くの規格外の農産物を商品化していきたいと考えています。
──加工品を通して、生産者さんのPRにもなりますね!
佐藤さん:規格外の農産物を活かすことで、私たちが生産者さんの紹介ができるんです。メニュー表には生産者さんの名前を必ず記載し、生産者さんの情報をお伝えしています。中には、「規格外の野菜を購入したい」と言ってくださる方もいますが、それでは正規品が売れなくなり、生産者さんの収益にならず、新たなフードロスにも繋がってしまいます。私たちは生産者さんあっての仕事なので、生産者を守れるような活動をしていきたいですね。
──「ルコト」の特徴は、規格外の農産物を使用しているところでしょうか?
佐藤さん:そうですね。商品だけ見ると、規格外の農産物を使っている印象はないと思います。原材料の個性を生かして適切な加工をすれば、十分美味しくなります。「旬果甘味店ルコト」にリニューアルしてからは、かき氷だけでなく、新潟素材のおしるこをメニューに加えました。夏だけではなく、一年を通して楽しんでいただきたいです。
持続可能な仕組みを確立したい
──「ルコト」の名前の由来は何ですか?
佐藤さん:2018年に様々な社会課題問題解決に繋げるプロジェクトのクラウドファンディングを立ち上げ、スタートし、「作ること」「食べること」「繋がること」「生きること」の「ルコト」を店名にしました。プロジェクトは、この先の事業をどうするか考えた時に、私が年老いて退くことでこの事業がなくなってしまうのがもったいなく、これまで関わってくださった皆さんに申し訳ないと感じ、私が辞めても続けられる仕組みづくりをしようと始めました。
──ロールモデルになり、同じ仕組みの事業を増やしていくということですね。
佐藤さん:中小企業でもできるところを見せられれば、全国どこでも同じことができると考えています。障がい者の方だけでなく、高齢者の方にもお願いできることもあるので、居場所づくりにも繋がると思います。まだまだやれることはたくさんありますね(笑)。忙しいですが、楽しい日々を送っています!
──お客様との印象に残るエピソードを教えてください!
佐藤さん:常連のお客様が、出産後に子供をお店へ連れてきてくれて、「この子の人生初かき氷は、無添加で素材の味が味わえるここにしようと決めていました」と言ってもらえたのが嬉しかったですね。近年では、アレルギーを持っている子供が増えていますし、どんな方でも安心して食べられるメニューをもっと増やしていこうと思います。
──休日のリフレッシュ法は何ですか?
佐藤さん:終わっていない仕事を片付けるのが、休日のストレス解消法です(笑)。溜まった仕事がなくなるとスッキリしますね。他にも、仕入れに行く途中に見る田園風景に癒されたり、温泉が大好きなので、仕入れや打ち合わせの合間に近くの温泉に行き、リフレッシュしています。
──最後に、今後挑戦したいことを教えてください!
佐藤さん:私が辞めても続く仕組みを50歳までに作り上げることです。いくら良い取り組みでも、関わる人が十分に暮らせる利益が出なければ事業として続きません。仕組みづくりをしっかりしてから次の世代にバトンタッチしたいですね。いずれ年を取ったら、もっと自然豊かな場所で小さな畑で作物を育てつつ、四季の移ろいを肌で感じながらお店が出来たらいいなと思っています。農村で暮らすには元気が必要なので、健康に過ごしていきたいです!
【旬果甘味店ルコト】
住所:新潟市東区松島3丁目1-3
電話:025-290-7205
HP:https://cskitchen.shopinfo.jp/
規格外の野菜や果物も丁寧に加工することでこんな素敵なおかしになるのね♪