プロフィール
高野 一浩(たかの かずひろ): 新潟市西区出身。大正7年から続く老舗製麺会社「麺匠高野」の取締役工場長として、製造全般に携わり、へぎそばや中華麺、ワンタンなど麺類に限らず幅広い商品を製造している。高校時代から早朝にアルバイトとして手伝っており、その頃から朝4時過ぎには自然と目が覚める体質になった。趣味は、フットサルやゴルフと体を動かすことが好き。
幼いころから見てきた親の仕事
――高野さんの生い立ちや経歴について教えてください。
高野さん:出身は新潟市西区です。ずっと新潟市に住んでいるので、県外には年1回の出張で機械の展示会を見に行くかお客さんのお店に行くくらいですね。確実に新潟にいるので、進んで地元の同総会の幹事をやっています(笑)。工場兼自宅という製造機械に囲まれた環境で育ちました。機械の稼働音で毎朝目覚め、粉まみれの廊下を歩いて学校に行く毎日でした。子どもの頃から配達の付き添いや簡単な手伝いをよくしており、高校2年生の時にアルバイトとして本格的に働きました。
――幼い頃から、製麺という仕事が身近にあったのですね。
高野さん:そうですね。アルバイトの時は仕事が始まるのが朝5時からで学校に登校する前の2時間半、毎朝働いていました。当時は時給500円程度でしたが、高校生のわりに高収入だったと思います。今よりもお小遣い的には多かったかもしれません(笑)。あれから25年近く経ちますが、休みの日でも4時過ぎには自然と目が覚めてしまう体質になりました。
――元々家業を継ぐおつもりだったのですか?
高野さん:最初は親の敷かれたレールは嫌だと思っていたのですが、手伝うようになってからは逆にそれがごくごく自然だと思うようになりました。家族が働く姿を見て育ったので仕事というよりは、生活の一部として嫌なことでもなく、私自身機械も好きだったのでやるからには一生懸命やろうと決めました。
大正時代から続く、歴史ある製麺会社
――「麺匠高野」の歴史を教えてください。
高野さん:1918年に私の高祖父にあたる初代・高野太平次が古町3番町に「高野うどん屋」を開業したのが始まりです。その後、曽祖父・庄太が2代目に就任し、「高野製麺所」に社名変更しました。当時は、持ち帰りのうどんだけで行列ができていたみたいです。私の祖父にあたる3代目・高司がかなりのやり手で、13歳の時に義勇軍として中国に行ったのですが、すぐに日本が敗北し、1年半ほど中国に隠れて住んでいたそうです。その時に中国語を覚え、後に新潟の日中友好協会の会長もやっています。中国にも工場を建てたりもしていました。
――元々は路面店からの始まりだったのですね。
高野さん:そうですね。当時は新潟市の中心地で敷地も狭かったので3代目・高司が継いでから、生まれ育った西区に移転し製造工場らしくなりました。社名も今の「麺匠高野」に改名し、後の主力商品「へぎそば」も製造販売されました。学校給食も始まり、給食に出るソフト麺も50年前だったので初めて販売したのもうちらしいです。母・里美が4代目に就任してからは、全国展開するようになりましたね。創業100年を越え、歴史は古いです。
――現在、製造された麺は全国各地に販売されているのですか?
高野さん:どちらも業務用ですが、中華麺は県内、へぎそばは青森県から沖縄県まで各地へ販売しています。4代目社長の顔が広く、その伝手で販売先も増えました。お客さんから間接的ではありますが、著名人から好評をいただいていると聞きます。卸先のお店が芸能人の方の間で人気だったり、プロダクションの事務所の近くだったり、メディアに取り上げられていました。この間も大阪のお客さんがテレビに出ていました。まぁテレビに出るのはお客さんで製造元の話は一切出ないんですけどね(笑)。
――「麺匠高野」さんでは、通常どんな商品を製造されているのでしょうか?
高野さん:通常は、へぎそば・中華麺・ワンタンなど作っています。ほとんど既存の商品が主力と思われるのですが、意外と個々のラーメン店さんからの注文もありますね。老舗のラーメン店さんが多く、こだわりがありますのでお店からの要望があれば、それに沿った麺を作ります。
――依頼されて意外なものはありましたか?
高野さん:そうですね、百貨店さんに常温で半年持つ生麺を作ってくださいと言われたことがあります。うちは添加物をあまり使わないので、さすがにお断りをしました。作っている以上は、自分が食べたい安心・安全なものを作るべきだと思っています。頼まれたら何でも作ると言いましたが、限度と作る側のこだわりもあります。
ふのりの含有量にこだわった自慢の“へぎそば”
――「越後へぎそば」のこだわりを教えてください。
高野さん:へぎそばの原料であるフノリが日持ちしないこともあり、当時は飲食店でしか食べることができませんでした。そこで3代目の祖父が「家庭でも簡単に作って食べられるへぎそばを」という観点から開発・製造して生まれた商品が「越後へぎそば」です。国産フノリを使用し、フノリの風味を活かした生麺にこだわり、フノリの含有量も1番と自負しています。含有量が多い故に、フノリが含む砂の量も多いのですが、そこに人件費を惜しまず丁寧に砂を取り除きます。この砂をどれだけ減らすかが重要で、他社だとフノリの量を減らすんですよね。うちは原料の良い部分をお客さんにそのまま食べていただきたいので、フノリをたくさん入れていますし、生麺にこだわっています。
――生麺と乾麺でまた違いがあるのですか?
高野さん:乾麺にするとフノリの風味が飛ぶんです。そうするとフノリを使う意味がなくなるので、うちでは生麺にこだわっています。お客さんからは「乾麺なら食べたことあるけど、生麺のへぎそばは初めてで、とてもおいしかった。」とリピーターになる方も多くいらっしゃいます。
――おすすめの食べ方を教えてください!
高野さん:へぎそばはざるそばで食べるのが最適です。温かいそばにすると原料のフノリが溶けてしまい、そばを延ばしてしまうからです。特にうちの「越後へぎそば」はフノリの含有量が多いため、軽く茹でてから氷水でゆすぐことにより、その温度差でつるつる感がより増していきます。
初心を忘れない商品作りを続けていく
――スタッフやお客さんとの印象に残るエピソードを教えてください!
高野さん:昔から今も変わらず家族経営なので、必ず家族全員での食事の時も仕事の話やお客さんの話など会話が絶えず静かな食事をしたことがありません。そんな環境を見ている従業員も今時珍しいと不思議に思っているみたいです(笑)。
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください!
高野さん:コロナ禍の影響から時短営業を余儀なくされ、「自家製麺をやめたいので、作ってもらえますか」という相談が増えました。困っている飲食店、ラーメン店さんの力になれるよう、初心を忘れることなく1つ1つの商品作りで何でも作れる職人になれるよう励みたいです。大手にも負けない技術と行動力でお客さんから頼られるように商品作りをして行きたいです。
――最後に、「麺匠高野」の商品をどんな方に楽しんでいただきたいですか?
高野さん:まずは、へぎそばを食べたことがないという方にうちの「越後へぎそば」を食べて欲しいですね。へぎそばという観点から知名度はまだまだ無いのですが、多くの方にフノリ本来の風味を活かした生麺のへぎそばを堪能していただきたいです。
【有限会社麺匠高野】
住所:新潟市南区下塩俵1078番地1
電話:025-362-0011
へぎそばもラーメンもおいしそうだな~職人のこだわりが詰まった商品なんだね!早速へぎそば注文してざるそばで食べるぞ~!