【プロフィール】
若杉 智代子(わかすぎ ちよこ):新発田市生まれ。東京の専門学校に進学し、新潟へUターン後に結婚。ハワイへ移住して3年後に帰国し、2013年にいちご農家へ就農する。2018年には直売所兼スイーツ販売所である「Ichi-Rin 苺稟」をオープン。
『新潟人235人目は、「Ichi-Rin 苺稟」の代表・若杉智代子さん。生まれ育った新発田市米倉エリアで越後姫を栽培し、加工販売する「Ichi-Rin 苺稟」を経営されています。就農した経緯やこれからの目標についてお話を伺いました。素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!』
結婚してハワイへ移住!?
——ハワイに移住した経緯を教えてください!
若杉さん:夫が「英語を勉強したい」と言って、言語学で有名なハワイ大学へ留学することになったんです。私の親戚がハワイにいたこともあり、二人で移住しました。
主人のビザの関係で私は働けなかったので、ハワイアンキルトを習ったり、語学学校に通っていました。主人の卒業を待ち、3年後に帰国しました。
——ハワイに住み続けようとは思わなかったのですか?
若杉さん:物価が高いこともあり、「ハワイには住めないな……」と思っていたので、残るという選択肢はありませんでした。
新潟に戻ってからは「子供向けの英語教室をしようかな」とも考えていましたが、子育てに追われて、それどころではありませんでしたね(笑)。
青天の霹靂!就農は突然に…
——いちご農家になったきっかけを教えてください!
若杉さん:私にとっても突然でした。子育て真っ最中の43歳の時です。
稲作と黒毛和牛の飼育をしていた父が、「これからはこの地域にも施設園芸が必要だ。いちごづくりを始める」と資材を購入した矢先に体調を崩してしまって…。もう後には引けない状況下だったので、“私に白羽の矢が立った”という感じですね。
——農業に興味はあったのですか?
若杉さん:全くありませんでした。両親を幼い頃から見ていたので、農家の忙しさや苦労を嫌というほど知っていました。
父が2棟建設の準備をしていましたが、「1棟なら」という条件でいちご農家として就農しました。
——苦労も多かったと思います…。
若杉さん:本来であれば、いちご農家の研修を受けてから始める方が多いと思いますが、私にはそんな時間もなく、とにかくやらなければならない状況でした。
越後姫の普及指導員や農協の方に栽培についてなどを聞きながら、ぶっつけ本番でいちごと向き合う毎日でしたね。本当に無我夢中でした。
——1年目の収穫はどうでしたか?
若杉さん:普及指導員さんがしっかり指導してくださったこともあり、非常にいい品質の越後姫を育てることができました。
「新潟県施設園芸立毛品評会品」で受賞したことが励みになりました。
——新発田エリアでは、越後姫栽培に対するサポートが手厚いのですか?
若杉さん:手厚いと思います。JA北新潟の管内には県内最大クラス(60数軒)のいちご農家さんがいます。農協のいちご部会のメンバーも多いので、情報交換なども活発ですね。
さらに、地域振興局の普及員さんから丁寧に指導していただいているので、学べる体制が他のエリアよりも豊富だと思いますね。
人がやっていないことをやる!
——「Ichi-Rin 苺稟」をオープンしたきっかけを教えてください!
若杉さん:品質の良いいちごを作っても、1棟なので収穫量には限りがあります。また収穫時期の後半になると市場価格は下がってしまう。そういったことを見据えて「付加価値をつけた商品販売をしなければ」と、就農1年目から考えていました。
——そこで行き着いたのが“6次産業化(いちごの加工)”だったのですね!
若杉さん:当時はいちごの加工商品はあまりありませんでした。ちょうどドライフルーツに注目が集まり始めていたタイミングだったこともあり、試してみたらおいしくて…!
2017年に新潟県から「6次産業化プランナー」の派遣を受けて、1年以上の時間をかけて味や品質、パッケージデザインなどを熟考しました。
——ドライフルーツに関する知識はあったのですか?
若杉さん:食べる程度で、全くありませんでしたね(笑)。完全に独学で、試作を重ねてたどり着いた商品です。
いちご農家になったとき、「やるからにはとことんやり切る」と覚悟を決めたので、「人がやっていないことをやるんだ」とブレずに試作を繰り返しましたね。
——販売直後の反応はいかがでしたか?
若杉さん:珍しさもあってか、いろいろなメディアに取り上げていただきました。それに比例する形で多くのお客様にも購入いただき、非常に反応がよかったです。
一方で、「ドライいちご以外はないの?」というお声もいただくようになって…。それでスイーツも販売するようになりました。フレッシュのいちごがない時期は、ぶどうやいちじくなど季節のフルーツやスイーツを販売するスタイルになっています。
地域への思いも増幅
——いちご農家になり、地域の方との交流も増えましたか?
若杉さん:メディアに取り上げていただいたこともあって、増えましたね。地域での活動にも力を入れています。また、農業委員などさまざまな委員での活動を通して「地域に貢献したい」と思っています。
——「地域に貢献したい」という思いの根源は何ですか?
若杉さん:遺伝ですかね(笑)。父が地域の活動に一生懸命な人だったんです。私の生まれた米倉地域のために土地改良の理事長をずっとやっていて、地域発展のために尽力していました。そんな父親の血が影響しているんですよ。
——最後に、今後の目標を教えてください!
若杉さん:私の住んでいる五十公野地区は高齢化も進んできて、一人暮らしの方も多くなりました。だからこそ、住民が集まれる場所づくりをしたいと思っています。だから、今の目標は「喫茶店」のオープンですね。夜にカラオケができる場所なんてこともありかもしれません(笑)。
“みんなを地域で見守るような拠点、地域問題の解決の場”をつくりたいと思います。
【Ichi-Rin 苺稟】
住所:新発田市五十公野6805-2
電話:080-2248-6427
営業時間:11:00~17:00
定休日:不定休(要電話確認)
公式ホームページ
公式Instagram
ドライいちごがおいしそうだわ♪