プロフィール
佐藤広国: 新潟県阿賀野市(旧水原町)出身。新潟県内の大学を卒業後、群馬県の食肉学校で学び、修行の為、東京へ就職。その後、祖父が創設した佐藤食肉へ入社し、飲食店・スーパーマーケットへの営業で売上を伸ばしていく。そんな中、自社商品を作ろうと地元企業と連携し、「あがの姫牛」「純白のビアンカ」など様々な商品を開発している。
将来の夢は「お肉屋さんになる!」
――佐藤さんの経歴や趣味について教えてください。
佐藤さん:出身は阿賀野市ですが、阿賀野市は元々安田町、水原町、京ヶ瀬村、笹神村の4町村で、私は生まれも育ちも旧水原町です。高校卒業後は県内の大学に行き、卒業後は群馬県にある食肉学校に半年間学びに行きました。その後、修行のつもりで東京の食肉市場で3年程働いていました。
――佐藤食肉はお祖父さんが創業されたとお聞きしました。
佐藤さん:そうです。私が小学生の頃は商店街があり、そこで昭和28年から佐藤精肉店という名前でスタートしました。お店の看板には「肉の佐藤」と書いてあって商店街にあるようなお肉屋さんだったんです。隣は八百屋と豆腐屋でしたね。昭和60年には法人化し「佐藤食肉」に名前を変えました。そこから昭和63年に今年7月にオープンした直売店の場所に工場を引越しました。
――佐藤さんは幼いころから佐藤食肉で働くつもりでいたのですか?
佐藤さん:祖父が始めて、現在は父親が経営していますが、小さい頃から家業を継ぐという認識だったと思います。幼い頃の作文を見ると全部「お肉屋さんになる!」って書いてあるんです(笑)。私たちの頃は、親の職業をやるというのが多かったので現実的に言っていたのかもしれません。
――「お肉屋さんになる!」というのはぶれなかったのですね。東京での修行から戻ってきてどんなことをされていたのですか?
佐藤さん:東京から戻ってきたときは従業員も少なく、当時は原料肉の販売しかしていませんでした。現在は、従業員も増え、加工など色々なことをやっています。当初から加工品を作るということは考えていましたが、まずは会社を大きくしたいと思い、取引を増やすため営業に注力しました。
とにかく売上を上げて会社を大きくしたい思いが強かった
――どんな営業をされていたのでしょうか?
佐藤さん: 1番最初は一人で飲食店へ営業に回っていました。後々は人数を増やしたりもしましたが、1日20~30件回っていましたね。今月は五泉・村松方面に行くと決めたら1ヵ月間毎日トラックに乗って配達と営業でその地域のほとんどのお店に行きました。自分はただこの仕事が好きで自分のお肉を使ってもらいたいという想いだけで訪問していたのでどのお肉を提案すればいいのかも分からず、逆にお客さんに教えてもらいながらやっていました(笑)。若さ故の営業をしてましたね。2年間営業に回り、お客さんも増えました。
――営業された結果お客さんがかなり増えましたね。そのモチベーションは何なのですか?
佐藤さん:新規の取引が増えたり、商品が料理として提供されていることが当時は楽しかったですね。そこに物凄くやりがいを持っていました。私はとにかく売上を上げて会社を大きくしたいという目標を持っていたので行動力がとても強かったですね。
――目標に対する行動力がすごいですよね。その後も販路拡大のための営業をされたのですか?
佐藤さん: その後はスーパーマーケットも取引をしたいと考え、スーパーマーケットへの営業を始めました。「自分で持ってきた商品は自分で売るので置かせて下さい」とお願いし、ホットプレートを持参して私自身がマネキン販売をさせてもらっていました。実際にお客さんの声を聞いて商品を作り、その商品を「おいしかったよ」と言ってくれるのがとても好きでしたね。そこで反応が良かった商品を定番化し、店頭に置かせてもらいました。
――飲食店にスーパーマーケットにどんどん販路を拡大されたんですね。
佐藤さん:でも、やっぱりスーパーマーケットや飲食店と取引があると言っても佐藤食肉のお肉だということを一般の方は知らない方が多いんですよね。しいて言えば地元の人が佐藤食肉という企業はあるけれど、どこにあってどんな会社か分からないというのが現状でした。一生懸命仕事をしている従業員の家族が佐藤食肉のことを知らないということに少し悔しさを感じましたね。今までは自分たちがしっかり売上を出していれば良いと思っていたけど、従業員から「自分たちが作った商品がどこに売られているのかが分からない」という声を聞き、自社商品を作り、地元で再出発してみようと商品のブランディングを手がけました。
「佐藤食肉の商品」を作り、地元で再出発
――そこから自社商品を作ることになったのですね。「豚ばらつるし焼豚」はモンドセレクション最高金賞を受賞されていますよね。
佐藤さん:モンドセレクションは佐藤食肉ブランドの初めての評価です。佐藤食肉の強みと自分が作りたいのは何だろうと考えた時、焼豚かなと思い、一番初めに作ったのが「豚ばらつるし焼豚」です。「豚ばらつるし焼豚」を販売する時にもっとネームバリューのある商品にしたいと思い、モンドセレクションに応募し、最高金賞を受賞しました。県外では売れるようになりましたが、新潟県での認知はまだまだでした。じゃあ県内の方にもっと認知してもらうために活動しようとなった時、武器となる商品を作らないといけないなとなって考えたのが「あがの姫牛」なんです。
――「あがの姫牛」はどうして生まれたのでしょうか?
佐藤さん:「あがの姫牛」は阿賀野市役所の古田島さんという方がいたから出来たと言っても過言ではないくらいです。古田島さんは阿賀野市で商売をしている人の声を聞き回り、助言や色々な話をしたり真摯に向き合っていて、私もその中の1人でした。「県内活動するなら新潟ならではの商品が欲しいけど、どこから着手して良いかまだ見えていない」という話をしたところ、同じ地元にあるうすい牧場さんとスワンレイクさんを紹介されたんです。「お互いの求めているものがとてもリンクしている」と。自分たちで販売網を持っていないうすい牧場と販売は出来るけどモノがない佐藤食肉、廃棄されるビールかすを餌として有効活用したいスワンレイクをつなぎ合わせてくれたんです。うすい牧場さんは同じお肉屋さんですよ。競合が連携してやることはあまりないですよね。企業の困っているマイナスの部分を埋めていったところから生まれたのが「あがの姫牛」です。今やっていることの課題を解決したことにより、生産性が上がり、効率も良くなりました。
――地元企業との連携で生まれた商品だったんですね。
佐藤さん:今の時代だからこそ、協業することによってマイナス点がプラスに転用できて、より強くなるのであれば協業した方が良いと思います。それがいわゆる、異業種連携という良い形ですよね。例えば、うすい牧場から出るたい肥は廃棄するのに1年で多大な費用がかかるのですが、それを地元の農家さんが有機農耕といって野菜作りに使用しています。元々費用がかかっていたのが無くなった分、設備や雇用に投資できるようになります。異業種連携というのは、業種は違えど、同じ地元だからこそ継続してできると思います。
地元だからこそできる連携で地元を活性化させたい
――地元だからこその連携ができるということですね。
佐藤さん:お互いのマイナス部分を補って商売をやるには相手を知る必要があると思います。相手を知ることで出来ることが見え、提案に繋がります。それはやっぱり地元だから強いつながりでより親密にできるし、地元だからこそ地元を活性化させたいという気持ちも出てくると思います。地元での連携で可能なことを今回の取り組みで少し証明できたかなと思います。
――この取り組みから佐藤さん自身の考え方の変化などはありましたか?
佐藤さん:どうしても足し算で商品を作るやり方になりがちですが、引き算でのやり方もあるんだなと自分のモノづくりや生産性の考え方がガラッと変わりました。それから、相手を知るというところで色々な企業や農家など見学をさせてもらえるときは積極的に見るようにしています。会社を大きくしようとお肉の販売を一生懸命やっていた頃もありましたが、今は結婚し子供ができて、従業員や部下ができて、その人たちの生活も考えるようになりました。自分は何のためにやっているんだろうと考えた時に、地元の活性化に繋がれば良いなと思っています。
佐藤食肉のブランドができ、自社商品を提供できたことでお客さんから「おいしかったよ」とか「お肉買ったよ」という声が届くようになりました。地元で活動することによって、その声がより近くなりましたね。なにより家族にその声が届くというのが一番大きいです。奥さんに届いているのが一番嬉しいですね(笑)。そうゆう話を聞くとやって良かったなと思いますし、やりがいを感じます。そして従業員にもそういった声が聞こえるようになって、自分が作ったものを近くで見ることができているので仕事の原動力になっていますし、商品への責任感も生まれていると思います。
――では最後に、今後挑戦したいことはありますか?
佐藤さん:佐藤食肉の商品をもっと多くの方に知ってもらいたいです。それには今のニーズや時代にあった商品を作らないといけないので商品開発をどんどんして、たくさんの人に知ってもらい、食べてもらい、「佐藤食肉はこんな会社なんだ」と知ってもらうのが第一目標です。いつかは新潟県の皆さんが知っている企業になりたいですね。それにはやっぱり小売業としてみんなに手に取ってもらえる商品が必要だと感じます。その為にもっともっと様々な商品を日々開発していきたいです。
【佐藤食肉直営店】
住所:新潟県阿賀野市荒屋88番地3
電話:0250-62-2149
営業時間:9:00~17:30
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