プロフィール
渡辺 康弘(わたなべ やすひろ):新潟県三条市出身。東京都多摩市の農業者大学校を卒業後、家業の渡辺果樹園を継ぐ。ル・レクチェやぶどうの果樹栽培を中心に「音楽生育」を取り入れるなどの新たなチャレンジを続け、2021年第22回全国果樹技術・経営コンクールで農林水産大臣賞を受賞した。
農業は私の天職
──渡辺さんの生い立ちを教えてください。
渡辺さん:三条市の出身です。果樹園としては祖父の代からスタートしました。以前は米と果樹園の複合経営をしていましたが、当時の国の減反政策もあり、父親の代から梨・ル・レクチェ・ぶどうなどの果樹栽培に専念するようになりました。
──家業を継ぐ意思はあったのですか?
渡辺さん:長男なのでいずれは継ぐだろうと考えていました。ぶどう栽培を学んでいた先生から、「家業を継ぐのなら、凝り固まらないために普通科高校に行くのが良い」とアドバイスを受け、高校は普通科へ進学しました。大学から本格的に農業を学び、卒業後に家業の渡辺果樹園を継ぎました。若い頃は人と接するのが苦手だったので、農業は自分の性格にも合い、天職だと感じていました。
──人と接するのが苦手だったとは、今の渡辺さんからは想像できません…(笑)。
渡辺さん:よく言われます(笑)。植物と向き合い、生産物が評価され、お客様に喜んでもらえることが自信になり、人と会話することが楽しくなりました。農業を通じて自分自身の成長も感じています。
“音楽生育”との出会い
──渡辺果樹園の特徴を教えてください!
渡辺さん:栽培の基本は土づくりです。当園では微生物が豊富なたい肥を投入し、土を柔らかくしています。全国の果樹園の中でも、当園のように2mの棒が刺さるほど柔軟な土壌は滅多にないと思います。また、結婚後に妻と観光果樹園をスタートし、直接販売も始めました。今では約7割が直接販売です。“贈る喜び”、“贈られる喜び”を表現するため、当初からオリジナルデザインの箱で販売しています。箱を見た時の期待感から、ル・レクチェは人を喜ばせるモノに昇華すると考えているので、デザインにはこだわっていますね。
──「音楽生育」を行っていますが、始めたきっかけを教えてください!
渡辺さん:クラシック音楽はル・レクチェの追熟に10年以上前から使用しています。きっかけは福島県の小原酒造という酒蔵が酒の酵母に音楽を聴かせて、酵母が一番良い動きをする曲の研究をしていたことです。旅行で喜多方へ行った時に酒蔵を見に行き、ル・レクチェにも音楽を聴かせてみようと始めました。その後、山形県で音楽生育を取り入れたラ・フランスの農業法人があることを知り、直接問い合わせたりして学びました。
──クラシック音楽を聴いた果実はなんだか特別感がありますね!
渡辺さん:クラシック音楽を聴かせることで、果物に背景ができて「モーツァルトやバッハを聴いてる果物なんだって!」と話題性が高まります。音楽が流れている畑を脳内にイメージしたり、「そんな特別な果物を贈ってくれるんだ!」という喜びが倍増することで、果物の定義が広がってくれると思うんです。付加価値も付きますし、値段を超えた感動を提供できます。
──「ル・レクチェ」生産のこだわりを感じますね。
渡辺さん:ル・レクチェは収穫してから追熟が必要ですが、当園では追熟期間にクラシック音楽を聴かせています。県内のほとんどのル・レクチェ農家が、食べ頃直前まで追熟させてから出荷します。新潟県は、栄養豊富な柔らかい土壌に恵まれたこと、追熟を当たり前にやる生真面目な県民性、熟成させる期間の平均気温や湿度がほぼ理想的なのです。育てるのが難しい品種なので、新潟のように根付いている地域は世界的にもほとんどないですね。新潟のル・レクチェ農家は愛情を持って育てていることをもっと発信していきたいです。
新潟の“ル・レクチェブランド”を確立したい
──スタッフとの印象に残るエピソードはありますか?
渡辺さん:とても頼りになるスタッフばかりで、いつも助けられています。基本的な畑仕事は妻と母の家族3人で行い、栽培・出荷スタッフが6人います。当園の自慢の一つに「スタッフの結束力」や「技術の高さ」があります。スタッフみんなが栽培に関して心血を注いでくれるので、毎年良いモノができていると自負しています!
──皆さんが渡辺果樹園の果物に自信を持って取り組まれているのですね。
渡辺さん:「自分が渡辺果樹園の果物の信用を上げるんだ」という気持ちで全員が作業していると思います。より良くするためにどうしたら良いかを常に考えてくれているので、私から言わなくても大丈夫なんです。畑からよく笑い声が聞こえるくらい楽しい雰囲気から生まれる農産物なので、お客様にもきっと満足してもらえると思います。
──最後に、今後挑戦したいことを教えてください!
渡辺さん:ル・レクチェの知名度を上げるためにもっと宣伝していきたいです!私たちが自信作のル・レクチェを作り続ければ、ファンも確実に増えていくと思いますし、その上で希少性を認識してもらいたいと考えています。そして、栽培が難しいル・レクチェに情熱を注いでいる農家は、個性的で魅力があることを知って欲しいです。気候や県民性を活かした「ル・レクチェブランド」を盛り上げていきたいですね。
(渡辺果樹園の皆さん)
\ 商品は通販サイト「ガタ市」から購入できます /
【渡辺果樹園】
住所:新潟県三条市井戸場143
電話:0256-34-5470
想いが込められたル・レクチェは贈答用に喜ばれそうだわ!