【プロフィール】
藤澤 裕之(ふじさわ ひろゆき):長岡市生まれ。大学でバイオテクノロジーを学び、卒業後は東京のスーパーマーケットに就職。その後Uターンし、学習塾講師を経て『長岡小嶋屋』に入社する。2013年から代表取締役に就任し、地元に根付いたへぎそば店として、そばの美味しさを追求している。
「新潟人228人目は、『株式会社長岡小嶋屋』の代表取締役・藤澤裕之さん。前職は塾講師だったという藤澤さんに、入社した経緯をはじめ、そばへのこだわりや大切にしていることを伺いました。素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!」
そば屋として28年
──飲食業に興味があったのですか?
藤澤さん:元々、実家が飲食店を経営していたんです。昔から手伝わされたこともあり、学生時代は飲食店にあまりいいイメージを持っていませんでした。「飲食業はやりたくない」と思っていたほどです。
──ご実家の飲食店を継ぐという選択肢もあったのですか?
藤澤さん:「このまま店を継ぐのは嫌だ」と思ったので、高校の進路を決める三者面談で「大学へ行きたい」と言ったんです。現役で国立大学という条件だったので、必死に勉強しましたね。
家業を継ぐと言ったら、将来が見えているわけじゃないですか。地域と客層を考えたら、あまり先が見通せないと子供心に思ったんですよね。
──大学は農学部に進学されたのですね!
藤澤さん:自然科学が好きだったので、農学部でバイオテクノロジーを学びました。研究職を目指していましたが挫折し、東京のスーパーマーケットに入社しました。
──全く別の業界に就職されたのですね!
藤澤さん:総菜部門で寿司を握ったり、天ぷらを揚げたりしていました。しかし、異動が多く、通勤が往復3時間かかることもあり、疲れてしまって…。
結局退職して、母親が体調を崩したことを機にUターンしました。その後は、学習塾の講師もしていたんですよ。
──『長岡小嶋屋』へはいつ頃に入社されたのですか?
藤澤さん:塾の講師を5年程務めたのですが、少子化で市場が縮小していくのを感じていましたし、婚約を機に「男子一生の仕事」というのを考え始めたんです。
“これまでの経歴を活かせる仕事”を探しているときに、当社が製品開発や品質管理を担当する理系出身者を募集していたんです。そのときに「これだ!」と思って(笑)。ご縁をいただき、「働き続けたら製造部長くらいにはなれるのかな」と思いながら入社しました。
“飲食店の子供”という経験
──社長に任命されたときはどんな心境でしたか?
藤澤さん:ホールや調理場にはほとんど立ったことがなかったので、社員からは「お店のこと知らない人が経営者になれるの?」という疑念を抱かれると思っていました。「本当に私で大丈夫かな」という不安もありましたね。
──決意したきっかけがあったのですね。
藤澤さん:前社長(現在は退任)から、「あなたは幼い頃から飲食店の子供だったことが身に染みついている」と言われたんです。「その経験がここで生きてくるのか」と思いました。
まさに「門前の小僧習わぬ経を読む」ですよね。「あなた(藤澤)だったら、会社を任せても大丈夫だと思った」という前社長の言葉が背中を押してくれました。
──社長として大切にしていることを教えてください!
藤澤さん: マイクロマネジメントは一切せず、「ボトムアップ」を大切にしています。報告や相談に対しても、「あなたはどう考えているの?」と必ず聞いているんです。
だからこそ、各店舗には出向いて、店長や社員とも積極的にコミュニケーションを取るようにしていますね。
“ふのり”そばの魅力
──『長岡小嶋屋』のそばは鮮やかな緑色が特徴ですよね!
藤澤さん:そばは面白くて、“そばの実の挽き方”で特性が変わります。両極端で言うと「黒っぽいそば」と「真っ白なそば」がありますが、挽き方が違うだけで同じ穀物からできているんですよ。
真っ白なそばは、そばの実を挽いて中央の白い部分しか使わないので白くなります。そばの実の外側の殻は黒いので、殻に近い部分を挽くことで黒っぽいそばになるんです。
──挽き方で色味が変わるのですね!
藤澤さん:当社のそばは緑色ですが、白いそばにしているから「ふのりの緑色」がしっかり出ます。緑色と風味を大切にしたいので、ふのりは“新鮮なもの”を使っていますし、そば粉も“数種類に挽き分けたものをブレンド”しています。
──「のど越しの滑らかさ」や「コシの強さ」も特徴ですよね!
藤澤さん:ふのりは煮るとドロドロになって、冷えるとゼリーのように固まる特性があります。そばを茹でるとふのり分が溶けて、茹で上がったそばを冷水で冷やすとゼリー状に戻ろうとします。それによって、独特の食感が出るんですよ。
──通販サイトなどで販売されている「ホームセット」を家庭で美味しく作るコツはありますか?
藤澤さん:へぎそばは、他のそばと比較すると再現性が高いと思います。可能であれば2リットルの鍋を用意して、1把ずつ茹でるのがおすすめです。
ご家庭では冷蔵庫から出して、そばが冷えた状態で茹でますよね。そうするとお湯の温度が下がってしまうので、たっぷりのお湯でほぐすように茹でてください。茹で上がったら、冷水できゅっと締めるとお店で食べるような美味しいそばになりますよ。
──冷水で締めるのもポイントなのですね!
藤澤さん:少し茹ですぎても、冷水で締めることでリカバリーできるんですよ。茹で加減は、“気持ち固め”くらいがおすすめですね。
そばをこよなく愛するお客さまに励まされ
──そばつゆにもこだわりはありますか?
藤澤さん:麺をつゆにしっかりつけて食べていただきたいので、しょっぱすぎないように仕上げています。
当社では、鰹節(枯節)をたっぷり使った出汁とかえし(しょうゆと砂糖とみりんを合わせたもの)を合わせて使っているんです。「鰹」には特にこだわっていて、少し厚めに削った“一番だし”を使用し、美味しさを引き出しています。
──そば湯で割っても美味しいですよね!
藤澤さん:ご家庭でも、そば湯(茹で汁)は捨てずに味わって欲しいですね。そばは栄養が豊富なので、そば湯に栄養が溶け出しているんです。
お客様の中には、そば湯を冷凍保存して、焼酎割りにして楽しんでいる方もいらっしゃるんですよ。その内容を書いたお手紙をいただいて、とても嬉しかったですね。
──最後に、今後の目標を教えてください!
藤澤さん:以前は規模を大きくすることを考えていたのですが、新型ウイルス禍を経て考え方が少し変わりました。
今年、東京の店舗を閉めたんです。今いるスタッフやお客様をなおざりにして、店舗を増やすというのは違うかなと感じました。
──まずは、“スタッフさんやお客様を大切にする”ということですね。
藤澤さん:地球温暖化で海水温が上昇している影響で、ふのりの漁獲量が減っているのも理由の一つです。今後は県内の店舗を充実させるべく、“人材育成”に注力したいと思います。
また、「にいがた2km」の発展に合わせて、今までにない新しい取り組みも考えています。時期は未定ですが、新潟駅周辺に路面店を出店予定です。「新潟駅周辺のそば屋と言えば、“長岡小嶋屋”」と言ってもらえるように、たくさんの方から愛されるお店にしていきたいと思います。
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【長岡小嶋屋 殿町本店】
住所:長岡市殿町2-2-9
電話:0258-39-0543
営業時間:11:00~22:00(L.O.21:00)
定休日:水曜日
公式ホームページ:https://www.nagaokakojimaya.com/index.html
公式Instagram:@nagaoka_kojimaya
今年の年越しそばは「長岡小嶋屋のホームセット」にしましょう♪